朝鮮民主主義人民共和国主席

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テンプレート:Infobox 朝鮮民主主義人民共和国主席(ちょうせんみんしゅしゅぎじんみんきょうわこくしゅせき)は、朝鮮民主主義人民共和国国家元首1972年に設置され、1998年に廃止された。通称は国家主席

概要

1972年12月27日最高人民会議第5期第1回会議において朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法(1972年憲法)が制定され、国家元首として朝鮮民主主義人民共和国主席の職が新設された。国家主席は憲法の規定によって国政の最高指導者としての権限を保障された。翌日、首相であった金日成が国家主席に就任した。なお、国家主席職設置以前は、最高人民会議常任委員会委員長が形式上の朝鮮民主主義人民共和国の元首であったが、実権は首相にあった。同国の建国以来、国家主席職設置まで、金日成が一貫して首相の地位にあったため、金日成が最高権力者として国家を統治するという政治構造に変わりはなかったのである。

金日成は国家主席に在職のまま1994年7月8日に死去した。職責は金日成の長男である金正日が継ぐと推測されていたが、金正日が国家主席の職に就くことはなく、金日成の死後、国家主席は空席となった。1998年9月5日の最高人民会議第10期第1回会議で同憲法が改正され(1998年憲法)、国家主席制は廃止された。しかし1998年憲法は序文で「金日成同志を永遠の主席として高く戴き…」と述べており、朝鮮民主主義人民共和国政府の見解としては、「国家主席職には金日成が永遠に就いている」ということになる。

選出規定

最高人民会議によって選出され、再選制限は無かった。任期は、1972年憲法では4年だったが、1992年の憲法改正で5年に改められた。

職責

1972年憲法では、行政・経済に至るあらゆる国家事業を指導し、軍の統帥権の掌握と朝鮮人民軍最高司令官・国防委員会委員長の兼務が保障されるなど、国家主席には強大な権限が付与されていた。しかし、1992年憲法では軍の統帥権が国家主席から国防委員長に委譲され、1993年4月9日に金正日が国防委員長に就任したことによって権力の分散が行われた。その結果、国家主席の権限は弱体化した。

1972年憲法

  • 国家の首班として、朝鮮民主主義人民共和国の国家主権を代表する。
  • 中央人民委員会(国家主権の最高指導機関)の首班として、同委員会を直接指導する。
  • 最高人民会議に対して政治上の責任を負い、朝鮮民主主義人民共和国副主席、中央人民委員会書記長、中央人民委員会委員、政務院総理(首相)、国防委員会副委員長の選出・罷免を最高人民会議に提議する。
  • 政務院(内閣)会議の招集・指導。
  • 朝鮮民主主義人民共和国の全般的武力の最高司令官、国防委員会委員長となり、国家の一切の武力を指揮・統率する。
  • 最高人民会議法令・中央人民委員会政令・最高人民会議常設会議決定の公布、朝鮮民主主義人民共和国主席命令の発令。
  • 特赦権の行使。
  • 条約の批准・廃棄を行う。
  • 外国からの外交使節の信任状と召喚状の接受。

1992年憲法

  • 国家の首班として、朝鮮民主主義人民共和国を代表する。
  • 中央人民委員会の首位として、同委員会を指導する。
  • 最高人民会議に対して政治上の責任を負い、朝鮮民主主義人民共和国副主席、政務院総理の選出・罷免を最高人民会議に提議する。
  • 政務院会議の招集・指導。
  • 最高人民会議法令・最高人民会議常設会議決定・中央人民委員会政令及び決定の公布、朝鮮民主主義人民共和国主席命令の発令。
  • 特赦権の行使。
  • 条約の批准・廃棄の公布。
  • 外国に駐在する外交代表の任命・召還を発表する。
  • 外国からの外交使節の信任状と召喚状の接受。

歴代主席

1972年12月27日に国家主席が設置されて以来、金日成が、1994年7月8日に死去するまでその職にあった。死去後、国家主席は空席となったが、1998年に改正憲法が採択されるまで、制度上は存在していた。

参考文献

  • 重村智計『北朝鮮データブック』(講談社〈講談社現代新書〉、1997年)

関連項目

外部リンク

  • 北朝鮮WEB六法 ― 朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法の全文(日本語訳)が掲載されている。