サガ

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テンプレート:Otheruseslist サガアイスランド語saga 複数形sögur)は、おもに中世アイスランドで成立した古ノルド語古アイスランド語)による散文作品群の総称。同時代に書かれたエッダ詩がゲルマン民族の神話や英雄伝説を題材にしているのに対し、サガはノルウェーやアイスランドで起きた出来事を題材にしたものが多いことに特徴があり、約200点が現代に伝わっている。

転じて、フィクションにおいて、一家一門の物語を壮大に描く長編の叙事小説[1]ファンタジー作品、叙事詩的映画などがサーガと呼ばれたり、そのようなタイトルを称することがある(『グイン・サーガ』、『ニュームーン/トワイライト・サーガ』、『ゼノサーガシリーズ』など。)。

語源

サガは古アイスランド語のsegja(「言う」を意味する動詞で、英語のsay, ドイツ語のsagenに相当する)から派生した言葉であり、「語られたもの、語り物、物語」を意味する[2]

著者と執筆時期

ほとんどのサガは著者不明で、執筆期間はアイスランドで独自の民主制が置かれていた、いわゆるアイスランド共和国時代の後期である12世紀から13世紀とされる。それ以降に書かれた作品は大陸の騎士道ロマンスやおとぎ話の模倣(「騎士のサガ」、「嘘のサガ」)が多くなり、それらは通例サガに含まれない[3]

形式

多くのサガは散文のみで書かれているが、スカルド詩人などを主人公とするサガには、韻文のスカルド詩が挿入されているものもある。全体の長さは作品によって大きく異なり、『ニャールのサガ』のように現代の刊本で数百ページにおよぶものもあれば、『アイスランド人の書』のように数十ページで終わるものもある[4]。比較的短い作品にはサットル(þáttr)と呼ばれ、サガから区別されるものがある。サットルは日本では通例「話」と訳される(『棒打たれのソルステインの話』など)[5]

内容と分類

サガが扱う内容は、歴代のノルウェー王の伝記、アイスランドの植民とキリスト教化の歴史、島民の諍いと裁判、古代ゲルマン民族の伝説など多岐にわたる。

各種のサガは伝統的に、主題をもとに「王のサガ」、「司教のサガ」、「アイスランド人のサガ」、「古代のサガ」の4つに分類される[6]。ただし、この分類に収まらないサガや、複数の分野にまたがるサガも多い。以上の分類のほかにも様々な分類方法があり、たとえば北欧文学者の谷口幸男は「宗教的学問的サガ」、「王のサガ」、「アイスランド人のサガ」、「伝説のサガ」の4つに分けている[7]。『アメリカ大百科事典』では「歴史的サガ」、「神話的サガ」、「ロマンスサガ」の3分類がとられている[8]

  • 王のサガ(Konungasögur)
スカンディナヴィア諸国の王侯の事績を扱う。最大のものはスノッリ・ストゥルルソンの作とされる『ヘイムスクリングラ』で、神話時代から初のノルウェー統一王であるハーラル美髪王を経て、スノッリの同時代のマグヌス・エルリングソン王に至るまでの歴代ノルウェー王の生涯が記した16のサガが収められている。ほかにバルト海沿岸のヨムスボルグを拠点に活躍したとされる伝説的なヴァイキング集団を扱った『ヨームのヴァイキングのサガ』などがある。
  • 司教のサガ(Bisukpa sögur)
アイスランドにおけるキリスト教化の歴史と同地で活躍した聖職者の生涯を扱う。ほかのサガよりも史実性が高いとされる。『キリスト教徒のサガ』、『司教パールのサガ』『聖ソルラークのサガ』などがある。
  • アイスランド人のサガ(Íslendinga sögur)
家族のサガ、氏族のサガとも。植民から内乱の末ノルウェー王に服属するまでの期間のアイスランド人の活動を扱うサガで、その洗練された文体と完成された叙述により文学的観点から最重要の作品群とされる。内容は「血の復讐」と呼ばれる一族同士の報復行為の応酬とアルシング(全島集会)での調停を扱ったものが多い。
アイスランド人のサガは大小30作ほどが知られているが、卓越した詩人にして戦士のエギル・スカラグリームソンとその一族を扱う『エギルのサガ』、偉大な戦士グンナルと賢人ニャールの友情と死を描く『ニャールのサガ』、サガでは珍しく女性を中心人物としている『ラックサー谷の人々のサガ』、数世代に渡る首長たちの抗争を主題とする『エイルの人々のサガ』、アイスランドを追放になり、放浪のすえ殺された不運な男の生涯を空想を交えて描く『グレティルのサガ』の5作は質、量ともに最大級のサガであり、日本では「五大サガ」と称される[9]。ほかに、ノルド人のアメリカ大陸探検の様子を描く『赤毛のエイリークのサガ』などがある[10]。共和国時代末期の内乱状態を描いたサガの集成『ストゥルルンガ・サガ』は、単体で「同時代のサガ」(Samtíðarsögur)という独自のジャンルに分類されることもある[11]
  • 古代のサガ(Fornaldarsögur)
伝説のサガとも。アイスランド植民以前のノルド人の伝承や古来より伝わるゲルマン民族の伝説を扱うサガである。古代のサガが書かれたのはアイスランド人のサガよりも後の時代で、空想的な内容を多く含む点に特徴がある。ニーベルンゲン伝説を題材とする『ヴォルスンガ・サガ』、デンマークの首長ラグナルとその息子達を扱った『皮ズボンのラグナルのサガ(ラグナル・ロズブロークのサガ)』などがある。

代表的なサガ

王のサガ

司教のサガ

アイスランド人のサガ

古代のサガ

その他

日本語訳

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

  • The Encyclopedia Americana, international edition, 1988
  • 『平凡社大百科事典』改訂新版、平凡社、2007年
  • 『角川世界史辞典』角川書店、2001年
  • 谷口幸男『エッダとサガ 北欧古典への案内』新潮社、1976年
  • 谷口幸男『アイスランド・サガ』新潮社、1979年
  • 日本アイスランド学会編訳『サガ選集』東海大学出版会、1991年

関連文献

関連項目

外部リンク

テンプレート:北欧神話

  1. サガ【Saga】の意味 - 国語辞書 - goo辞書、2013年1月15日参照。
  2. 『エッダとサガ』p91
  3. 『サガ選集』p278
  4. 日本語訳では、『アイスランドの書』は上下二段組で20ページ(『サガ選集』)、一方『ニャールのサガ』は上下二段組で245ページある(『アイスランド・サガ』)
  5. 『サガ選集』p137
  6. 『サガ選集』p278
  7. 平凡社大百科事典など
  8. Encyclopedia Americana
  9. 『エッダとサガ』p97など。なお、アメリカの百科事典The Encyclopedia Americanaではこれらから『グレティルのサガ』を除いた4作をFour Masterpiecesとしている。
  10. 『赤毛のエイリークのサガ』は王のサガに分類されることもある。(『エッダとサガ』p136)
  11. 『角川世界史辞典』