JR東海キハ11形気動車
キハ11形気動車(キハ11がたきどうしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)に所属するローカル線用気動車である。同社が保有するキハ30形・キハ28形・キハ58形気動車の老朽置き換えと、ワンマン運転の拡大用として投入された。
2014年(平成26年)4月現在、美濃太田車両区に17両、伊勢車両区に21両在籍し、東海交通事業が4両保有している。
概要
非電化地方交通線向けに、初期費用および運用費用を抑制するため、新潟鐵工所製の軽快気動車を基本としつつ、JR東海の事情にあわせて仕様の変更を行っている。
車体
車体は、最大長18m(車体長17.5m)、幅2.7mの普通鋼製で、日本国有鉄道(国鉄)時代の車両 (20m) と比べて小型である。出入口は、ワンマン運転に対応して車体両端に寄せて幅850mmの片引戸を2か所に設け、押しボタン式の半自動ドアとした。客室側窓は、211系電車と同様の下降式の1枚窓である。2000年6月から伊勢車両区所属車両のみ車体前面のスカートが下方向へ拡大改造が開始された。0・100番台は前後とも延長されたのに対し、300番台は新宮方のみ延長されていたが、後に亀山方も延長された。2009年からは美濃太田車両区所属車両に対しても施工が開始されており、現在も改造が進行中である。
室内設備
腰掛は、ラッシュ時と日中の閑散時に対応するため、ロングシートとボックスシートを組み合わせたセミクロスシートを採用している。形状をバケットタイプとして座り心地の向上を図るとともに、ボックスシートは間隔を1,550mmとしている。定員は110名(座席60名。ただし300番台は46名)で、従来のキハ40形よりも増加している。主に短距離路線で使用されることから、300番台を除きトイレは設置されていない。冷房装置は、機関直結式のC-AU29を1基搭載する。一部車両にはドアチャイムと車椅子スペースが設置されている。
エンジン・台車
エンジンは、キハ85系気動車と同じカミンズ製のC-DMF14HZA (330ps/2,000rpm) を1基搭載するが、変速機に軽快気動車用のC-DW15を使用することから、出力を抑えている(キハ85系用は350ps)。車体の軽量化とエンジン出力の向上により、従来車に比べ走行性能は格段に向上しており、最高速度は95km/hで同等であるが、20‰の上り勾配で60km/h以上、25‰でも50km/h以上での走行が可能である。
台車は、軽快気動車で実績のある大径心皿式の空気バネ台車のC-DT58(動台車)、C-TR242(付随台車)で、動台車は2軸を駆動する。変速機は新潟コンバータ製で、変速1段、直結2段式により、従来よりも加速・粘着性能の向上を図っている。
※鉄道ファン2011年2月号に、キハ11形の紹介ページが記載されている。 テンプレート:-
番台区分
0番台
1988年(昭和63年)に新潟鐵工所で10両 (1 - 10) が製造された、暖地用の番台区分である。9は落石事故により2007年1月に廃車されたが、残る9両全車は伊勢車両区に配置され名松線・参宮線・紀勢本線で使用されている。紀勢本線多気以南での運用は長距離列車が多いため、必ずトイレのある300番台と連結した2両編成以上で運用されている。なお、名松線運用車両の一部に予備ブレーキのシステム変更車両がある。これは、家城駅の夜間留置の無人走行事故対策として改良された車両である。 テンプレート:-
100番台
1988年に新潟鐵工所と自社名古屋工場で23両 (101 - 123) が製造された。基本構造は0番台と同じだが、笛シャッタの取り付け、扉付近の保温対策などが施され、寒地向けとなっている。
当初は全車が美濃太田車両区に配置されていたが、107 - 112の6両が伊勢車両区に移っている。美濃太田車両区に残る車両は高山本線(主に岐阜 - 白川口間)、太多線で使用されている。鈴鹿サーキットでF1グランプリが行われた際には美濃太田所属車が貸し出され、臨時列車に用いられた。このときは定期列車では見られない5両編成でも運転された。トイレがなくなおかつ営業運転で他系列との混結ができない(回送運転でのみキハ40系と併結)ため単独運用を組まれ、高山本線の長距離列車には使われていない。伊勢車両区に移った車両は、0番台と共通運用されている。この他、車外右側にあるバックミラーの取り付け方が配置区によって微妙に異なる(美濃太田所属車は車体前面から、伊勢所属車は車体側面に取り付けられている)。また、美濃太田所属車の左側ミラーには積雪を防止するためのカバーも取り付けられている。 テンプレート:-
200番台
東海交通事業が1993年(平成5年)の城北線全線開業時に4両 (201 - 204) を新製したもので、仕様は基本的にJR東海の0・100番台と同じである。
201, 202は城北線仕様で、扉付近の保温対策の廃止やドア部のステップの廃止、外板塗色の変更などが行われている。0・100番台に巻かれているオレンジと緑の帯に代わって、この2両には窓周りと前照灯周りにオレンジの帯が巻かれている。
203, 204の2両は100番台と全く同仕様で、城北線の線路使用料相殺のためにJR東海美濃太田車両区に貸し出され、同区に在籍するJR東海所有車(100番台)と混用されており、貼付されている社章も含めJR東海所有車とまったく同様の外観となっている。203は、201, 202のJR東海名古屋工場への検査入場時の予備車として城北線で使用されることがあり、その際には、ステップ部分に段差解消のための金属製の箱が置かれる。一方の204は城北線を走行したことがない。 テンプレート:-
300番台
1999年(平成11年)に増備された暖地向け改良車の番台区分で、新潟鐵工所で製造された6両 (301 - 306) が存在する。ステンレス車体となり車幅が2.7mから2.8mに拡大されているほか、車椅子対応トイレの設置、側窓の固定化、貫通路上部への前照灯の増設が行われた。前面の行先表示器は左側上部に移されている。車内のカーテンは同時期に製造された313系電車と同様のフリーストップ方式となった。同年に増備されたキハ75形と部品の共通化を図るため仕様が変更され、エンジンはC-DMF14HZB(350ps/2,000rpm)、台車はキハ75形からヨーダンパを省略したボルスタレス式のC-DT64/C-TR252を採用、運転台のマスコンハンドルは手前に引く横軸式になった。この他に、座席の枕カバーが0・100番台の黒からベージュに変更されたほか、車外へのバックミラーの取り付け方も0・100番台とは異なるものになった。
全車が伊勢車両区に配置され、唯一トイレを持つ利点を生かして主に長距離列車の多い紀勢本線で運用されている。6両しか在籍していないため2両以上で運用される時は0・100番台と組み合わせて使用される。名松線ではほとんど運用されない。 テンプレート:-