進学校

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進学校(しんがくこう、しんがっこう)とは、

  • 在校生の進学に重点をおいている学校のこと。
  • ある個人が進学した先の学校のこと。

以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。

定義

一般的には上級学校への進学率が高い学校のことを言う。この場合の「高い」とする基準は人によってまちまちであるが、社会全体の現在の年度の平均進学率よりも高いことが一応の目安となる。進学校には大きく分けて以下の3種類がある。

  • 系列の大学などに無試験もしくは一般入試よりも簡単な試験で入学する人が多い学校。附属進学校、内部進学校[1]
  • 学力重視の一般入学試験に合格し、難易度の高い大学などに進学する生徒が多い学校。受験進学校。
  • 推薦入試等で一般入学試験より簡単に大学に進学する生徒が多い学校。推薦進学校。

文脈によっては、附属進学校を「附属校」、受験・推薦進学校を「進学校」と呼び分けることがあり、この意味での「進学校」は狭義の用法である。

また、進学校であるかどうかは、必ずしも現役進学率の高さで決められるわけではない。附属進学校の場合は現役進学が大半だが、受験進学校の場合は過年度生が多いケースもある。

日本では一般的に、高等学校について進学校との用語が使用される場合が多い。これは大学などの場合は学部によって院への進学率が大きく異なるために大学まるごとの進学率を論じてもあまり意味がないことなどが理由であり、中学校などの場合は大多数の学校において高校進学率が高い数値を示しているためにあえて進学校と呼ぶメリットが薄いからである。

また、難関大学にどれほど合格しているかを進学校かどうかのバロメーターとする考え方の人もいるが、これは本来の意味の進学校を表すものではなく、高学力校などと呼ぶべきではあっても、こういった学校のみを進学校と呼ぶのは本来誤りである。通常は、進学先の学校に偏差値が高い学校が多いかどうかに関わらず、進学率が高ければ進学校と呼ばれる[2]

進学重点校

在校生が、大学等上位の教育課程に進むことを重視している学校のこと。例えば、(進学校は)「大学入試での合格実績を重視する」[3]や、「受験準備に偏した教育」を「大学入試中心の進学校」[4]と言ったりしている。

行政の意識

文部科学省

高校普通科が進学を重視しすぎることに対し、問題だと指摘することがある。

  • 1991年(平成3年)教育審議会答申では以下のとおり問題点を指摘し、偏差値重視から人間性重視への転換を述べている。
「高等学校の問題点を学科ごとに見ると、まず普通科は、今日では約74%の生徒を擁するに至っているが、その多くが大学進学を意識した画一的な教育課程を編成・実施しているため、生徒の多様な能力・適性等に必ずしも十分対応したものとなっていない。」[5]
  • 総合学科導入の趣旨説明において、偏差値重視の是正を述べている[6]

教育委員会

教育委員会は、学力向上の一環として「進学目標達成推進事業」を設立。助成金を通じて学校の進学率向上を図っている。

また都道府県の教育委員会の中には、一部の公立高等学校について、進学指導を重点的に行う学校として公式に指定する動きが見られている。具体的には、東京都立高校の「進学指導重点校[7]進学指導特別推進校」「進学指導推進校」の指定、埼玉県立高校の「県立高校進学指導アドバンスプラン推進校」の指定[8]、神奈川県立高校の「学力向上進学重点校」の指定[9]などが挙げられる。

こうした学校は、独自入試による入学者選抜、進学指導に実績のある教員の重点的配置、土・日曜日の補習の実施などが行われ、東京都では、指定校からの難関の国立大学への現役合格者数が、指定前に比べて4割以上増加するという実績が上ったとされる[10][11]。神奈川県では、指定校の進学率の具体的数値目標などを掲げ、3年後をめどにその成果を検証するとしている[12]

こうした動きは、これまで受験競争の過熱化を煽ることを理由に進学校の指定に消極的だった教育委員会が、保護者からの有名大学への進学実績向上を求めるニーズの高まりに屈し、一種の方針転換を図ったものと見られている。一方で、教職員組合からはこうした動きに対し、公立高校の序列化、予備校化を招くといったことを懸念する意見も出されている[13]

保護者の意識

保護者は、子供の進学する学校を選ぶ際に、大学への合格実績を判断材料の一つとしており、その傾向は強まっているという。そのため、卒業生の合格実績公表に消極的であった公立高校が、実績を公表するようになるケースもあるという[14]。また、学校側が有名大学への進学実績を偏重する余り、「進学実績ダウン」とも取れる海外留学を生徒に禁じ、それが保護者の意思さえ無視することになるケースもある[15]

進学塾等との関係

進学校の中には、大学進学を視野に授業や進路指導を学習塾へ外注する動きがある[16]

他には、公立学校が進学塾に委託し、合同で学習会を開催する事例もある[17]

その他

  • 2006年後半に問題となった履修漏れ問題では、履修漏れがあった高校は進学校がより多かったという[3]
  • 進学校でもキャリア教育を取り入れる動きがある。背景には、進学希望者が増える一方で、大学や短大入学後に自らの進路に悩む卒業生の増加があるという。一方で、進学率の低下からキャリア教育を見直す進学校もある[18]
  • 2007年に問題となった大学合格実績水増し問題では、私立高校が成績優秀者の大学受験料を負担してMARCH関関同立などへの合格実績を水増ししていた。

進学した先の学校

生徒が進学した先の学校を指す。例えば

  • 「高等学校が多様化したために、自分の生き方を考えながら進学校を決めてきている」[19]
  • 奨学金制度の要件説明の際に、補助金を受けるためには「進学校の校長が発行した在学証明書を提出」[20]

といった使い方をされる。

脚注

  1. 元の位置に戻る ただし武蔵高校神大附属高校のように、附属校ではあるが系列の大学にほとんど内部進学しない学校もあり、こちらは受験進学校に分類される。
  2. 元の位置に戻る 遠藤周作の『海と毒薬』から、すでに戦前からこの概念があったことが窺える。
  3. 以下の位置に戻る: 3.0 3.1 2006年12月11日付配信 朝日新聞
  4. 元の位置に戻る 「Guideline」2006年4・5月号(河合塾
  5. 元の位置に戻る 1991年(平成3年)教育審議会答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」(文部科学省)
  6. 元の位置に戻る 総合学科について」(文部科学省)
  7. 元の位置に戻る 「進学指導重点校の指定について」(東京都教育委員会 2001年9月26日)
  8. 元の位置に戻る 「県立高校進学指導アドバンスプラン」(埼玉県)(2004年8月30日時点のアーカイブ
  9. 元の位置に戻る 「学力向上の推進及び特色ある県立高校づくり推進について」(神奈川県教育委員会 2007年5月10日)(2007年5月21日時点のアーカイブ
  10. 元の位置に戻る 「進学指導重点校の取組状況報告について」(東京都教育委員会 2005年4月14日)(2005年10月29日時点のアーカイブ
  11. 元の位置に戻る 2005年4月14日付配信「進学重点校の現役合格者 難関国立大に4割増」東京MXニュース
  12. 元の位置に戻る 2007年5月18日付配信「神奈川県、10県立高を進学重点校に 受験エリート養成」朝日新聞
  13. 元の位置に戻る 2007年5月11日付配信「公立高の復権目指し大学進学重視シフトを鮮明に/神奈川県教委」神奈川新聞
  14. 元の位置に戻る 2007年4月24日付配信 読売新聞
  15. 元の位置に戻る 2007年11月17日付配信 産経新聞
  16. 元の位置に戻る 2006年3月1日付配信 朝日新聞
  17. 元の位置に戻る 2006年4月14日付配信「難関突破へ協力と競争」読売新聞
  18. 元の位置に戻る 2005年12月6日付配信「成果、模索…進学校でも」読売新聞
  19. 元の位置に戻る 「第33回教育課程部会」(文部科学省 2005年11月30日)
  20. 元の位置に戻る 農業後継者育成奨学金制度(島根県浜田市)より(2007年9月28日時点のアーカイブ

関連項目

外部リンク

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