電信八号
テンプレート:Infobox 電信八号(でんしんはちごう)は、Microsoft Windows 上で動作する電子メールクライアントである。電八(でんぱち)とも略される。電信八号は、石岡隆光によって1995年(平成7年)に(Windows 95 の登場より前に)開発された。
正式名称は、「電信八号 - インターネットメーラー」と思われる。[1]
「電信8号」と表記されることがあるが、正式にはアラビア数字ではなく漢数字である。
プロトコル(通信手順)は、POP3 と SMTP をサポートしている。(かなり古くから APOP に対応、さらに POP before SMTP、SMTP_AUTH にも対応している。) NNTP は、お助けソフトを介せば使え、電信八号側も同期動作をサポートしている。つまり、メールの形式 (RFC 822、RFC 2822) を共有するネットニュースのリーダとしても使える。不完全ながら、IMAP4 もお助けソフトを介せば使える。
特徴
- 送受信したメールは、指定フォルダへテキストファイルとして保存される。このため、grep(検索ツール)その他の外部ツールで扱いやすいほか、メールヘッダーもそのままこのファイルに記録されるため、偽装が見つけやすい利点がある。
- テキストファイルを読み込めるソフト(テキストエディタ、テキストブラウザ)なら事実上全てメールエディタ・ビューアとして使用できるため、Windows 標準添付のメモ帳でも、ワープロソフト(一太郎、Microsoft Word 等)でも、メール用エディタ・ビューアソフトでも、ユーザーの好みの物を使用可能。
- 添付ファイルはメールを開く前にウィンドウが開くので、勝手に実行される心配が少ない。HTMLメールは、HTML が添付ファイルとして認識される。
- 受信前にサーバ上のメールの一覧を表示し、送信元や件名などを確認した上で選択して受信や削除ができる。
- 正規表現による強力なメールの自動振り分け機能があり、OR 条件はもちろん AND 条件を定義できるほか、定義ファイルのネストにより条件の分割管理ができる。
- 正規表現を使って、メールの作成・返信でアドレスなどに応じたメールテンプレートの自動選択が可能。
- MIME の Content-Type: に対応する処理を電信八号側で設定できるため、レジストリ改竄による望まないアプリケーションの実行を抑止することが可能。
- 全ての設定は電信八号のフォルダ以下に配置され、メールは指定フォルダに保存されるため、バックアップや機器移行の時は、それぞれのフォルダをまるごとコピーするだけで良い。
- お助けツール(外部ソフト)のプラグインの使用により、PGP 等の本体に実装されていない機能が利用できる。
欠点
- 1メール1ファイル式で記録していくため、1フォルダ1ファイル式のソフトと比べるとファイル数・ディスク占有サイズが大きくなる。(しかし、これは近年のハードディスクの大容量化やNTFSの圧縮機能などで、あまり問題ではなくなった。)
- 多国語対応が充分でなく、メールのリスト表示が日本語 (Shift_JIS) の範囲でしか行えない。(メールリーダ上の多国語表示は使用するメールリーダソフトの能力に依存する。)
- 初期状態ではメールリーダー・エディタとしてメモ帳を使用することになるほか、設定もなるべく安全で厳しい設定になっており、単体でインストールしただけの状態ではあまり便利な電子メールクライアントとは言えない。
- IMAPに非対応。(外部ツール併用で POP3、SMTP と同等の範囲の利用にとどまる。)
歴史
石岡隆光が1995年(平成7年)9月頃に発表したWindows 3.1(以降)用の電子メールクライアント(16bit版)が原点である。その後1996年(平成8年)に、Windows 95 以降に対応した32bit版が出された。1997年(平成9年)頃から、作者の開発継続の意欲が低下し[2]、バージョンアップの頻度が低くなった。1999年(平成11年)7月13日、ソースコード公開の要望に応え電八倶楽部へ限定公開のうえ改変権と再配布権がライセンスされて、開発が継続され現在に至る。
石岡が自身のサイト「道具屋」で最後に公開したバーションは V321.2b5。石岡の手になる最終バージョンは V321.2b6(これが川瀬裕に送られた)。電八倶楽部名義で公表された V321.2b6-stable は typo のみの修正のため石岡最後の電八と言うこともでき、電八倶楽部の手による最初のバージョンは実質的には V32.1.3.1 ともいえる。なお、バージョン番号の最初の32は、32bit版を表す。
石岡最後の電八と考え、いまなお V321.2b5 または V321.2b6-stable を愛用するものもいるようだが、同バージョン以前には重大なセキュリティホールがある[3][4] ので、使用を中止するか、V32.1.3.1 以降にバージョンアップするのが望ましいと思われる。石岡自身もセキュリティホールの存在を知って、当時 V32.1.3.1 を導入するとともに、その開発の方向性を絶賛したといわれる。
年表
- 1999年(平成11年)7月13日 - 電信八号のソースコードが電八倶楽部にライセンスされた。
- 2000年(平成12年)4月3日 - V321.2b6-stable リリース
- 2000年(平成12年)12月24日 - Version 32.1.3.1 リリース
- 2001年(平成13年)12月19日 - Version 32.1.3.1; sp2 リリース
- 2003年(平成15年)8月4日 - Version 32.1.4.1 リリース
- 2003年(平成15年)10月5日 - Version 32.1.4.3 リリース
- 2004年(平成16年)6月8日 - Version 32.1.4.5 リリース
- 2004年(平成16年)11月28日 - Version 32.1.5.1 リリース
- 2005年(平成17年)4月4日 - Version 32.1.5.3 リリース
- 2007年(平成19年)6月21日 - Version 32.1.6.1 リリース
- 2008年(平成20年)10月20日 - Version 32.1.6.3 リリース
- 2009年(平成21年)7月27日 - Version 32.1.6.5 リリース
- 2011年(平成23年)5月5日 - Version 32.1.7.1 リリース
- 2014年(平成26年)6月21日 - Version 32.1.7.3 リリース
統計
テンプレート:独自研究 日本におけるシェアの推移
- 調査機関によるもの
- 4.9% - 1998年(平成10年)3月27日~4月5日 [5] - 推定総ユーザ数 約51万人(1997年(平成9年)末ネット人口 [6] 1155万人)
- 1.75% - 2003年(平成15年)6月3日~6月8日 [7] - 推定総ユーザ数 約98万人(2002年末ネット人口(PC)[8] 5722万人, 2003年(平成15年)末 6164万人)
- 1.4% - 2005年(平成17年)3月19日~25日 [9] - 推定総ユーザ数 約86万人(2004年(平成16年)末ネット人口(PC) [10] 6416万人)
- 個人によるもの
- (初心者MLと思われるもの)
- 1.5% - 1997年(平成9年)2月8日発 [11]
- (Windows NT 系 MLと思われるもの)
- 4.79% - 1997年(平成9年)3月19日~1998年(平成10年)3月18日 [12]
- 1.53% - 1998年(平成10年)8月25日発(5ヶ月間) [13]
この節の参考資料