ABCワールドニュース

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テンプレート:Infobox televisionABCワールド・ニュース』(ABC World News)は、アメリカABCニュースが制作し、ABCのネットワークで放送されている報道番組である。1978年放送開始の『ワールド・ニュース・トゥナイト』(World News Tonight、略称WNT)を2006年7月に改称。放送時間は18:30-19:00(東部標準時/太平洋標準時)。

第1期:3人のアンカーの時代

1970年から放送されてきた「ABCイブニング・ニュース」(ABC Evening News)の後継番組として、番組名を「ABCワールド・ニュース・トゥナイト」(ABC World News Tonight)とし1978年に放送開始。

アンカー(ニュースキャスター)は3人のアンカー(co-anchor)が異なる場所から担当する。政治ニュースを中心にワシントンD.C.から フランク・レイノルズ(Frank Reynolds、3人の中で中心人物)、海外ニュースをロンドンからピーター・ジェニングス(Peter Jennings)が、国内ニュースはシカゴからマックス・ロビンソン(Max Robinson、全米ネット初の黒人アンカー)が伝えるという珍しい体制をとる。

1970年代までのアメリカではNBCが2人体制の期間が長くCBSは1人体制が続き、これに対してABCは試行錯誤を続けてきたが、結果として3位体制という試みになった。しかし、情報が集まるのは3人がいないニューヨークであって、また例えばメキシコで起きたニュースをロンドンから伝えるといった非効率の面もあって、見直されることとなった。

第2期:ピーター・ジェニングスの時代

1983年にレイノルズが亡くなり、ロンドンから伝えていたピーター・ジェニングスが単独アンカーとしてニューヨークから伝えることになる。1984年9月からは、番組名も彼の名を冠した World News Tonight With Peter Jennings となった。

ジェニングスは海外取材歴が長かったこともあり、単独で担当するようになってからも、国内ニュースのほかに海外のニュース取材も積極的に行なった。日本には1985年の原爆記念の日に広島から放送したほか、昭和天皇崩御の際にも来日して取材・放送を行った。また1993年東京サミットで来日した際には(当時日本では解散総選挙の真っ只中でもあったため)日本全国各地を取材・放送を行った。

ジェニングスと同じく1980年代前半にトム・ブロコウが「NBCナイトリーニュース」の、ダン・ラザーが「CBSイブニングニュース」のアンカーとなり、これら三大ネットワークの夕方ニュース番組は激しい視聴率競争を展開した。80年代後半からの国際社会の激変の中で、番組は国際報道で強みを発揮し、10年あまり視聴率競争で優位にあった。しかし90年代後半から「NBCナイトリーニュース」が優位に立ち、以後後塵を拝する格好となった。

2001年アメリカ同時多発テロ事件に関して愛国心が渦巻く中、冷静を保った報道姿勢が保守層から反感を買い、視聴率が急落する一幕もあった。

2005年4月、ジェニングスは自らが肺癌患者であることを告白し、病気療養に専念する為に降板。同年8月7日、67歳で亡くなった。ジェニングスの死は世界中で報道された。ライバルであったNBCニュースは、ジェニングスへの哀悼の意を異例の新聞全面追悼広告として表した。WNTを放送していたNHK衛星第1テレビでABCの追悼番組を放送した。

ジェニングスの病気療養・死去から新アンカーが決まるまで、ジェニングスが担当していた平日の担当は、平日朝の番組『グッド・モーニング・アメリカ』(Good Morning America、GMA)の司会者チャールズ・ギブソン(Charles Gibson)や、20/20 の司会者エリザベス・バーガス(Elizabeth Vargas)、番組の日曜日担当だったボブ・ウッドラフ(Bob Woodruff)らで補った。

第3期:インターネット時代へ

バーガス & ウッドラフ

2005年12月5日ABCニュースはジェニングスの正式な後任として、バーガスとウッドラフを共同アンカーとすると発表した。

2006年1月から新アンカーによる放送が始まり、いくつかの新しい試みも始まった(後述)。その一つとして、二人でニューヨークのスタジオから伝える形式に加え、いずれか一方(主にウッドラフ)が国内外問わずニュースの現場に出てリポートする形式を積極的に採用した。ちなみに1月最初の放送では、バーガスがスタジオからニュースを、ウッドラフがイランの首都テヘランからリポートを伝えた。

ところが1月29日、ウッドラフはイラクでアメリカ軍の従軍取材中、道路脇に置かれた爆弾による攻撃で同行のカメラマンとともに重傷を負い、長期療養を余儀なくされた。さらにバーガスの妊娠が判明し、いずれ出産のために産休に入る事は明らかとなる。2人とも番組から離脱することが明らかになり、同時に視聴率は低迷、テコ入れせざるを得なくなった。

なお、2006年1月のリニューアルを機に「西海岸版」の定時放送が編成された。これまで重要ニュースが無い限り、東部標準時より3時間遅いアメリカ西海岸地方(太平洋標準時)は録画放送(ディレイ放送)だった。ディレイ放送が普及したなかでの初の試みとして注目されたが、ギブソンのアンカー就任に合わせて廃止された。

チャールズ・ギブソン

5月23日、ABCニュースは『グッド・モーニング・アメリカ』の司会を19年間務め、ABCの「朝の顔」として長年親しまれてきたチャールズ・ギブソンを単独アンカーに起用する人事を発表。バーガスは産休ののち 20/20 の司会に専念するとして、5月27日をもってアンカーを降板した(産休後、バーガスはギブソンの代役を務めることも)。5月29日からギブソンがアンカーを務める。

その後、7月19日、番組の名から Tonight を外し、アンカーのギブソンの名を冠した番組名 World News with Charles Gibson に改めた(土日は World News Saturday [Sunday])。インターネット配信など Tonight(夜)にとらわれずインターネット上で24時間ニュースに対応・発信するようになった現状を重視し、それを番組名にも反映させたとしている。

2007年2月、『ワールド・ニュース』が『CBSイブニングニュース』や『NBCナイトリーニュース』を抑えて10数年ぶりにトップになったと報じた(週平均視聴者数は,ABCが839万,NBCが830万,CBSが644万)。チャールズ・ギブソンが担当してから視聴率が上向いた。[1]

2007年12月31日から2008年初頭にかけて、スタジオやグラフィックをHD対応のものにリニューアルし、2008年8月25日放送分からHD製作となった。

2009年12月18日を最後にギブソンはアンカーを降板した。

ダイアン・ソイヤー

2009年12月21日からダイアン・ソイヤーが新アンカーとなった。ソイヤーは以前にギブソンとGMAで共に働いていた。2014年現在では、平日版のアンカーをソイヤーが務め、週末版では平日には記者・特派員としてリポートにあたることの多いデイヴィッド・ミュアーがアンカーを務めている。また、しばしばジョージ・ステファノプロスもソイヤーの代役などの形でアンカーを務めることがある。

インターネットへの対応

2006年1月から2009年12月までの期間、インターネット向けのニュース番組「ワールド・ニュース・ナウ」(World News Now)を開始。東部標準時15:00(日本時間5:00、夏時間のときは4:00)からテレビ(ABC News Nowチャンネル)とインターネット(ABC News.comのストリーミング)で15分程度の生放送を実施。夕方の放送とは異なるニュースを放送する。

ABCのウェブサイトでビデオ・オン・デマンドの形で見られるほか、ビデオポッドキャストとして配信、重要ニュースがあった場合は夕方のテレビ版の映像を追加して配信している。2006年6月にはiTunesなどを通じてひと月で760万件のダウンロードがあったとABCニュースは発表した。当初は平日のみの配信であったが、のちに週末にも配信されている。テレビ番組の名称変更に伴い、この番組の名も「ワールド・ニュース」(World News、通称World News Webcast)となる。ギブソン降番と同時にWebcastは終了し、podcastでの提供も2011年4月を最後にサービスを停止した。

さらに番組サイトでは、本放送のうち主なニュース項目や未放送部分を動画として視聴できるほか、番組記者の取材記などを載せる公式のブログ The World Newserを設けている。

ウェブキャストに象徴されるように、第3期の番組づくりの大きな特徴は、インターネットでの情報発信を重視していることにある。三大ネットワークの夕方ニュース番組の視聴率は、1980年代から下降傾向にある。インターネット時代に入り、テレビニュース産業はインターネット配信を強めている。番組からの視聴者離れを食い止めるとともに、新たな視聴者の開拓につながるものと期待されているからだ。ABCニュースはインターネットコンテンツの制作・配信を専門とする部門を設け、力を入れている。

海外での放送

日本

日本ではNHKNHK BS1で、放送通訳付きで20分以内に編集したものを放送している。CMや権利の関係上放送できない部分、『グッド・モーニング・アメリカ』などBS1で放送されないABCの番組に関連した宣伝などはカットされる。

当初は生放送・同時通訳が試みられた時期もあったが、長らくアメリカでの放送から1時間前後遅れて放送する「時差通訳」が基本であった。

しかし2006年11月7日からは、アメリカでの放送開始から10分程度遅らせて放送する同時通訳放送が始められた(つまり、下見が出来なくなった)。当初は最後のニュース項目を除いてほぼ全編放送されたが、2007年11月以降は前半部分のみの放送となっている。一方再放送ではこれまで通り時差通訳方式のため、同時通訳放送より安定した訳で放送、最後のニュース項目まで全編放送される。

2005年度、「メジャーリーグ中継」などのスポーツ中継がBS1の8時台にある際に、BS2の8時台に「ワールドニュースアワー」として振り替え放送された(土曜日を除く)。同時通訳放送を実施する2007年以降、そのような措置はとられていない。

  • 同時通訳放送2014年4月現在)
【月曜日~土曜日】BS1「キャッチ!世界の視点」枠内の7:45ごろ~7:48ごろ(夏時間期間)。
【月曜日~土曜日】BS1「ワールドニュース」枠内の8:40ごろ~8:47ごろ(冬時間期間)。
  • 再放送(時差通訳)
【月曜日~金曜日】12:25~12:50(「ワールドニュース」枠内)。
※いずれもスポーツ中継の際には放送休止。

このほかAFNのニュース専門チャンネルAFN|newsで火曜から土曜の8:00~8:30に放送されている。

イギリス

イギリスではBBCニュース専門チャンネルBBCニュースチャンネルで火曜から土曜の午前1:40ごろ~2:00(イギリス時間)に放送されている。

ニュージーランド

テレビジョン・ニュージーランドのデジタルチャンネルTVNZ7において時差放送が行われている。

その他

  • ブラジルSBTが、2005年から始めたニュース番組『SBT Brasil』のOPとスタジオセットが、2004年からの『ABC World News Tonight』とあまりにもそっくりだったためパクリではないかと騒がれたことがある(特に大型スクリーンの配置と番組ロゴ)。問題の番組

出典

  1. NHK放送文化研究所『放送研究と調査』2008年2月号「放送界の動き - 北中南米」

外部リンク