学力偏差値

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テンプレート:独自研究 テンプレート:出典の明記 学力偏差値(がくりょくへんさち)とは、偏差値(z値、zスコア、z得点標準得点とも呼ばれる)の応用例の一つである。学力検査の得点(素点)を、全体の平均点と標準偏差により正規化した値である。一般に正規化する目的は、条件の異なるデータを比較しやすくすることである。特に、偏差値は、ある値が標本の中でどれくらいの位置にいるかを表す指標であるので、個々の試験の難易度の違いに左右されずに、生徒の学力、学習進度、受験における合格可能性を判定するために利用される[1][2]。これに対し、素点は、一回の試験において一人の受験者が、試験問題全体のうち何割に正解したかに対応する指標である。

日本では、平均点を50、標準偏差を10に対応させた偏差値が学力偏差値として広く用いられているが、SATGRE(北米の大学や大学院へ進学する際に必要な共通試験)では、平均点を500に、標準偏差を100に対応させた値[1]を得点としていたり、SATS(英国の初等教育における学力試験)では、平均点を100に、標準偏差を15に対応させた値[2]が用いられたりしている。

すなわち、偏差値の計算式

偏差値 = (得点 − 平均点) × A / 標準偏差 + B

において、日本ではA = 10, B = 50であり、SATやGREではA = 100, B = 500であり、SATSではA = 15, B = 100である。

入学試験の偏差値

学校の入学試験では、合格可能性を表すものとして偏差値が広く使われている。偏差値を判定するのは、学習塾予備校が大規模に受験生に対して行なう模試などである。日本で広く用いられる偏差値は

(得点 − 平均点) ÷ 標準偏差 × 10 + 50

で求められ、ある人の得点が、平均点と同じだった場合、その人の偏差値は50となる。一般には教科の違いや問題の難易度の違いにより、各試験の平均点や標準偏差は異なるため、様々な試験の成績を、単なる100点満点等の点数だけで、単純に比較することは出来ない。従って、それらを常に平均が50、標準偏差が10となるスコアに変換し、比較可能な数値にするために用いられる。偏差値が0未満となることや100を超えることもあり得る。

誤解と迷信

『もともと、旧日本陸軍の砲兵の訓練時に、各自の得点を比較するために、単純な点数を、偏差値に直してから比較したことが始まりと言われる(テンプレート:要出典範囲)。 テンプレート:要出典範囲。』との記述がWikipediaにあった[3]ことが示すように、日本あるいは限られた地域でのみ用いられる考え方であるとの喧伝がなされている(例えば、[4][5][6])。しかし、GRE, SAT, SATSの例が示す通り、これは事実と異なる。(なお、偏差値の計算に必要な標準偏差は、1860年代後半にフランシス・ゴルトン(Francis Galton)が思いついたといわれている。)

Lodicoら2010は、その著書「Methods in Educational Research: From Theory to Practice」において「多くの標準的学力測定では、生徒の点数を偏差値(standard score)として通知する。それにより、生徒の学力を直接比較することが可能となる。」[7]と述べている。英国の国立教育研究所(NFER)は、多くのテストで偏差値が使われると指摘したうえで、素点でなく偏差値を用いる理由を説明している:「1) 受験者の得点をわかりやすい物差しの上に並べるため、2) [訳注:初等教育において]同じ学年の中で誕生月による影響を補うため、3) 複数の試験の得点を意味のある形で比較したり合計したりするため」[8]

偏差値は、標本の分布が正規分布である場合、パーセンタイル順位と直接的に対応づけられる[9][10]。したがって、偏差値の値が、全体の中での相対的な位置を示すことになる。たとえば、日本で一般的な偏差値(平均50、標準偏差10)では、偏差値60以上の人は、全体の中で上位から約15%に入っていると推定することができる。得点の分布が正規分布から大きく外れるような場合(分布のピークが複数に分かれている、満点もしくは0点付近に分布が偏っている、等)には、このパーセンタイルとの関連付けが成り立たなくなる。

標本分布が正規分布に近い場合、偏差値は、ある値の母集団でのテンプレート:要出典範囲が、分布が正規分布から離れるとあまり有用でなくなる。 得点の分布が著しく正規分布から離れた分布をなしている場合でも標準偏差や平均値は計算可能であり、それから偏差値を導くことも可能ではある。 偏差値が指標として使われていた場合には、標本の分布が正規分布に近いかどうかの確認が重要であり、テンプレート:要出典範囲

例えば大手予備校では実施した模擬テストの標本(模擬テストを受験した生徒)全体の得点の分布を公表している場合がほとんどだが、テンプレート:要出典範囲テンプレート:要出典範囲

教育評論家森口朗は、『偏差値は子どもを救う』で偏差値で学力を測定することの妥当性と限界を示した。

大学受験

近年は少子化に伴う志願者の減少のため、中位ランクの大学を中心に偏差値が下落している傾向にある。

しかし、偏差値自体はある特定の母集団の中における本人の学力的な位置を表しているだけに過ぎず、そこで得られた平均偏差値の多寡がその大学の社会的評価と直結しているものではないということである。「ランク」はあくまで予備校等が自社の行う模擬試験によって各自算出しているに過ぎないものであり、社会において世代などを超えて普遍的な価値を持つものではない。

テンプレート:要出典範囲 むしろ、集団内の相対的な学力を判定、比較しようとする場合、異なる試験の間にある種々の違いにより、素点では意味のある比較ができない場合でも、平均値と標準偏差で正規化された偏差値にしておけば、大まかな目安を得ることができる可能性がある。

入試の多様化

近年入試自体が複線化され、AO入試等の主に学力以外の面を評価する入試が増加している。これら入試形態の多様化により、学力偏差値の存在意義は失われつつあるテンプレート:要出典。また、学力偏重主義は進学希望者のごく一部のみを捉える極めて狭い考え方であり、AO入試や推薦入試等の様々な入試形態による進学希望者に対する多角的な評価方法は正しく意義のあるものである。このような理由により、文部科学省は定員の50%までを推薦入試枠として募集することを認めている。

高校受験

高校受験では、教員の桑田昭三が受験生にどれくらいの合格確率があるかを、ある模擬テストによる点数や順位よりも正確に判断するため、独自の研究により「偏差値」を編み出した。以後、かなり広く使われ、教育現場では重宝していたが、'80年代になって「偏差値」=「その生徒の存在価値」かのような位置づけとして悪用をされ、教育委員会等で問題となった(開発者、桑田昭三は偏差値が悪者扱いされてしまったことを心底残念に思っている)[11]

やがて文部大臣鳩山邦夫や文部官僚寺脇研の提案により、公立中学校での進路指導時に使うことが禁止され、ほぼ同時期に一斉業者テストも廃止された。

中学受験

中学入試でも偏差値は広く使われている。首都圏での代表的な模試業者は、日能研四谷大塚首都圏模試センターである。なお首都圏模試センターは中小規模の学習塾が共同して設立したものである。

注意すべきなのは、高校受験の偏差値は、中卒者の97%に及ぶ高校進学者の大部分が模試を受けた者であるのに対し、中学受験の模試を受けるのは小学生のごく一部であり、平均的な小学生よりも学力の高い受験生が主体であるため、同じ併設型中高一貫校・同じ生徒であっても、中学受験時の偏差値の方が高校受験時の偏差値よりも低くなりがちということである。例えばA学園中学校の入学偏差値が40だったとすると、併設のA学園高校の偏差値は52であるという風になる(上位校はこれほど変わらない)。ただし河合塾などの高校模試受験者は中学生の上位成績者が母体なのでこれに当てはまらない。

テンプレート:要出典範囲

なお、偏差値というのは受験者の平均成績に対してどの程度離れているかを表す数値であるため、平均点が低く、かつ多くの受験生の得点がその付近に集中しているというようなテストで高得点を取った場合には、偏差値が100を超えることも稀にある。無論そのような場合出題による受験生の相性もしくは出題そのものが適正であったかを考慮する必要もあり偏差値による評価の限界がある。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

  • 1.0 1.1 テンプレート:Cite book
  • 2.0 2.1 テンプレート:Cite web
  • テンプレート:Cite webテンプレート:出典無効
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  • 1999/02/06 毎日新聞朝刊