フォース (スター・ウォーズ)
フォース(Force)とはアメリカ映画『スター・ウォーズ・シリーズ』に登場する架空のエネルギー帯。生命体から無機質まであらゆるものを包んで満たしておりジェダイやシスの超常的な能力の源となっている。
1977年のシリーズ第1作『スター・ウォーズ』劇場公開時には「理力(りりょく、りりき)」という訳語が充てられたが、近年ではあまり使われない。
目次
概要
生まれつきフォースに敏感な者は、目には見えないこの「エネルギーの流れ」を感じ制御して操作することが可能である。ルーク・スカイウォーカー、ヨーダ、オビ=ワン・ケノービ、クワイ=ガン・ジンなどを代表とするジェダイはフォースを使って正義を行う。ジェダイの用いるフォースは「ライトサイド(光明面)」と呼ばれる。一方でダース・ベイダー(アナキン・スカイウォーカー)、ダース・シディアス(パルパティーン)、ダース・モールなどのシスの暗黒卿やアサージ・ヴェントレス、ジョルース・シボースなどに代表されるダーク・ジェダイは己の欲求を満たすためにフォースを悪に用いており、そのフォースも怒りや憎しみによって引き出される「ダークサイド(暗黒面)」のフォースである。
『エピソード1』では、生物の細胞中に含まれる共生生物ミディ=クロリアン(テンプレート:Lang-en-short)の値がフォースの強さに影響を持つことが示唆されており、各個人の扱うフォースの強さは生得的な要素が大きいと考えられる。
作中では、ジェダイおよび反乱同盟軍の合言葉として、「フォースと共に在れ(May The Force Be With You)」という文句が登場している。また、ジェダイは「死ぬ」という概念を「フォースとひとつになる」と表現する。
フォースの主な能力
予知
敵の攻撃をかわすなどの際に多く用いる。また、ある程度先の未来を読むこともできる。予知夢のような形で無意識的にこの能力が使われる事もある。
ジェダイの騎士がライトセーバーを使用した戦闘で強いのは、剣術を会得しているのはもちろんのこと、フォースの予知能力により敵の攻撃をある程度先読みして剣を繰り出すところが大きい。
しかし、ヨーダのような達人級のジェダイでもダークサイド等の妨害により、「未来が曇っていて見えない」ことがある。他にも、「暗黒面の帳(とばり)」「フォースを闇が支配している」などと表現しており、漠然とながら自分たちの千里眼に限界があることを感じていた。
後にヨーダはルーク・スカイウォーカーに対し、未来にばかり目を向けていてはいけないと説き、予知能力の乱用や妄信は危ういと警告している。これは、霊体化の秘密を解き明かしたクワイ=ガン・ジンの提唱した現在のフォース「リビング・フォース」を信奉する理念こそが正しかったと認めた証でもあり、実際、「選ばれし者」に関する古の予言や、妻の死を連想させる予知夢に悩まされた結果、人生を狂わせたアナキン・スカイウォーカーの前例からも立証されていると言える。
直接触れることなく物を動かす
テレキネシスとも呼ばれ、戦闘の要となる技術の1つ。これを自分自身に対して使用する事で宙に浮くことも可能であり、ルークがダソミアで実際に行った例などがある。フォースの強力な者が相応の訓練を積めば、宇宙船のような質量の物体さえ動かし、ブラスターの光弾を掌で偏向するほどの力を発揮する事もできる。
ジェダイは特に複数の敵と戦う場合に、相手を吹き飛ばす用途でこれをよく用いる(通称「フォース・プッシュ」)。脆いドロイドなどであればこの一撃で破壊することも可能。他にも、落下物を押しとどめたり、敵機同士を衝突させたり、進んでくる相手や障害物を後退させたり、砂や水を巻き上げて目を眩ましたりとトリッキーな使い回しが特徴的。
また、フォースの能力者にとってこの動作は生活の一部であり、離れた物体を引き寄せるなどはもちろん、ドアやハッチの開閉、ちょっとした冗談や悪戯、手持無沙汰なときに辺りの物を掌で転がしたりなど幅広く活用している。
ダース・シディアスのようなシスの暗黒卿は、これを利用して物体を相手に落としたり、投げつけたりするといった攻撃手段として用いており、さらにダース・ベイダーはこの能力を応用して、位置さえ分かっていれば相手が遠くに離れていようと直接手を触れずに、指を曲げる仕草をするだけで、相手の首を絞め上げる「フォース・グリップ(フォース・チョークと表記されることもある)」という技を得意とする。 ただしこの技はシスに限った事ではなく、ヨーダやルークは実力誇示や警告する意味合いで威力を抑えて使用したこともあり、ジェダイでも使われる場合もある。
コラン・ホーンなど、この能力を持たないジェダイもいる。
視覚に頼らず周囲を感知する
周囲の状況を詳しく知ることができるため、待ち伏せにあらかじめ備えることができる。また、ライトセーバーでの戦闘や、戦闘機やポッドレーサーといった判断力と反射神経を要する乗り物の操縦にも役立てられる。
元々パイロットとしての腕も超一流のアナキンは、この力で能力をさらに向上させ、宇宙戦やポッドレースで善戦する。
他人の心を読み取る
相手の感情がフォースに与える影響を通してその相手が考えていることをある程度読み取ることができる。
ただし、あくまで相手の感情の動きを読み取るだけなので、相手が強固な意志により感情を抑えている場合や「オーダー66」に事務的に従っていた時のクローン・トルーパーのように感情を伴わずに行動している場合などにはその行動を予測できないことも多い。実際ヨーダやメイス・ウィンドゥ達は、目の前にいるパルパティーン議長が実はシスの暗黒卿ダース・シディアスであると見抜けなかった。これはシディアスが、その強固な意志で感情を抑えていたからである。
特に、ヨーダとメイスは、自分たちの神通力に陰りが生じてきたことを自覚しており、それが敵の知れる所になることを危惧する。後に、シスの暗躍に対し盲目であったがために、台頭を許したと猛省する。
他人の心を操る
「マインドトリック」「心理操作」とも呼ばれる。上記の「他人の心を読み取る力」に関連して他人の心に確信を植え付け、行動をある程度操ることができる。フォースを集中させながら、ひらりと掌をかざし相手に話しかけると、相手はその言葉の通りに思考しそれを鵜呑みにする。オビ=ワンはこの能力に優れており、敵から賞賛を受けたこともある。
しかし相手が強固な意志を持っていると通用しないことがあり、ハット、トイダリアンなどマインドトリックに抵抗力のある種族もいる。命令に従って動いているだけのストーム・トルーパーなどには、軒並み有効なようである。
非常に稀なケースではあるが、極めて強力なフォースを操る者の中には相手の記憶を消す事さえ可能とする者の存在も確認されており、古代のシスの暗黒卿ウリック=ケル・ドローマは、ジェダイとの戦いでフォースを操る方法に関する記憶を奪われてフォースが使えなくなったとされている。また、惑星モーティスでフォースの化身である謎の親子に出会ったアナキンは、「息子」に自身がシスの暗黒卿ダース・ベイダーとなる未来を知らされて一時的にダークサイドに堕ちたが、親子の「父親」によってこの時の記憶を消されている。
旧共和国時代のジェダイ騎士団に伝わる技術として、この能力を応用して戦場における味方や敵の艦隊の士気を操作することで戦闘を有利に運ぶ「戦闘瞑想」という技が存在し、オポー・ランシセスがクローン大戦で使用している。また、ダース・シディアスやジョルース・シボースもこれとよく似た技を使用し、指揮下にある帝国艦隊の士気を調整したり兵士の意思を操ることができる。
自分の考えを相手に送る
上記の「人の心を操る力」に関連して、頭の中に抱いたイメージを他人に送ることができる。力量や波長が合えば、長距離を隔てても意思を伝えることが可能であり、ジェダイ同士であればそれを利用して言葉を使わずに会話をすることも可能である。
ルークはベスピンでダース・ベイダーに敗北した際にこの能力を使用してレイア・オーガナに助けを求めた他、バクラで自分の体内に仕込まれた吸血生物に対して新鮮な血液のイメージを送ることで喉へ誘導し吐き出したことがある。オビ=ワンは自分の家に「近寄るな、立ち去れ」という意思の結界を張り、ジャワやタスケン・レイダーの進入を防いでいた。
この能力を応用して戦闘の際に複数のジェダイが意識を共有する「フォース・メルド(バトル・メルド)」という戦法が、アウトバインド・フライト時のジョラス・シボース、ユージャン・ヴォング大戦時のサーバ・セバタインなどにより提唱された。ただしこのメルドには、「一人が負った精神的ダメージも共有してしまう」「長時間続けると感覚が混ざり合い、自他の境界線が曖昧になる」という欠点もある。
身体能力の強化
普段のジャンプ力では届かないような高さまでジャンプしたり(通称「フォース・ジャンプ」)、目にも止まらない速度で走る(通称「フォース・スピード」)、鉄拳でドロイドを破壊し、普通の人間には曲げられないような強度の金属を曲げることができる、など。
ヨーダは戦闘時にこの能力を使うことで普段は杖を必要とするほど衰えている体力をカバーし、むしろ他のジェダイよりも素早い動きを可能にしている。また、ダース・シディアスやドゥークー伯爵(ダース・ティラナス)といったシスの暗黒卿も見た目は老人であるにもかかわらず、驚異的な身体能力を発揮する。
上記のように強化されるのは主に戦闘時における体力や筋力である場合が多いが、マラ・ジェイドは聴覚や嗅覚などを強化して情報収集に利用する技をダース・シディアスから教わっている。 他にも特殊な例として、二つの大きな口を持つ種族アイソリアンのジェダイ・マスター・ロロン・コロブはその独特な声帯を強化して大きな声を出し、更にその振動をフォースで集中させる事で空気中に強力な嵐を起こす技を編み出している。
癒し
自分の精神の沈静や疲労の回復、短い時間で十分な睡眠を取る、カウンセリングなどは、ジェダイならほぼ必ず備えている一般的な能力である。 呼吸法や瞑想を行う、自己暗示をかけトランス状態になる、などの方法がある。 これは精神的に怪我や火傷の痛みを感じないようにさせて苦痛を和らげるというものから、熟練すれば物理的に体内の毒を除去したり、バクタ・タンク治療を行わなければ治せないような傷を塞いだりすることもできるようになる。
他人に対しても、フォースを用いて疾病を治癒したり、傷を癒すことができる。ただし、癒しは癒される本人の身体エネルギーを消費するほか、癒す相手の身体構造を把握していないと治療が逆効果になることもある。旧ジェダイ・オーダーのバリス・オフィーや、新ジェダイ・オーダーのシルガルは特にこの能力に秀でている。
また、毒を打ち消すことはできるが、酸を無害にすることは難しい。
なお、フォースを用いた命の蘇生、生命の創造は伝説級の業である。新三部作では「ダース・プレイガスの秘儀」があるとされ、ミディ=クロリアンを意図的に操作し、永遠の命を得ることができたとされるが、プレイガスはその内容を遺さずにダース・シディアスに殺害されており、真偽のほどは分かっていない。 レガシー時代のスカイウォーカー家の末裔ケイド・スカイウォーカーはこの力の片鱗を見せ、フォース・ライトニングを応用して自分のマスターの命を救っている。
霊体化
「フォース・ゴースト」とも呼ばれる。肉体的な死を遂げたジェダイの精神が、実際に目に見える形で現れたもの。 自己の精神が全時空のフォースの「一部にして全体」となり、フォースのあるすべての場所に存在することができる。頭の中で思うだけで、星から星への移動も可能である。 ただし、精神を封じ込めるトラップやパワースポット、兵器、他者のフォースによる攻撃などにより、ダメージや束縛を受けることはありえる。
古来より力のあるジェダイやシスが、この業を用いて死後も現世に留まったが、方法は失われていた。 リビング・フォースに精通したクワイ=ガン・ジンが自分の死後に発見して冥界から帰還し、ヨーダ、オビ=ワン・ケノービに伝授した。
その他の力
その他、それぞれのフォース感知者によって大きく能力が違うものとして、
- 人探し
- 記憶を遡り、無自覚に感じていた過去の状況の詳細を知る
- 自分の知らない言葉を使う
- フォースの泡で物を覆い、衝撃から身を守る。食器に使用して食べ物にゴミが入らないようにしたりも(フォース・バブル)
- 相手の意識を遮断する、眠らせる(ルーク・スカイウォーカーが主に使用)
- 自分の心臓を止め、仮死状態になり冬眠する。水や酸素の消費を必要としなくなり、例え宇宙空間に放り出されても生身で耐えられるが、覚醒するには他者からの呼びかけやキーワードなどが必要となる。生体センサーをごまかすこともできる。(ルークが使用)
- 相手の新陳代謝を制御し、心臓を止める(モリ・クローと呼ばれる。ヤドルが使用)
- 相手に強力なめまいと吐き気をもよおさせる技(マラシーアと呼ばれ、オポー・ランシセスが使用)
- 航法コンピュータのナビゲーションより正確に、あるいはまったく必要とせずハイパードライブ航法を行う(セイシー・ティン、ルークが主に使用)
- 無生物に触れることで精神の痕跡を読み取り、その場で起きた近い過去の出来事を知る(クインラン・ヴォスが使用)
- 周辺の生物から生命エネルギーを得てフォースを増強する。ただし過度に行うとダークサイドの影響により体が蝕まれる(エグザ・キューン、ガントリスが使用)
- 空気を操り、竜巻を起こす。呼吸困難を起こしている相手の肺に酸素を送り込んだり、大気中のガス資源の位置を特定することも可能(ストリーンが使用)
- 自分の声に意思を乗せ、発言の説得力を増すことができる。戦場では兵士たちに勇気を与え、逃げ惑う人々を沈静させて避難誘導を行うことができたり、クレイトドラゴンの咆哮を真似、敵を怯えさせることもできる。(ジェイ・マラク、オビ=ワン・ケノービが使用)
- 思考パターンをずらし、幻惑や洗脳、薬物などの効果を防ぐ。相手のフォースにより思考を読まれることも防ぐ。(マラ・ジェイドが使用)
- 動物・昆虫とのコミュニケーション(ジェイセン・ソロが主に使用。キ=アディ=ムンディはこの能力を応用し、動物を召喚することができる。アナキン・スカイウォーカーもエピソード2でジオノーシスの処刑場で使用し、処刑獣を乗物にした)
- 電子回路を修理もしくは誤動作させる(アナキン・ソロが主に使用。メイス・ウィンドゥはこの能力を応用し、素手でドロイドの配線を掴むことでハッキングし操ることができる)
- 精神を乗り移らせて、新しい身体を得る(ダース・シディアスが使用。自分のクローンに乗り移って復活したり、アナキン・ソロの肉体を得ようとしたほか、処刑した人間の恐怖の記憶を残したままクローンとして生き返らせたこともある)
- 自分の涙の分子構造を変化させ、薬や毒に変える(ヴァーゲアが使用)
などがある。
フォース・ライトニング(Force Lightning)
フォース・ライトニングとは、熟練したシスの暗黒卿が使用する、指先から青白い電撃を放つ技である。劇中ではパルパティーン(ダース・シディアス)、ドゥークー伯爵(ダース・ティラナス)などが必殺技としてこれを使用する。
劇中においてダース・モール、ダース・ベイダーはこれを使う場面はない。モールについては諸説あり、単に映画で使わなかっただけという説や、そこまでの力がなかったなど様々であるが、力不足であると言う説が最も有力である。ベイダーは、これを使うと自身の生命維持装置を破壊することとなり、自らの死へと直結することになってしまう。また、ジュニア版小説の設定ではあるが、フォース・ライトニングを使うには生身の肉体が必要なため、手足が機械となってしまったベイダーにはフォース・ライトニングは使用できない、とされている。
フォース・ライトニングはライトセーバーで防いだり偏向できる。また、ヨーダとドゥークー伯爵は作中でこれを素手で防いでみせ、フォースに熟達したヨーダの場合「吸収」したり相手に返したりすることもできる。 スピンオフ作品では、皇帝の手マラ・ジェイド、ダース・ベイダーの弟子スターキラー、ジョラス・シボースのクローン・ジョルース・シボースのように正式なシスとして認められていない者でもこの技を使う描写があるため、シスのみに伝わる技ではないと思われる。
ジェダイ・マスターとなった壮年期のルーク・スカイウォーカーは、相手を生かすことも、殺すこともできる緑色の電撃「リビング・フォース・ライトニング」を使用する。ライトサイドとダークサイド、2つの道を経験しフォースのバランスを身に付けた、ルークにのみ可能なフォースの奥義である。
その他の用例
『エピソード4』(第1作)に登場したルークのスピーダーが空中を浮いて走っている表現において、一部のシーンで土台を隠すためにカメラのレンズにワセリンを塗って撮影しており、生じた茶色の染みをスタッフが苦し紛れに「フォース」と呼んでいた。これは特別編ではデジタルで修正されている。