福島章

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:存命人物の出典明記 テンプレート:出典の明記 福島 章(ふくしま あきら、1936年1月29日 - )は日本の医学者精神科医医学博士)。専門は犯罪精神医学病跡学上智大学名誉教授福嶋章表記の場合もある。

経歴・人物

東京都生まれ。東京都立大学附属高等学校卒業。東京大学医学部卒業。同大学大学院医学系研究科精神医学専攻博士課程修了。府中刑務所医師、東京医科歯科大学助教授上智大学文学部教授を歴任。犯罪心理学精神鑑定などの啓蒙書を多く執筆。また、犯罪心理学を題材にした小説も執筆している。さらに病跡学の第一人者としても知られ日本病跡学会名誉会長を務めた。

1983年深川通り魔殺人事件を始めとして、下関通り魔殺人事件1999年)、西鉄バスジャック事件2000年)などの著名な事件の裁判で精神鑑定を行っている。

「ネット利用者やオタクは性犯罪者予備軍」との持論を展開しているが、それを裏付ける根拠を提示することはない。こうした多数の根拠のないレッテル張りなど、「マスコミ御用達識者」と言った側面もあり、メディアへの登場も多い。

石原慎太郎への傾倒

2002年に、民事訴訟宝島社東京都知事石原慎太郎」事件に関する「意見書」を書く。その中で、石原の著書『真実の性教育-学校では教えない人間の性』(1972年光文社)について言及し、

性科学や性教育に長年かかわってきた専門家として、文学者・石原慎太郎氏のこの態度に深い敬意を表したいと考える」
「私は、自分の『意見書』を書いた時にこの石原氏の著書を知っていて、その中から多くの文章を引用することが出来たらさらに幸運であったろうと思った。それほど、石原氏の思想・見解は意見書作成人の主張と同一であり」

など、石原に対して崇拝に近い態度を示している。

冤罪を生んだ事件

足利事件1990年)の一審の精神鑑定において、当時の被告に対して「代償性小児性愛者である」と鑑定した。一審、二審の裁判の判決ともに福島の精神鑑定が証拠採用され、当時の被告は有罪(無期懲役)となった。

当時の被告の弁護人は、「たった3回の面会のみで、当時の被告を代償性小児性愛者と断定した福島の鑑定結果には、大いに疑問の余地がある」とし、福島に対して面会時の録音テープの提出を要求した。福島は再三の提出要求にも、一切応じなかった。また、控訴審で「一年間も警察官が尾行したのに菅家が幼女に声をかけたりロリコン物に興味を示したことはなかった。鑑定は誤りではないか」と弁護人が質したところ、福島は「自分は菅家さんが犯人であることを前提に鑑定した」と証言した。これは、言うまでもなく鑑定人としての中立性、客観性を満たしていない態度である。公判廷において悪びれることもなく、このような発言をすること自体、裁判制度の根幹を理解していない証左と言える。

仕方なく当時の被告は、福島に対して民事訴訟を提訴した。当初、自分の名前は「福嶋章」なのに「福章」と記載されている(やまへん欠落)という理由で訴状の受け取りを拒否した。一方で精神鑑定書も法廷での宣誓書も自ら「福章」と署名している。民事訴訟になると、福島は「テープは破棄した」と、提訴前の回答とは矛盾する答弁を行った。

2009年6月、当時の被告はDNA再鑑定の結果、遺留品と一致しないという鑑定結果が出、釈放された。

学会

著書

  • 宮沢賢治―芸術と病理 (金剛出版新社、1970年)
  • 狂気と正気の間(至文堂、1972年 ナツメ社、1982年)
  • 日本の精神鑑定 小木貞孝中田修共著 (みすず書房、1973年)
  • 現代人の攻撃性―犯罪心理の異常と正常 (太陽出版、1974年、1984年(新版))
  • 犯罪心理学研究1(金剛出版、1977年)
  • 愛の幻想―対人病理の精神分析(中公新書、1978年)
  • 現代青年心理ノート(日本教文社、1978年)
  • 天才の精神分析(新曜社、1978年)
  • 思春期のこころの深層―むずかしい年齢をどう生きるか(大和書房、1979年)
  • 対抗同一性(金剛出版、1979年)
  • 愛と性と死―精神分析的作家論 (小学館、1980年)
  • 機械じかけの葦(朝日出版社、1981年)
  • 青年期のカルテ(新曜社、1981年)
  • 犯罪心理学入門(中公新書、1982年)
  • 性と暴力の世代(サイエンス社、1982年)
  • 働きざかりの過剰適応症候群(大和書房、1982年)
  • 幼児化の時代―子どもっぽくて、なぜわるい!(光文社、1982年)
  • 天才―創造のパトグラフィー(講談社現代新書、1984年)
  • 続 天才の精神分析(新曜社、1984年)
  • こころが危ない―一人ぼっちの時代をどう生きる(保健同人社、1984年)
  • 性格をどう生きるか―人格形成の病理と思春期の危機(彩古書房、1984年)
  • 犯罪心理学研究2(金剛出版、1984年)
  • 非行心理学入門(中公新書、1985年)
  • 精神鑑定―犯罪心理と責任能力 (有斐閣、1985年)
  • 宮沢賢治―こころの軌跡(講談社学術文庫、1985年)
  • 精神分析で何がわかるか―無意識の世界を探る(講談社ブルーバックス、1986年)
  • 甘えと反抗の心理(講談社学術文庫、1988年)
  • 音楽と音楽家の精神分析(新曜社、1990年)
  • 歓迎ストレス様御一行(ネスコ、1990年)
  • イメージと心の癒し(金剛出版、1991年)
  • 境界例の精神療法(金剛出版、1992年)
  • 青年期の心―精神医学からみた若者(講談社現代新書、1992年)
  • マンガと日本人―“有害”コミック亡国論を斬る(日本文芸社、1992年)
  • 覚せい剤犯罪の精神鑑定(金剛出版、1994年)
  • 精神鑑定とは何か―何をどう診断するか?(講談社ブルーバックス、1995年)
  • 天才、生い立ちの病跡学―甘えと不安の精神分析(講談社プラスアルファ文庫、1996年)
  • 不思議の国の宮沢賢治―天才の見た世界(日本教文社、1996年)
  • ヒトは狩人だった(青土社、1996年)
  • ストーカーの心理学(PHP新書、1997年)
  • 創造の病―天才たちの肖像(新曜社、1997年)
  • イメージ世代の心を読む―疑似現実はどういう人間を生み出したか(新曜社、1999年)
  • 家族が壊れるとき(小学館、1999年)
  • 殺人と犯罪の深層心理―「攻撃願望」というヒトの本性 (講談社プラスアルファ文庫、1999年)
  • 彼女は、なぜ人を殺したか―精神鑑定医の証言 (講談社プラスアルファ文庫、1999年)※小説
  • 子供の脳が危ない(PHP新書、1999年)
  • ブッシュ・アメリカの精神分析(大和書房、2003年)
  • 殺人という病―人格障害・脳・鑑定(金剛出版、2003年)
  • 犯罪精神医学入門(中公新書、2005年)
  • 子どもを殺す子どもたち(河出書房新社、2005年)
  • 精神鑑定脳から心を読む(講談社、2006年)
  • ベートーヴェンの精神分析(河出書房新社、2007年)

関連項目

テンプレート:Scientist-stub