財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定

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韓国政府代表として協定に署名した李東元外務部長官

財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(ざいさんおよびせいきゅうにかんするもんだいのかいけつならびにけいざいきょうりょくにかんするにほんこくとだいかんみんこくとのあいだの協定)とは、1965年に日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約と同時に締結された付随協約のひとつ。日韓請求権並びに経済協力協定

概要

この協定の主要骨格は、第1条、第2条、および、第3条である。

第1条が日本から韓国に対して経済協力が行われるための手順規定、第2条が日韓両国間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」目標規定および例外規定、第3条が日韓両国間で「この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争」を解決するための手順規定となっている[1]

この協定に基づき、日本は、韓国との正式国交開始と同時に、当時世界最貧国のひとつであった韓国に対し、合計5億米ドル(無償3億米ドル、有償2億米ドル)及び民間融資3億米ドルの経済協力支援を行った。当時の韓国の国家予算は3.5億米ドル程度、日本の外貨準備額は18億米ドルであったことから、その額の膨大さが推し量れる。韓国は、この日本からの経済協力金を原資として、国内のダムや高速道路を整備し、「漢江の奇跡」を成し遂げた。

2009年08月14日、ソウル行政裁判所は、大韓民国外交通商部が裁判所に提出した書面に「日本に動員された被害者(未払い賃金)供託金は請求権協定を通じ、日本から無償で受け取った3億ドルに含まれているとみるべきで、日本政府に請求権を行使するのは難しい」と記述されていることを明らかにした[2][3]韓国政府は、日韓基本条約締結時からこの付随協定の内容を韓国民に伏せており、韓国政府の公式見解が明らかにされたのは初めてである[2]韓国・朝鮮人は請求権問題で日本政府にのみ補償と謝罪を求め続けてきたが、1965年当時の韓国政府が彼らの不払い賃金の対価も含まれると判断した上で日本からの経済協力資金を受け取っていたことを示す上記韓国公文書が韓国外交通商部からソウル行政裁判所に呈示されたことが明らかにされたため、2009年08月14日以降は、彼らは日韓両政府に補償・謝罪・日韓交渉を求めなければならないということが明らかになった[2][3]

なお、日本政府は条約締結以前の1946年、日本企業に対して朝鮮人に対する未払い額を供託所に供託するよう指示を行っており、 2009年8月現在、日本に供託形態で保管されたままとなっている韓国・朝鮮人への不払い賃金額は、強制動員労務者2億1500万円、軍人・軍属9100万円などで総額3億600万円となっている[2][3]

2010年03月15日、韓国政府は慰安婦、サハリン残留韓国人、韓国人原爆被害者については対象外だとして「日本政府の法的責任を追及し、誠意ある措置を取るよう促している」と発表した[4]

これに対して日本政府は、同年03月17日、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定により、両国間における請求権は、完全かつ最終的に解決されている」という見解を発表した[5]2012年05月24日、韓国では、第二次世界大戦の際に労働者として徴用された韓国人9名が三菱重工と新日本製鉄に対して損害賠償を請求した訴訟の上告審において、大法院が『個人の請求権は消滅していない』との判断を下し、原審に差し戻した。これは、それまでの日韓請求権協定に関する日本政府との見解および韓国政府の見解が韓国司法によって却下されたことを意味している。

更に、2013年08月06日小和田恒元外務省事務次官(本協定締結の1965年当時、外務省条約局法規課員)が、日本政府の2010年の上記見解とは真反対の見解、すなわち、『対立する問題は可能なすべての外交交渉により解決すべき』という趣旨の文書『解説・日韓条約』をまとめていたことが判明している[6][7]。この『解説・日韓条約』は、「何が『紛争』に当たるか」の問いに対して「ある問題について明らかに対立する見解を持するという事態が生じたとき」と明記しており、また、紛争の発生時期については「何らの制限も付されていない」とし、「今後、生じることのあるすべての紛争が対象になるべき」だと説明している。その上で、日韓間で紛争が生じた場合は、「まず外交上の経路を通じて解決するため、可能なすべての努力を試みなければならないことはいうまでもない」と解説している。

主な合意内容

日本国が大韓民国に経済協力(無償供与及び低利貸付け)する

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両国は請求権問題の完全かつ最終的な解決の確認を目指す

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両国はこの協定の解釈及び実施に関する紛争を直接外交あるいは仲裁決定で解決する

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脚注

  1. テンプレート:Cite web
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 テンプレート:Cite news
  3. 3.0 3.1 3.2 テンプレート:Cite news
  4. テンプレート:Cite news
  5. テンプレート:Cite news
  6. テンプレート:Cite news
  7. 法律時報』(日本評論社、1965年9月号)

外部リンク