地ビール

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地ビール(じビール)は、特定地域にて限定量生産する小規模ビール会社による地域ブランドのビール。日本では緊急経済対策の一環として、1994年平成6年)4月の酒税法改正により、ビールの最低製造数量基準が2000klから60klに緩和されたことを受けて全国各地に誕生した地域密着・小規模醸造のビール会社による、地方ローカルブランドのビールを指す。英語圏ではクラフト・ビールとも呼ばれ、また地ビールを醸造するビール会社や醸造所をマイクロ・ブリュワリーと呼ぶ。

概要

多くの醸造所が、エールダークエールピルスナーヴァイツェンケルシュなど数種類のスタイルのビールを醸造している。こうした地ビールの醸造所は、全国で200カ所前後ある。

緩和後、一時は地ビールブームとなったが、次第に沈静化。価格の安い発泡酒の攻勢を受けたことで、高価格の地ビールは一気に窮地に立たされることとなり、廃業する業者も出るようになった。実際に大手ビールメーカーですら、地ビール提供のレストランを閉館せざるをえない状況になった。これは、日本では大手メーカーによるピルスナースタイルの大量生産が主流であるため他のスタイルの味が普及せず、加えて割高な少量生産では一部マニアにしか浸透しなかったためである。

また、地ビールは全国区の大手ビール会社の製品に比べると、販売価格が高い上に賞味期限も短く、当然製造量も少ないため、経営に関してはかなり厳しいところが多い。このため、居酒屋チェーン等の飲食店向けに特化した生産を行ったり、他の地ビール業者のOEMを行うなどして何とか生産を維持しているところも多い。

西洋では、特にビールが盛んなドイツイギリスなどでは、地域ごとに特徴のある様々なビールが飲まれていた。1980年代後半よりアメリカ合衆国にて、地方の小規模な醸造所や、レストランに併設された醸造施設によって生産されるビールが人気を得ていたことが、世界的な地ビール流行の流れとなった。それらの醸造所は、クラフト・ビールマイクロ・ブリュワリーなどと呼ばれている。アメリカの代表的なクラフト・ビールとして、「サミュエル・アダムズ」、「アンカー・ブルーイング・カンパニー」、「ローグビール」等が挙げられる。

ブリュワリー

2013年2月の時点

北海道

  • 網走ビール
  • 大沼ビール
  • 小樽麦酒
  • 小樽ビール
  • 帯広ビール
  • 登別地ビール 鬼伝説
  • オホーツクビール
  • 薄野地麦酒
  • 大雪地ビール
  • 函館ビール
  • 北海道ワイン(天使の雫)
  • ピリカワッカ
  • ノースアイランドビール

青森県

  • 奥入瀬ビール
  • 恐山ビール
  • 津軽路ビール

秋田県

  • あくらビール
  • 湖畔の杜ビール
  • 田沢湖ビール

岩手県

山形県

  • 月山ビール
  • 天童果実村ブルワリー
  • 天童ブルワリー(湯坊いちらく)

宮城県

  • 鳴子温泉ブルワリー
  • やくらいビール
  • 松島ビール
  • 仙南クラフトビール

福島県

  • 福島路ビール
  • 猪苗代地ビール

茨城県

栃木県

群馬県

  • 嬬恋高原ブルワリー
  • 龍神酒造(オゼノユキドケ)

埼玉県

東京都

  • スミダブルーイング
  • T.Y.EXPRESS
  • 石川酒造
  • ホッピービバレッジ

千葉県

神奈川県

  • サンクトガーレン
  • 鎌倉ビール醸造(鎌倉ビール・葉山ビール・江の島ビール・横須賀ビール)
  • 熊澤酒造(湘南ビール)
  • 黄金井酒造(さがみビール)
  • 鈴廣(箱根ビール)
  • 横浜ビール
  • ブリマー・ブルーイング

新潟県

  • エチゴビール
  • スワンレイクビール
  • 胎内高原ビール
  • 八海山泉ビール
  • 新潟麦酒
  • 日本海夕陽ブルワリー

長野県

山梨県

  • 甲斐ドラフトビール
  • 富士桜高原麦酒
  • 八ヶ岳ビール
  • アウトサイダー・ブルーイング

静岡県

  • 御殿場高原ビール
  • 浜松酒造 天神蔵
  • ベアードビール

富山県

  • 宇奈月ビール
  • 城端ビール

石川県

  • 白山わくわくビール

福井県

  • 越前福井ビール DIOS

岐阜県

  • 飛騨高山麦酒

愛知県

  • 犬山ローラレイ
  • 金しゃちビール

三重県

  • 上馬
  • 伊勢角屋麦酒

滋賀県

和歌山県

  • くまのビール
  • ナギサビール

奈良県

  • 曽爾高原ビール

京都府

  • 一乗寺ブルワリー
  • 黄桜酒造
  • キンシ正宗
  • 周山街道ビール

大阪府

兵庫県

鳥取県

  • くめざくら大山ブルワリー
  • 夢みなとビール

岡山県

  • 作州津山ビール
  • 独歩ビール

島根県

  • 松江 ビアへるん

広島県

  • 呉ビール
  • 宮島ビール

山口県

  • ちょんまげビール
  • やまぐち鳴滝高原ブルワリー

愛媛県

香川県

  • 香川ブルワリー

徳島県

高知県

  • 土佐黒潮麦酒

福岡県

  • オークラブラッスリー
  • 杉能舎
  • ブルーマスター
  • 門司港地ビール

佐賀県

長崎県

熊本県

  • 阿蘇ビール

大分県

  • ゆふいんビール

宮崎県

鹿児島県

  • 霧島高原ビール
  • 薩摩ビール
  • 城山ブルワリー

沖縄県

日本の地ビール審査会

毎年、日本地ビール協会主催でジャパン・ビア・カップが開催されている。この審査会で全ての地ビールの出来の優劣が決まるわけではないが、一定以上のスキルを持つ審査員によって審査されているため、ある程度の信頼はおける。なお、ジャパン・ビア・カップの入賞ビールは東京大阪横浜で行われるジャパン・ビアフェスティバル会場で試飲が可能である。

クラフトビールの日

日本地ビール協会を中心とする「地ビールの日選考委員会」が1999年に制定、2000年から実施。元々は「地ビールの日」として制定され、日付は公募により選定。1516年のこの日、バイエルン国王ウィルヘルム4世が発布した「ビール純粋令」により、水、ホップ、大麦・小麦の麦芽、酵母だけがビールの醸造に使用できることとなって、「ビールとは何か」が世界で初めて明確に定義された。また、この日はドイツの「ビールの日」にもなっている。一般社団法人日本記念日評議会の2013年に「クラフトビールの日」と公式認定される。

脚注

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関連項目

外部リンク