TOPPERS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2013年10月19日 (土) 10:45時点におけるKaizen nagoya (トーク)による版 (TOPPERSプロジェクト)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

TOPPERS(Toyohashi Open Platform for Embedded Real-Time Systems、トッパーズ)は、オープンソースの組込み向けリアルタイムカーネルおよびソフトウェア部品群である。また、当該ソフトウェア群の普及促進を担う特定非営利活動法人であるTOPPERSプロジェクトを指すこともある。

TOPPERSプロジェクト

高田広章教授(名古屋大学)が豊橋技術科学大学在職中に研究室の学生とともに開発した、μITRONカーネルのソースコードの公開がTOPPERSプロジェクトの発端である。その後、多くの教育機関、公的機関、企業、および個人の協力を得て成長を続け、2003年には特定非営利活動法人として再編成した。

μITRON仕様による成果物が出発点であったことから、TRON陣営と見なされることがある。しかし、TOPPERSプロジェクトの成果にはμITRON仕様とは違う,ISOによる国際規格となったOSEK/VDX仕様に準拠したカーネル(TOPPERS/ATK1)も公開している。なおOSEKの一番小さい仕様(使用)とTOPPERS最小セットカーネルはタスクの待ちがないという点で類似性がある。TRON系という括りはインタフェースの関連性という視点以外には技術的な意味がない。

日本OSS推進フォーラム(代表幹事 栗島 聡)は、2012年、優れたオープンソースソフトウェア(OSS)の開発及び普及に貢献した個人等を表彰する第8回 日本OSS奨励賞の受賞者としてOSC事務局とともに特定非営利法人TOPPERSプロジェクトを選定。日本OSS奨励賞は、過去1年間にOSSの開発や普及に顕著な活躍をした個人ないしグループを表彰。2009年度に新設し第4回目。

新世代カーネル

2007年頃までのTOPPERSプロジェクトは既存の標準仕様に対するオープンソース実装を公開するという方針で活動してきた。2007年以降はμITRON4.0仕様の経験を踏まえて新しいシステムに対応するカーネルを仕様から作成し公開するという方針へ転換した。この新しい方針に基づくカーネル仕様および実装は、TOPPERS新世代カーネル(若しくは単に新世代カーネル)と呼んでいる。正確には第二世代と呼んだ方がよかったかもしれない。次の世代を作る時には,第三世代と命名するだろう。μITRONの仕様を基に新しいカーネル仕様を策定するという方針はT-Kernelも同じである。TOPPERS新世代カーネルとT-Kernelの互換性があるかどうかは,どちらの団体も明らかにしていない。 それぞれカーネルの設計思想がどのように違うかの対比があると分かりやすい。

直接的・間接的な成果

TOPPERSプロジェクトによる直接的・間接的な成果物には以下のものがある。2007年頃の組込み業界では、主な配布物がJSPカーネルであったため、TOPPERS/JSPカーネルを単に「TOPPERS」と呼ぶことがあった。現在では、いろいろな配布物があり、ダウンロード件数が多いものは、新世代カーネル(ASPカーネルなど)に移行しつつある。

初代系

  • JSPカーネル - μITRON 4.0のスタンダードプロファイルに準拠したカーネル
  • IIMPカーネル - μITRON 4.0/PX仕様に準拠したメモリ保護拡張機能を持ったカーネル
  • IDLカーネル - IIMPカーネルをベースとしたダイナミックローディング拡張機能を持ったカーネル
  • FDMPカーネル - 機能分散型マルチプロセッサ向けに拡張したカーネル
  • SMPカーネル - 対称型マルチプロセッサ向けに拡張したカーネル
  • FI4カーネル - µITRON4.0仕様に規定しているすべての機能を持ったカーネル(Fullset of µITRON4.0)
  • Automotive Kernel 1.0 (ATK1) - 自動車で主に用いているOSEK/VDX仕様に準拠したカーネル実装。
  • HRPカーネル - 宇宙機など高信頼性分野での適用を狙ったカーネル
  • 最小セット(SSP)カーネル - μITRON 4.0仕様の最小機能に対応したカーネル。名古屋市工業研究所などで実装している。

第二世代系 (新世代)

  • ASP(Advanced Standard Profile)カーネル - TOPPERS第二世代カーネルの基盤(出発点)となるリアルタイムカーネル。
  • FMPカーネル - マルチコア向けカーネル。組込み向けのSMPをサポートするカーネル。
  • HRP2カーネル - 宇宙機など高信頼性分野での適用を狙ったカーネル
  • 最小セット(SSP)カーネル(公募版) - TOPPERS割り込み処理モデルに対応したμITRON 4.0仕様の最小機能(Smallest Set Profile)に対応したカーネルでTOPPERS公募プロジェクトで設計したもの。杉本明加氏がアーキテクト。
  • TECS、テックス - TOPPERS Embedded Component System。組込みソフトウェアの汎用性と再利用性を実現する技術。最小セットカーネル(公募版)などにも対応。

ミドルウェア等

  • TINET,タイネット - ITRON TCP/IP仕様に準拠したTCP/IPプロトコルスタック
  • FatFs for TOPPERS - FatsFSは赤松武史氏が開発し、フリーソフトウェアとして公開しているFAT仕様準拠のファイルシステム。FatFs for TOPPERSは、 FatFs(R0.04)を基にTOPPERS/JSPカーネル上で動作するようデバイスド ライバを追加。
  • CAN/LINミドルウェア - 標準的な車載通信プロトコル であるCAN(Control Area Network)およびLIN(Local Interconnect Network)用のミドルウェア。それぞれの通信プロトコルに対して、RTOS 上で動作するRTOS対応ミドルウェアと、RTOSのない環境で動作するNonOS対応 ミドルウェア有。
  • (FlexRayミドルウェア)
  • SafeG - OS並列同作を目的とするハイパーバイザ[1]通常の OS仮想化と比較して1マイクロ秒程度でOSを切り替える高速性、フットプリントの小ささ、割り込み応答性の保証といった組み込みOS向きの特性を持つ。 ARMTrustZoneを利用して実装している。[2]
  • TTSP(TOPPERS Test Suite Package) - TOPPERS新世代カーネル(第二世代)を対象とした、各種試験ツール、試験プログラム、試験データ、文書の統合。
  • TLV(TraceLogVisualizer) - 各種RTOS、シミュレータ、エミュレータ等が出力する追跡記録(trace log)を可視化し、 追跡記録の解析を容易にするための道具。

関連団体

公式

事実上

  • 組込みシステム開発技術研究会(CEST:セスト) - 東海地方の組込み技術者の研究会。TOPPERS会員企業が多い。
  • 組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST:エスウェスト) - 年に1度、合宿型の研究会を開催している。TOPPERS会員企業の参加が多い。実行委員もTOPPERS会員企業が多い。事務局がTOPPERSプロジェクト内にある。TOPPERSプロジェクトがSWESTの協賛団体になっている。
  • クリティカルソフトウェアワークショップ(WOCS:うおっくす) - JAXA,IPA主催のワークショップを年に1回開催している。TOPPERS会員企業の参加が多い。プログラム委員もTOPPERS会員企業が多い。TOPPERSプロジェクトがWOCSの協賛団体になっている。
  • TERAS ツールの仕様を検討する団体。追跡可能性などを検討している。TOPPERS会員企業の参加が多い。

特別会員

()書きは過去の特別会員

参照

テンプレート:Reflist

外部リンク

テンプレート:TRON
  1. テンプレート:Cite web
  2. テンプレート:Cite web