API規格

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API規格(エーピーアイきかく)とは、アメリカ石油協会(American Petroleum Institute) が定めた石油に関する規格の総称のことである。日本国内では一般にはエンジンオイルのグレードを定めていることで知られているが、これは油田における原油生産設備からパイプライン輸送、石油製品の製造まで、数多くの規格が定められているものの中のごく一部である。エンジンオイルの規格の認証・ライセンスの発行はEolcsが行う。

エンジンオイルの品質規格

ガソリンエンジン用規格(S・サービスカテゴリ)

オイルの酸化安定性、デポジット防止性、サビ・腐食・磨耗防止性、洗浄性、蒸発性、せん断安定性など多くの審査項目からSA~SNまで12種類のグレードに分類される(SIとSKは他の用語との関係等から除外されている [1])。 現在APIにおける有効(Current)な規格はSJ,SL,SM,SNでSH以前は廃止(obsolete)となっている[2]

SカテゴリのSはService(またはService station)もしくはspark ignition engineの頭文字から(API公式データではServiceとなっている[2])。使用するオイルと自動車の製造年代のマッチングについても言及しているため、SA~SGなど1980年代以前の古い自動車を対象としたグレードのオイルが市販されていることは少ない。近年設定されたSLグレードから、エンジンへの影響評価ばかりではなく、二酸化炭素炭化水素窒素酸化物の排出削減、オイル交換時期の延長など環境評価としての側面を打ち出したことが特徴。2000年前後に、表示されたグレードに達しない基準のエンジンオイルがアメリカ国内で市販され、規格の信頼性が問題となったが、新グレードの設定などの措置を行い対処したとしている。国産車ではエンジンオイルの指定にAPI規格を用いるため日本国内では欧州のACEA規格よりも認知度は高く、ホームセンターカー用品店でユーザーがオイルを選ぶ基準の一つにもなっている。

現在は、新設(2010年10月より運用)のSN/RCというクラスができ、こちらが最上位の規格となっている。 RCとはResource Conservingの略語で、API SN規格に加え、省燃費性、触媒への適合性(リン分の揮発性を規定)、高温デポジット抑制、エマルション保持性(E85燃料対応)が要求されており、API SN/RCは、ILSAC GF-5と同じ内容の規格とされている。
なおSM規格まではRCではなくEC(ENERGY CONSERVING)が用いられていた。RCとECの基本的な内容はさほど変わらず、実質的にはRCはECから名称が変わっただけのものともいえる。しかしENERGY(エネルギー)からRESOURCE(資源)となった事から省エネルギーのみだけではなくもっと全体的な省資源までを考慮した規格であるという意味合いが強くなっている。

ディーゼルエンジン用規格(C・コマーシャルカテゴリ)

ディーゼルエンジン用のオイルには、CA 以下、CF-4までのグレードが日本国内(海外については後述)ではあり、乗用車農業機械向けには CD級のオイルが一般に良く用いられる。CカテゴリのCはCommercialもしくはCompression ignition engineの頭文字から(API公式データではCommercialとなっている[2])。またCF-4の4は4サイクル用である事をしめす。尚、ディーゼルエンジンに必要とされる成分(特に軽油内の硫黄分に対応するための酸化防止剤や、すすに対する清浄分散剤)の含有量が少ないので、殆どのガソリンエンジン専用オイルを流用することは不可である。ただし、合成油など、添加剤配合量の元々多いオイルはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方に共用できるタイプのオイルも一部で流通している。これらはAPI規格のディーゼルオイル規格が付いているかどうかで判断する。逆にガソリン兼用ではないディーゼル専用オイルをガソリンエンジンに使用した場合、短期的には重大な不具合を起こす事は考えにくいが中長期的には悪影響をもたらす可能性がある。これはガソリンエンジンとディーゼルエンジンでは求められる洗浄分散性が異なる為である。

尚、日本国内ではCG-4以降の規格のオイルは一般ユーザーの眼に触れることは殆どないが、米国やその他の国ではCG-4以降のAPI規格が使用されており、CGの後にCH-4,CI-4(CI-4+)と続き現在の最新規格はCJ-4となっている。これは日本国内ではCF-4から次のAPI規格であるCG-4に移行せず、日本自動車技術会規格(JASO規格)であるDH-1を導入した為である。その後もEGRへの対応にDH-2,DL-1といった規格を導入していき国内のディーゼルエンジンはJASO規格が主流となった。これは日本と欧米では排気ガス規制(日本:NOx規制重視 欧米:PM規制重視)やエンジン設計(動弁系の機構やEGRの有無)が異なりCG-4では日本のエンジンが要求する性能に一部達しなかった為とされている。一例としてはCG-4を日本に多いすべり動弁のエンジンに使用した場合のカムの摩耗など不具合が見られたなどがある。これらの理由からAPI規格を要求する輸入車(トラック等)を除くとCG-4以降の規格は国内での需要は殆ど無いと言える。

ディーゼルエンジン用API規格として国内で最もよくみかけるCF-4は古い規格であるため、DPFへの対策は規格に含まれていない。その為DPF装着車に"CF-4のみ"表記してあるオイルの使用は厳禁である。

国内ではSM/CFなどといったCF規格が付いたガソリン・ディーゼル兼用オイルが見られるが2010年でCF規格が廃止されたため、これ以降はCF"相当"表記となる。同様にCF-4もさらに以前の時点でAPIでは廃止となっているが、DH-1,DH-2規格オイルにはCF-4相当表示がついているものが多い。また数は多くないがDL-1規格オイルの一部にもCF-4相当と表記してあるものもある。 現在APIにおける有効(Current)な規格はCH-4,CI-4(CI-4+),CJ-4でCG-4以前は廃止(obsolete)となっている[2]

1970年以前

現行の規格分類は1970年に設定、1971年導入された。それ以前はガソリン用としてML(Motor Ligh)、MM(Motor Medium又はMotor Moderate)、MS(Motor Severe)、ディーゼル用としてDG(Diesel General)、DM(Diesel Medium又はDiesel Moderate)、DS(Diesel Severe)と用途にあわせて各3種類、計6種類の分類が存在した。 この分類は1952年から用いられたが同じ規格(例えばMS規格)であっても50年代前半と60年代後半では当然ながら要求される性能が異なってくる。年々高くなる要求に対応する形で自動車メーカーが独自規格を設定する事となり、規格としての有用性が低下していた。 そこで変化していく要求に対し適宜新規格を追加する現行の分類方式にすることで対応する形となった。

なお現行のAPI規格分類はSA、CAから始まったわけではなく、SA~SD(SE)とCA~CDは旧分類から移行したものとなる。このため実質的に現行分類の設定後に新規に追加された規格はガソリン用としてはSE(もしくはSF)、ディーゼル用としてはCEからとなる。旧分類と現行分類の関係および関連性のあるメーカー・軍用・工業規格について以下に示す。

  • SA:ML - 無添加鉱油
  • SB:MM - 酸化防止剤添加
  • SC:MS(1964年) - Ford M2C101-A
  • SD:MS(1968年)- Ford M2C101-B, GM 6041-M(1970/7以前)
  • SE:MS(1972年)[3]- Ford M2C101-C, GM 6136-M(6041-M改定), MIL-L-46152A
  • CA:DG - MIL-L-2104A
  • CB:DM - MIL-L-2104A SUPPLEMENT-1
  • CC:DM - MIL-L-2104B & 46152B
  • CD:DS - MIL-L-2104C/D/E & 45199・Caterpillar Series3

記載しているMIL規格に関しては一部を除きガソリン・ディーゼル兼用となるためとAPI規格と完全な互換性があるわけではないが、ガソリン又はディーゼルに関する部分で互換性がある。 1952年以前はML,MM,MSの前身となるRegular(無添加鉱油)、Premium(酸化防止剤添加)、Hevy Duty(酸化防止剤・清浄分散剤添加)という分類が1947年より使われていた。それ以前はSAE粘度分類のみだった。

外部リンク

注釈

  1. API規格からSIが除外された理由としては国際単位系の略称としてSIが使用されている点とガソリンエンジンを示すspark ignition engineの略としてSIが使用される場合があること、そしてSIのIを数字の1と見間違う可能性がある事があげられる。 SKについてはオイル分野とも関連性のある韓国の石油関連の企業(SK)と混同する可能性があり混乱を避ける為に除外されている。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 API MOTOR OIL GUIDE(PDF)
  3. 現行分類が設定された直後に追加された規格のためMS規格と扱わない場合もあるが、1971年に1972年型のMS規格という形で追加されたため、MS規格とする場合もある。


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