オパビニア

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ファイル:Opabinia regalis2.jpg
特有の器官(それは口ではない)で、オットイアを捕らえるオパビニア

オパビニア学名Opabinia)は、約5億2,500万- 約5億500万年前(古生代カンブリア紀前期中盤[カエルファイアトダバニアン末期]- 中期後半[セントデイヴィッズメネヴィアン中期])の海に生息していた動物バージェス動物群に属するものの一つ。 オパビニアO. regalis (オパビニア・レガリス)の1のみで形成されている(2009年時の知見)。

属名は現地語由来で「岩場のもの」を意味するテンプレート:要出典

化石

ファイル:Opabinia smithsonian.JPG
バージェス頁岩から見出されたオパビニアの化石(米国、スミソニアン博物館所蔵)

化石は、カナダブリティッシュコロンビア州バージェス山にある約5億500万年前(カンブリア紀中期後半)の地層、および、中国雲南省澄江にある約5億2,500万- 約5億2,000万年前(同紀前期中盤- 中期初頭)の地層から発見されている。本種は、バージェス頁岩にて米国人古生物学者チャールズ・ウォルコットによって発見され、1912年記載[1]されている。しかし、注目を集めるようになるのは1972年以降である(後述を参照)。

特徴

ファイル:Opabinia BW2.jpg
オパビニア(CGによる生態復元想像図)

体長はおよそ4 - 7センチメートル程度。 頭部にゾウの鼻のような管状の器官[2]や5つのといった、他には全く見られない独特の形態を持つ。 細長い体は体節に分かれ、各体節にほぼ一定の幅の(ひれ)状の構造が対をなして配列されている。 推進器官と考えられるこの構造体は、カンブリア紀の一部の動物だけに特有のものである。

発見者はこれを、原始的な節足動物で、環形動物の性質を色濃く残しているものと見なした。その後の研究者もほぼその見解を踏襲していた。

ところが1985年イギリス人古生物学者ハリー・ウィッティントンen)が再検討したところ、節足動物とは見なされず、さらには、環形動物を含む現在の動物には当てはまらない構造の動物であるらしいことが分かった。

それによると、頭部の前面に5つもの眼を具えている。前方の一組の眼と1つの正中眼(顱尋眼、松果眼、en)は三角形を作って配置されているが、斜め後方にはさらに2つ一組の眼がついている。この特異な後方2つの眼の基部には短いながら眼柄がついていて眼を心持ち持ち上げている(眼柄は前方の一組にもわずかについているので、それも数えて4本ともされる)。本種はそれによって上方に360度近い視野を確保していたように見える。

また、頭部先端の下面にはゾウの鼻にも似たところのある長くて柔軟な管状の器官を具えている。この管の先端には、ギザギザのついたカニハサミのような、トングのような構造体が並んでいて、物を掴めるかのように見える。しかし、口はそこには無く、管の付け根の後ろに開いている。

体は15の体節に分かれており、それぞれの体節の側面には膜状の(えら)がついた突出部がずらりと並ぶ。これら規則性を持って連なる突出部は、ムカデの脚のように、ガレー船の櫂(かい)のように、順序良く波状に動かすことによって推進力を生み出すことができたはずであり、本種はこれを用いて泳ぎ、獲物を捕まえていたものと考えられる。 なお、本種の鰭には節足動物にあるような関節や歩脚型付属肢が見当たらない。 体の最後尾についている3対の小さな鰭は、斜め上に向いている。

1972年にバージェス動物群の学会発表があった際、この復元図が映し出された途端、会場内は爆笑の渦に包まれた。そうして、いつまでも収まらなかったため、学会進行が一時中断となったという逸話が残っている。

系統分類

異質性はあるか

ファイル:Burgess scale2.png
バージェス動物群のスケール比較
テンプレート:Color Anomalocaris canadensis アノマロカリス・カナデンシス 
テンプレート:Color Laggania cambria ラガニア・カンブリア 
テンプレート:Color Opabinia regalis (オパビニア・レガリス) 
テンプレート:Color Wiwaxia corrugata ウィワクシア・コルガタ 
テンプレート:Color Pikaia gracilens ピカイア・グラキレンス 
テンプレート:Color Hallucigenia sparsa ハルキゲニア・スパルサ

本種と現生生物との類縁関係ははっきりしない。 『ワンダフルライフ』の著者であるスティーヴン・ジェイ・グールドは、バージェス動物群には現在の動物門の枠組みには収まりきらないプロブレマティカ(不詳化石)であり、動物界の孤児であるとして、カンブリア紀動物相の現在との異質性を主張し、その代表例の一つとしてこの動物を扱ったが、その後、専門家からの反発が強く、そこまで言うほどの異質性は無いとの主張も多い。 環形動物節足動物共通祖先から枝分かれしたものとする、ハリー・ウィッティントンの説などがそれである。

類似性はあるか

また、アノマロカリスとの類似性を指摘する研究者もいる。 例えば、左右に対をなす鰭のうち、最後の3対は斜め上を向くが、この点ではアノマロカリスも同じである。なお、このような配列は現生の動物には見られない。 加えて、頭部の管状器官を触手と見なせば、頭部の下面に口があり、その前に触手がある、という点でも共通しており、この触手の形が大きく異なっているだけと見ることもできる。 アノマロカリスには、ラガニアアンプレクトベルアen)等、近縁の別属があったこと(画像資料[3])が分かっており、オパビニアはそれらと同系統の、しかしもう少し離れたところに位置している、という説である。

脚注

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関連項目

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外部リンク

日本語による

外国語による

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  1. 生物学上の正式記録。
  2. もっとも「管」は便宜的表現であり、中空構造になってはいない。
  3. The Anomalocarid Bauplan - The Anomalocaris Homepage