FM-8

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

FM-8(エフ・エム・エイト)は、1981年富士通が初めて発売した8ビットパソコンである。正式名はFUJITSU MICRO 8。

概要

モトローラ社のCPU MC6809をメインCPUとグラフィックを独立制御するディスプレイサブシステムへそれぞれ搭載する2CPUのアーキテクチャを採用。メインCPUとサブシステムは、ホストCPUとグラフィック端末の関係にあたり、サブプロセッサが、グラフィックス処理など、当時のハードウェアにとって大きな処理を肩代わりすることで、メインCPUの処理を軽減し、全体としてのパフォーマンス向上を目指した。このアーキテクチャは後のFM-7シリーズFM-11シリーズFM-16βシリーズまで引き継がれてゆく。

世界で初めてパソコンに当時の大型機並みの64KビットDRAMを採用し[1]、640×200ドット8色の表示機能、アナログ入力やRS-232Cの標準装備など当時としては画期的な機能を搭載し、218,000円という戦略的価格で発売した。オプションには漢字ROMやフロッピーディスクドライブ(5インチ、8インチ)、バブルカセット(32KB、128KB)などの補助記憶装置のほか、GP-IBIEEE 488)ボード、I/O制御ボードなど計測機器との接続や外部機器制御を目的とした拡張ボードや、FM-8を大型コンピュータのオンライン端末やオフラインのデータ入力端末として利用するソフトも提供され、パーソナルユースに加え富士通の得意とするビジネスユースを強く意識した商品でもあった。またZ80カードを搭載することでCP/Mの動作も可能で、海外製の各種言語や開発ソフト、データベースを提供した事もコンピュータソフト開発関係者の需要を見込んだものである。後に8088カードと128KBの増設メモリーも発売された。Z80カードコネクタにはメインCPUのバスが接続されており、ここに接続するPSG音源カードがサードパーティから発表されている[2]

内蔵する電源からの発熱が大きく、筐体の電源上部にあたる部分にスリットが設けられた事から、発表資料と製品カタログでは外観が異なる。また、製品が潤沢に供給されるようになったのは1981年末頃からであった。

後に、姉妹機種として一部機能を割愛、高速化した廉価版であるFM-7と、上位機種であるFM-11シリーズが発売された。 FM-7発表後は、メインCPU・サブCPUの高速化やカードスロットの外付けなど、FM-7との互換性を確保する改造がホビーユーザを中心に流行した。

イメージキャラクター伊藤麻衣子。女性アイドル起用の先駆けでもあった。

仕様

FM-8
  • 1981年5月発売。218,000円。490mm×332mm×110mm 6.1kg キーボード一体型
  • 型番: MB25020
  • CPU: メイン 68A09 1.2MHz、サブ 6809 1MHz
  • ROM: F-BASIC Ver.1.0 32KB、ブートローダ 2KB、サブシステムモニタ 8KB、キャラクタ 2KB
  • RAM: メイン64KB(32KBはF-BASIC Ver.1.0 ROMとスイッチで切替)、サブ5KB、VRAM 48KB
  • Text Mode: 80×20/25、40×20/25[3]
  • Graphic Mode: 640×200dot 8色カラー1プレーン
オプション
  • 本体内蔵オプション:
    • MB22002 非漢字キャラクタセットROM(本体基板上のソケットに装着)
    • MB22003 漢字キャラクタセットROM
    • MB22401 Z80カード
    • MB28011 8088カード(5.25"版 CP/M-86とのセット)
    • MB28012 8088カード(5.25"版 CP/M-86、拡張RAMモジュールとのセット)
    • MB28013 8088カード(8"版 CP/M-86とのセット)
    • MB28014 8088カード(8"版 CP/M-86、拡張RAMモジュールとのセット)
    • MB22601 32KBバブルホルダユニット
      • 空き部分には鉄製の箱が取り付けられており、俗に小物入れと呼ばれた。
  • 外部オプション:
    • MB27603 標準フロッピーディスクドライブ(8")
    • MB27605/MB27607 ミニフロッピーディスクドライブ(5.25")
    • MB27606/MB27608 増設用薄型ミニフロッピーディスクドライブ(5.25")
    • MB22605 128KBバブルホルダユニット
    • MB26001 システム拡張ユニット ほか
  • 動作する主要OS:
    • OS-9/6809 Level1
    • FLEX
    • UCSD Pascal
    • CP/M-80(Z80カード装着時)
    • CP/M-86(8088カード装着時)
    • F-BASIC Ver.2.0(いわゆるDISK BASICだが、本体ROMを使用せずRAM上で動作する)

BUBCOM80

同時期に、富士通の技術者だった渡辺昭雄が創業したベンチャー企業のシステムズフォーミュレート社(PET2001の日本総代理店でもあった)が、FM-8と外観や磁気バブルメモリなど類似点が多い「BUBCOM80」を開発して、1981年9月から168,000円で発売。生産は富士通が請け負っていた。BUBCOM80はZ80を搭載したCP/Mマシンで、意欲的な設計であったものの営業的には奮わず、1983年4月上旬の同社の自己破産とともに短命に終った[4][5]

仕様
  • 450mm×320mm×100mm 4.0kg キーボード一体型
  • CPU Z80A 4MHz
  • RAM 64KB
  • グラフィック用VRAM 48KB(オプション)
  • 表示 160x100dot 8色カラー, 640x200dot 8色カラー(オプション)

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

  • パリティチェック用のDRAMを搭載する空きパターンも基板上にあるが、製品では使われていない。パリティエラーが発生するとNMI割り込みが発生し、F-BASICではその時点でのCPUのレジスタ内容を表示して動作を停止する。
  • 姉妹機の位置づけで発売されたFM-7にも物理形状は異なるもののほぼ同様の回路が実装されたため、FM-7用で音源を使用するソフトがFM-8でもそのまま動作した。
  • グラフィックス画面にフォントを直接描画
  • 毎日新聞社経済部編『これがベンチャーだ すご~い会社 もうかるビジネス』毎日新聞社、1983年、pp.53-54
  • 関口和一『パソコン革命の旗手たち』日本経済新聞社、2000年、p.262