確率測度
数学では、確率測度(probability measure)は、可算加法性のような測度の性質を満たす確率空間の中で、事象の集合上に定義されたテンプレート:仮リンク(real-valued function)である[3]。確率測度とさらに一般的な測度(面積や体積のような概念を含む)との考え方の差異は、確率測度は全確率空間に対しては 1 にならねばならないことである。
直感的には、加法性とは、測度により 2つの独立した事象の合併に対応した確率は、事象の確率の和とならねばならない、つまり、サイコロを投げたとき「1 もしくは 2」に対応した値は「1」と「2」に対応した値の和となっていなければならないことを言う。
確率測度は、物理学からファイナンスや生物学まで様々な分野に応用を持っている。
定義
確率空間上で函数 テンプレート:Math が確率測度であることを要求することは、
- テンプレート:Math は、単位区間 [0, 1] では、空集合に対しては 0 を返し全空間では 1 を返す結果でなければならない。
- テンプレート:Math は、各々が互いに分け隔てられている集合の中の全ての可算な集まりに対し、
- <math> \mu\Bigl(\bigcup_{i \in I} E_i\Bigr) = \sum_{i \in I} \mu(E_i)</math>
- という性質である可算加法性(countable additivity)を持たねばならない。
例えば、それぞれ 1/4, 1/4, 1/2 の確率を持つ 3つの要素 1, 2, 3 が与えられたとすると、{1, 3} に与えられる確率は、右の図で示しているように、1/4 + 1/2 = 3/4 である。
- <math>P(B \mid A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}.</math>
として定義された二乗の交叉の条件付き確率は、<math>P(A)</math> が 0 でない限り、確率測度であるという要求を満たす[4]。
確率測度は、より一般的なテンプレート:仮リンク(Fuzzy measure)の考え方とは異なっている。ファジー測度では、ファジー値をたし上げると 1 となる必要はないし、加法性は集合の包含関係の順序関係に取って代わられる。
応用例
実際の金融の動きに基づいた金融市場の空間へ確率を割り当てたマーケット測度(Market measures)は、確率測度の例である。この例は、デリバティブの値付けなどの、数理ファイナンスで興味を持たれている[5]。実際の金融市場で、テンプレート:仮リンク(martingale measure)(リスク中立測度とも言うが)は、同じリスク中立測度(つまり、対応するリスク中立密度函数を使い計算された)の観点から将来支払われる価格の期待値が、資産の現在価格であるとした確率測度であり、テンプレート:仮リンク(risk-free rate)でテンプレート:仮リンク(discounted)された確率測度である。市場での価格資産として使われるはずの一意的な確率測度が存在する場合、市場をテンプレート:仮リンク(complete market)と呼ぶ[6]。
直感的にチャンスや可能性を表す測度の全てが全て、確率測度であるとは言えない。例えば、統計力学の系の基本的な考え方は測度空間ではあるが、測度がいつも確率測度であるわけではない[1]。一般に、統計物理学では、「状態 A であるような系 S の確率は p である」という形のセンテンスを考えると、自由度がひとつの系の場合には確率測度が定義できるように思えるが、合同関係(under congruence)の下での確率測度を、系の幾何学が常に定義するわけではない[2]。
確率測度は、数理生物学でも使われる[7]。例えば、比較テンプレート:仮リンク(sequence analysis)において、確率測度は配列の中にアミノ酸がある可能性によって定義されることもある[8]。
参照項目
- ボレル測度
- テンプレート:仮リンク(Fuzzy measure)
- ハール測度
- テンプレート:仮リンク(Martingale measure)
参考文献
さらに先の文献
- Probability and Measure by Patrick Billingsley, 1995 John Wiley ISBN 978-0-471-00710-4
- Probability & Measure Theory by Robert B. Ash, Catherine A. Doléans-Dade 1999 Academic Press ISBN 0-12-065202-1