V9938

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V9938アスキーマイクロソフトヤマハの三社で開発された、TMS9918上位互換のビデオディスプレイプロセッサ(VDP)。別称MSX-VIDEO。MSX用途外ではE-VDP-Iと呼ばれることがある。

概要

当初は家庭用パソコンMSXキャプテンシステムアダプタ用に開発されたが、その後MSX2規格に取り込まれる事となった。また、比較的簡単、安価にTV画面を利用した画像表示が出来ることから、(MSX規格ではない)キャプテンシステム端末、アーケードゲーム機、家庭用ビデオ編集機、囲碁通信ネットワーク端末など多方面で採用された。 他のパソコン用途としては、雑誌Oh!FMFM-7シリーズ用のV9938ビデオボード製作記事が掲載された。

上位互換のチップにV9958(E-VDP-II)がある。

色の分解能並びに、初期パレットの設定値を原因として、機能的にはTMS9918互換でありながら、表示色には、見た目に大きな違いが出る。[1]

主な仕様

ファイル:V9938c 03.jpg
V9938(Ver.C)外観
ファイル:V9938c 01.jpg
V9938(Ver.C)外観(捺印,パッケージ相違版)
太字はVRAM128KBの場合のみ
  • VRAM:64KB~128KB。CPUからはVDPを通じてVRAMにアクセス可能。DRAMリフレッシュ機能があり、DRAMを直接接続可能。
    • MSX2の規格外だが、拡張RAM(バッファメモリ)としてさらに64KB増設することが可能。ただしこのエリアは表示用としては利用できない。
  • 解像度・色:TMS9918の全機能 + RGBビットマップ(パックドピクセル)表示
    • 256ドット×212ライン(または192ライン)
      • TMS9918のすべての画面モード + 512色中16色のパレット機能
      • 拡張機能
      • パレット機能を使った512色中16色、2画面(4画面
      • パレット機能なしの256色同時、2画面
    • 512ドット×212ライン
      • パレット機能を使った512色中4色、2画面(4画面
      • パレット機能を使った512色中16色、2画面
    • インターレース走査モードと2画面分のVRAMの使用により最大512ドット×424ドットの表示も可能。
  • スプライト表示色:拡張された画面モードにおいて、横16ドットに対して1ラインごとに1色、2枚合成して3色表示することも可能。
  • 縦方向の「ハードウェア・スクロール」機能と、上下左右の画面位置アジャスト機能
    • スプライトも一緒にスクロールするため、表示位置の補正が必要。スプライトの表示を消すための縦座標があるため、「画面上に見えているのにスプライトの原点(左上隅)を置く事が出来ない座標」が存在してしまう。
    • 横方向のハードウェア・スクロール機能はない。
    • MSX2(V9938)でアジャスト機能とキャラクタグラフィックモード(拡張スプライト使用モード)を使ってドット単位の横スクロールを実現したゲームソフトも発売された(ヘルツ"サイコワールド"・"ハイディフォス"、コナミ"スペースマンボウ"等)。
  • CPUの動作と並列にVRAMをアクセスする「VDPコマンド」機能 (ビットマップの画面モードのみ使用可能)
    • 処理速度は、当時組み合わされることの多かった3.58MHzのZ80で同容量のVRAMを操作する場合と大差なかったが、CPUと並行処理が可能なため、見かけ上の処理速度は(当時の水準では)十分なものとされた。
    • VRAM間の矩形領域の転送、矩形の塗りつぶし、直線やドットの描画、メインメモリとVRAM間のデータ転送、など。
    • AND,OR,XOR,NOTなどの論理演算と、カラーコード0を透過するTつきの論理演算も可能。
    • 論理演算をせずVRAMのバイト単位で高速アクセスするコマンドもあった。
  • 走査線検出割り込み機能(ラスタ割り込み)
    • 走査線割り込みを発生させる縦位置を指定して割り込み信号を発生させることができ、割り込み処理内でページ切り替え、縦スクロールなどを行えば「ラスタ分割」表示や、画面モードの切り替えをすることが可能。
      • ラスタースクロール等の一画面中で複数回数割り込みを発生させる処理もアジャスト機能を使用することで実現は可能だが、MSX2/2+のCPU能力では割り込み処理でほとんどのCPU処理が埋まってしまい実用的ではなく、単純な画面の上下二分割程度に使われることが多かった。
    • ラスタ割り込みでパレットを切り替え、同時に表示する色数を増やしたソフトもあった。
  • スーパーインポーズ機能: 外部ビデオ画面との合成表示が可能。別売のデジタイザーなどと組み合わせて使用する。
  • NTSCビデオ出力に加え、PALビデオ出力、アナログRGB出力もサポート
    • MSXではEIAJ規格の21ピンコネクタ(RGBマルチ)が使用された。本体の出力はDIN8ピン。
  • マウスライトペン専用インターフェース搭載。なお、MSX2では未使用。
  • アクセスタイミングの違いにより、バージョンはA~Cまである。
  • CPUとのインターフェイスとは別に、カラーバスという8ビット幅の入出力インターフェイスを搭載している。このバスは前述の外付けデジタイザとは異なり、CPUなどからのデータ転送無しにVDPが直接デジタルデータをVRAMに取り込むことができる。また、前述のマウスインターフェイスはカラーバスを利用する。カラーバスを利用して外部にカラーパレットを設置することも可能。
  • V9938にはコプロセッサ[2]があるが、関連資料[3]に記載が無く詳細は不明。

脚注

  1. TMS9918Aに針路をとれ。
  2. V99C37(VCP)YAMAHA LSI 広告 CQ出版 トランジスタ技術 1989年8月号 P.119
  3. 「V9938 MSX-VIDEO テクニカルデータブック」

参考資料

  • 「V9938 MSX-VIDEO テクニカルデータブック」アスキーマイクロソフトFE本部 日本楽器製造株式会社 編 ISBN 4-87148-415-7
  • 「V9938(E-VDP-I) カタログ」ヤマハ、カタログNo.LSI-1199383 1991.09