ジメチルスルホキシド
ジメチルスルホキシド (Dimethyl sulfoxide、略称DMSO) は (CH3)2SO の分子式で表される有機化合物である。純度の高いものは無色無臭だが、長く貯蔵したものは分解物である硫黄化合物の臭気(磯の香りに似ている)を持つ。非常に吸湿性が高い。
皮膚への浸透性が非常に高いことでも知られている。ジメチルスルホキシド自体は毒性は低いが、他の物質が混入している場合、他物質の皮膚への浸透が促進されるので取り扱いには注意を要する。
用途
水とは自由な割合で混和し、多くの有機化合物や無機塩も溶解する優れた非プロトン性極性溶媒である。このため実験室レベルから工業的規模に至るまで広く溶媒として利用される。また有機合成化学分野においては、スワーン酸化などにおける酸化剤としても用いられる。
膀胱炎の治療薬として、水溶液が「RIMSO-50」というブランド名で米国やカナダなどで利用されている。これはDMSOの50 %水溶液である。国によっては、競走馬の治療にも使われる。
一説によれば、チェチェンの活動家であったアミール・ハッターブがロシアによって暗殺された際には、毒物をDMSOに溶かした物を塗られた手紙が使われたという。このとき、ハッターブは手紙に触れてから5分で死亡したといわれている。ただし毒物の正体は不明である。
ジメチルスルホキシドの6つの水素を重水素に置換した重ジメチルスルホキシドはNMR測定のための重溶媒として利用される。NMR測定においては通常、水酸基の水素と溶媒中の水素との間でイオン交換が生じるためシグナルが平均化され、水酸基とその隣接基の水素との間ではカップリングが生じない。しかし、重ジメチルスルホキシドを重溶媒として用いることで水酸基のイオン交換が抑制されるため、水酸基とその隣接基の水素との間のカップリングパターンを観測することが可能となる[1]。
安全性
引火点 87 ℃ の可燃性液体である。皮膚や眼の温和な刺激剤である。皮膚に浸透しやすい。また日本では消防法で危険物第4類に指定されている。
生産
ジメチルスルフィドを酸素や窒素酸化物で酸化することで生産する[2]。
脚注
テンプレート:Sister- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 種田健造, "リグニンの含硫黄アルカリ処理による利用(1)-DMS製造法の発展-" [1]