白髪三千丈

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テンプレート:Amboxテンプレート:DMCA 白髪三千丈(はくはつさんぜんじょう)は、代の詩人・李白五言絶句「秋浦歌」第十五首の冒頭の一句。

縁愁似箇長(うれいによりてかくのごとくながし)」と続き、通常、「積もる愁いに伸びた白髪の長さは、三千丈(約9キロメートル)もあるかのように思われる」と解釈されている。詩題の秋浦は長江岸にある事を知らざれば、長江の景色が白髪に仮託されているごく当然な体験的情報も文字情報上では伝わらない。日本においては、この一句のみを文字通りに解釈して矛盾に悩み、転じて中国の極端な誇張表現の例だとして、批判的に用いる状況にある。

どうして「三千丈」か

「三千丈」という表現の背景には、作詩上の制約がある。

白髪三千丈」の平仄について見れば、最初の二字「白髪」が仄仄であり、近体詩の規則によれば、続く二字は平平でなくてはいけない。一方、一~九までの漢数字及び十・百・千・万・億・兆という位数のうち、平声の字は「三」と「千」のみである(京も平であるが、通常使用される位数ではない)。この結果、句頭に「白髪」を示した時点で、次に続く数字はほぼ選択の余地なく「三千」に定まってしまうことになる。[1]また、句末の一字は、でなくてはいけないため、ここに長さを示す字を置くとなると、仄声である「寸」、「尺」、「丈」等から選択するしかない。

当然、詩は情景や心情を表現するためのものであり、文法だけに従い型作られるものではない。詩は詠まれた地理と日時を考慮に入れてしかるべきであり、白髪三千丈と詠まれた詩の題名「秋浦歌」は明確に地名とわかる。秋浦は現在の安徽省南部の長江南岸の貴池市の西側にあたり、秋浦河が北流して長江に注いでいる様を眼前に観察できる。白髪三千丈と長江の情景は当然無関係ではなく、長江から着想を得た描写である。長江に対する文学的描写「三千丈」と現実的に換算した約10キロメートルは観測すれば互いに矛盾するものではないとわかる。

白髪三千丈に関する異説

白髪は「増えた」

日常の感覚として、白髪は、増えるものであって、「長く伸びる」とは言わない。また、「長」の字には、「大きい、多い」の意味もあることから、「愁いに増えた白髪の多さは、継ぎ足していけば三千丈の長さになるだろう」と解釈することもできる。

なお、人間の髪の毛の本数を約10万本、髪の毛の長さを約10~15センチメートルとすれば、その延べ長さは10~15キロメートルとなり、このとき、三千丈という表現は、換算すると約9.99キロメートルのため、実際にはむしろ控え目なものであることになる。

三千大千世界

仏法の 「三千大千世界」から、「三千」の語を、「極めて多い」、「極めて広い」などという意味で包括的な形容に使うようになったものであって、算術の「三千」ではない。

関連項目

出典

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  1. 出典:高島俊男著『イチレツランパン破裂して お言葉ですが(6)』文春文庫138-143頁