顎口動物

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顎口動物(がくこうどうぶつ)は、顎口動物門に属する動物の総称である。体長0.2-3.5mm、円筒状の体は頭部と胴部に区分される。頭部にある口にはクチクラ性の固い顎を持つことが特徴である。この顎で砂の表面の細菌藻類をこそげ落として摂食する。海洋や汽水域の砂中に生息する。非常に生息密度が高い場合も多く、1リットルの砂から6000匹以上が見つかることもある。

顎口動物は1956年に新しく発見された。当初は扁形動物に属すると考えられていたが、その後の研究結果により、独立した動物門として分類されるようになった。

他の動物との類縁関係は長い間謎とされており、未だに決定的な見解は得られていない。形態の比較から扁形動物の類縁関係を指摘する説がある一方、器官の類似から輪形動物鉤頭動物と類縁関係にあるという説もある。分子生物学的な研究では線形動物毛顎動物と密接な関係がある示唆されている。

特徴

  • 頭部腹側にクチクラ性の固い顎のある口をもつ。
  • 循環器系呼吸器はもたない。
  • 消化器官は袋状であり、肛門をもたない。
  • 神経系は上皮にあり、頭部には触毛と呼ばれる感覚器がある。
  • 雌雄同体で、精巣卵巣の双方をもつ。交接針と呼ばれる陰茎に相当する器官をそなえ、他の個体の体内に精子を注入し受精を行う種もある。
  • 受精卵はらせん卵割をし、幼生を経ずに直接成体になる。

分類

顎口動物門に属する動物は100種程度が知られている。

  • ハプログナチア目(糸精子類)Filospermoidea:精子鞭毛がある。雌性の生殖器官である袋状器官やをもたない。
  • グナトストムラ目(嚢腔類)Bursovaginoidea:精子に鞭毛がない。袋状器官や膣をもつ。

参考文献

  • 『無脊椎動物の多様性と系統』 裳華房
  • 『図説・生物界ガイド 五つの王国』 L.マルグリス,K.V.シュヴァルツ 著 日経サイエンス社