ウェストミンスター宮殿のソースを表示

{{世界遺産概要表|
site_img = File:Parliament at Sunset.JPG|
site_img_capt = ウェストミンスター宮殿|
site_img_width = 275px|
ja_name = ウェストミンスター宮殿、ならびに[[聖マーガレット教会 (ウェストミンスター)|聖マーガレット教会]]を含む[[ウェストミンスター寺院]]|
en_name = Palace of Westminster and Westminster Abbey including Saint Margaret’s Church|
fr_name = Palais de Westminster et l'abbaye de Westminster incluant l'église Sainte-Marguerite|
area = 10.26 ha|
country = イギリス|
criterion_c = (1), (2), (4)|
rg_year = 1987年|
ex_rg_year = 2008年|
remarks = |
url_no = 426|
map_img = |
map_img_width = 275px|
}}
{{coord|51|29|57|N|00|07|29|W|region:GB_type:landmark|display=title}}
'''ウェストミンスター宮殿'''（the Palace of Westminster）は、[[イギリス]]、[[ロンドン]]の中心部[[テムズ川]]河畔に存在する[[宮殿]]。現在[[英国議会]]が[[議事堂]]として使用している。併設されている時計塔（[[ビッグ・ベン]]）と共にロンドンを代表する景色として挙げられる。所在地はロンドンのミルバンク。なお近隣のテムズハウスは[[保安局 (イギリス)|保安局]]（MI5）の本部となっている。

== 歴史 ==
[[ファイル:Palace of Westminster from Roque's map (1745).jpg|thumb|left|[[ジョン・ロック (製図家)|ジョン・ロック]]が1746年に製作したウェストミンスター周辺の地図]]
[[ファイル:Turner-The Burning of the Houses of Lords and Commons.jpg|thumb|left|[[ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー|J・M・W・ターナー]]は1834年の大火を観察している。<Br>''The Burning of the Houses of Lords and Commons'' (1835年)]]
[[ファイル:British Houses of Parliament.jpg|thumb|250px|[[ビッグ・ベン]]（右）<br />ヴィクトリア・タワー（左）]]
ウェストミンスター宮殿のおかれているテムズ川河畔は[[中世]]を通して戦略上の要衝であった。すくなくとも[[アングロ・サクソン]]の時代には既にこの地に何らかの建物が建設されていた。[[ソーニー・アイランド]]として知られるイングランド中世には[[クヌーズ1世 (デンマーク王)|カヌート王]]によって初めて宮殿として用いられるようになり、サクソン王朝の最後から2代前の王[[エドワード懺悔王]]は[[シティ・オブ・ロンドン]]の西、ソーニー・アイランドに宮殿と[[ウェストミンスター寺院]]を建設した。時代が下るとこの周辺の地区は[[ウェストミンスター]]（''Westminster''）と呼称されるようになった。これは西方の修道院（''West Monastery''）の省略形であると考えられている。[[1066年]]の[[ノルマン・コンクエスト]]時には[[ウィリアム1世 (イングランド王)|ウィリアム1世]]は一時[[ロンドン塔]]を自身の住居として定めたが、後にウェストミンスターへと移っている。これらサクソンやウィリアム1世により使用された建築物は現在残っていない。宮殿における最古の部分は次代の[[ウィリアム2世 (イングランド王)|ウィリアム2世]]により建造されたものである。

中世後期をとおしてウェストミンスター宮殿は王の住居であり続けた。イングランド政府が成立すると、公共施設の多くはウェストミンスター周辺に建設されている。議会の前身である''[[キュリア・レジス]]''（''Curia Regis'', 枢密院）は[[ウェストミンスター・ホール]]に設けられた。[[1295年]]に設立された初めてのイングランド議会である[[模範議会]]も宮殿内で開催されている。このようにほぼ全ての議会は王の居住する宮殿内で開催されたが、何らかの理由により他の場所に設けられたことが数例ある。

[[1529年]]の大火が発生するまでウェストミンスターは王の宮殿として機能していた。[[1530年]]に[[ヘンリー8世 (イングランド王)|ヘンリー8世]]はヨーク宮殿を[[トマス・ウルジー]]枢機卿から手に入れ、[[ホワイトホール宮殿]]と改名して自身の宮殿として使用した。公にはウェストミンスター宮殿が住居であったが、実際には二つの議会および裁判所として利用されていた。本来宮殿であったウエストミンスター宮殿には議会としての利用に適した部屋が存在しなかった。議会の開会式など重要な[[国事]]行事は''Painted Chamber''で執り行われた。[[貴族院 (イギリス)|貴族院]]は[[ホワイト・チャンバー]]で、[[庶民院]]については固定した開催場所が存在せず、時には[[ウェストミンスター寺院]]のチャプター・ハウスで開催されている。その後宮殿内の聖ステファン教会が議場とされたがこれは[[エドワード6世 (イングランド王)|エドワード6世]]統治下のみに終わった。

[[1834年]][[10月16日]]に発生した火災によって宮殿の大半は焼失した。ウェストミンスター・ホールおよびジュエル・タワー、聖ステファン教会の地下室、回廊のみが焼失を免れた。宮殿の再建を協議する王立の委員会が設けられ、[[ゴシック建築|ゴシック]]または[[古典様式]]のいずれかのデザインで建設することを決定した。古典様式を好む人々はゴシックの粗野さは議事堂に似合わないと主張したが、[[キリスト教]]に基づいており好ましいとする[[オーガスタス・ピュージン]]を含む一派の計画が採用された。

[[1836年]]に委員会は97の計画案の中から[[チャールズ・バリー]]の設計したゴシック様式のデザインを採用した。[[1840年]]に礎石が据えられ、貴族院議事堂は[[1847年]]に、庶民院議事堂は[[1852年]]に完成した。その後建物の主要部分は[[1860年]]に完成した。

ウェストミンスター宮殿は[[1941年]]まで利用され続けていたが、この年に[[ドイツ国防軍|ドイツ軍]]の[[爆撃]]によって庶民院が破壊された。[[ジャイルズ・ギルバート・スコット]]の設計によって元のサー・チャールズ・バリーの設計を残して[[1950年]]に完成した。
{{-}}

== 構造 ==
石と鋳鉄
*敷地：30,000m&sup2;
*幅：280m
*高さ(時計塔)：96m

=== 設計者 ===
ヴィクトリア王朝期の1834年の火災により、木造であるウエストミンスター・ホールを除く殆どが焼失してしまったため、これを機にイギリス政府は[[コンペ]]形式によって、新国会議事堂の設計を行うことになった。<br>
設計においては、建築家チャールズ・[[バリー]](1795-1860)と、若手建築家であったオーガスタス・ウェルビ・[[ピュージン]](1812-1852)が携わった。バリーはイタリア様式の倶楽部建築により高い名声があり、古典様式とイタリア様式を好んでいた。一方でピュージンは[[キリスト教]]と[[ゴシック]]の思考を実際に建築に持ち込んだ人物であった。彼は「建築を中世の姿で建てるのは道徳的義務」<ref>[[ニコラス・ペヴスナー]]『[[新版　ヨーロッパ建築序説]]』[[小林文次]]・[[山口廣]]・[[竹本碧]]訳、[[彰国社]]、1989年第1版、326頁より引用</ref>であり、「良い建築家になるためには正直な職人で良いキリスト教徒であらねばならぬ」<ref>[[ニコラス・ペヴスナー]]『[[新版　ヨーロッパ建築序説]]』[[小林文次]]・[[山口廣]]・[[竹本碧]]訳、[[彰国社]]、1989年第1版、326頁より引用</ref>ものだと主張した。当時は、古典主義者からゴシック様式は反啓蒙主義者として煙たがれていたが、実際はゴシック主義者の議論が優勢であり、美術と建築に大きな影響を与えた。しかし、建築における美的価値においては古典主義者が優れていた。そして、古典主義を好むバリーが基本的な平面計画、立面計画、断面計画を、ゴシック様式を好むピュージンはディティールを担当した。

=== 構成 ===
[[テムズ川]]の西岸に面しながら、それと平行になるように建物全体が南北に貫かれている。内部構成については、ロイヤル・ギャラリーと上院議場をその南側に、北側には下院議場が配置されている。また、両院議長席は公共の場である中央ロビーを境に向かい合って対峙するように配置されている。このような構成は、国民や国家における両院の憲法上の役割を象徴している。

=== 外観 ===
外観は[[テムズ川]]対岸からの眺めに重点をおきながら構成されており、議事堂としての威厳を与えるため、河に面した水平で長大な左右対称のファサードをとり、その両端を後方から右側に[[ビッグ・ベン]]を、そして左側に[[ヴィクトリアタワー]]を置くことによって全体のバランスをとっている。また、その2つの塔のほか、中央部やところどころに建っている小塔の持つシルエットによって、垂直方向に対しても強調されている。<br>
全体のつくりをよく見てみると、[[ピュージン]]の[[ゴシック]]様式が表れているところは少なく、それは装飾された[[ファサード]]にある。塔と尖塔においては、絵画的にみれば非対称であるが、[[テムズ川]]に面するファサードは中央と両端の楼閣を強調する対照的な[[パラーディオ]]風の構成がとられている。パラーディオ風とは[[古代ローマ建築]]の、細部に至るまでが数学的概念に基づいている調和的な比例法則によった古典的な建築理念を持つ、16世紀の建築家[[パラーディオ]]の様式を規範とした建築様式である。つまり、古典主義的な建築様式によるものである。そのことの証拠に、ピュージンの弟子であったフェリーによると「閣下、すべてギリシア様式です。古典様式に従った躯体に、チューダーの細部を加えました」<ref>[[ニコラス・ペヴスナー]]『[[新版　ヨーロッパ建築序説]]』[[小林文次]]・[[山口廣]]・[[竹本碧]]訳、[[彰国社]]、1989年第1版、327頁より引用</ref>とピュージン自身が述べている。チューダーとは[[テューダー様式]]という中世末期から[[ルネサンス]]への過渡期に渡る16世紀前半のイギリスにおける、垂直様式であるゴシック建築様式を残しつつ、古典的モティーフを採用した装飾が細部になされた建築様式である。

== 世界遺産 ==
=== 登録基準 ===
{{世界遺産基準|1|2|4}}

== ギャラリー ==
<center><gallery>
File:Big Ben London closeup.jpg|ビッグ・ベン
File:Jewel Tower (1).jpg|ジュエル・タワー
File:Victoria Tower from the south-west.jpg|ビクトリア・タワー
File:Wm-1.jpg|ウェストミンスター・ホール
File:Statue of Oliver Cromwell outside the Palace of Westminster.jpg|[[オリバー・クロムウェル]]の銅像
File:Richard I statue outside Parliament.JPG|19世紀に建造された[[リチャード獅子心王]]騎馬像
</gallery></center>

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
*{{Cite |和書
 |author = 佐々木英也 監修
 |title = オックスフォード西洋美術事典
 |date = 1989
 |edition = 第1
 |publisher = 講談社
 |isbn = 406200979X
 |ref = harv }}
*{{Cite |和書
 |author = 佐藤達生 
 |title = 図説　西洋建築の歴史　美と空間の系譜 
 |date = 2005 
 |edition = 初 
 |publisher = 河出書房新車 
 |isbn = 4309760694 
 |ref = harv }}
*{{Cite |和書
 |author = ニコラウス・ペヴスナー
 |authorlink =　ニコラウス・ペヴスナー
 |translator = 小林文次, 山口廣, 竹本碧
 |title = 新版　ヨーロッパ建築序説
 |date = 1989
 |edition = 第1
 |publisher = 彰国社
 |isbn = 4395050832
 |ref = harv }}
*{{Cite |和書
 |author = 「建築史」編集委員会 編著
 |title = コンパクト版　建築史　日本・西洋
 |date = 2009
 |edition = 第1
 |publisher = 彰国社
 |isbn = 9784395008766
 |ref = harv }}
*{{Cite |和書
 |title = 新潮　世界美術辞典
 |date = 1985
 |edition = 初
 |publisher = 新潮社
 |isbn = 4107302067
 |ref = harv }}
*{{Cite |和書
 |title = 世界美術大事典
 |date = 1988-89
 |edition = 初
 |publisher = 小学館
 |isbn = 4096993115(第1巻)
 |ref = harv }}

== 関連項目 ==
*[[英国議会]]

== 外部リンク ==
{{Commons|Palace of Westminster}}
*[http://www.parliament.uk/works/palace.cfm ウェストミンスター宮殿公式サイト] 

{{イギリスの世界遺産}}
{{ヨーロッパの題材|国会議事堂|[[議事堂]]|議事堂}}

{{DEFAULTSORT:うえすとみんすたきゆうてん}}
[[Category:ロンドンの宮殿]]
[[Category:シティ・オブ・ウェストミンスター]]
[[Category:イングランドの世界遺産]]
[[Category:世界遺産 あ行]]
[[Category:議事堂]]
[[Category:ゴシック建築]]
[[Category:再建された建築物]]
[[Category:第一級指定建築物]]
[[Category:連合王国議会]]
[[Category:19世紀の建築物]]
[[Category:1987年登録の世界遺産]]
{{Link FA|de}}
{{Link GA|es}}
{{Link FA|mk}}
{{Link GA|fr}}