千匹皮

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千匹皮(せんいろがわ)(Allerleirauh) は、グリム童話の中の話の1つ。“千色皮””千枚皮”などと訳されることもある。

近親相姦色が強い作品。美しい姫が異形のものに化けるというモチーフは、日本の『姥皮』などにも見られる。

あらすじ

ある国の王妃が病にかかり、臨終の床で「自分のように美しい女性とでなければ再婚しないで欲しい」と王に遺言をする。王妃の死後、再婚の話が出るが、王妃のような女性がいなかったので断り続ける。

数年後、王は自分の娘が王妃に似た美しい女性へと成長していることに気づき、再婚相手と定める。王女は近親結婚を阻止する為、月のドレス、星のドレス、太陽のドレスを父王にせがみ、さらに千種類の動物の皮で作った毛皮のコート(千匹皮)を作ってくれないと結婚はしないと難題を突きつける。しかし王は国中の職人を集めてすべての衣装を完成させてしまう。父から“婚礼は明日”と告げられた王女は万策尽きた事を悟り、三着のドレスを持って千匹皮をまとい、城から逃げ出す。

森をさまよっていると、奇妙な獣と間違えられ、捕らえられるが城の下働きとして雇われる。城で舞踏会が開かれたとき、月のドレスをまとって現れる。王に気に入られるが逃げ出し、千匹皮に化けてやり過ごす。

二度目の舞踏会に千匹皮は星のドレスをまとって現れる。二度目も千匹皮に化けてやり過ごす。 三度目の舞踏会に千匹皮は太陽のドレスをまとって現れる。王のもとから逃げ出すが、千匹皮に化ける時間をとれず、正体がばれる。王は王女を花嫁に迎える。

なお、年代が下るとキリスト教の普及などにより、近親婚は反社会的と見なされる様になり、王女が父王と結婚せず、他国の王や王子と結婚するヴァージョンも著され始める。

また、源典となった古い民話には、王女が結婚の条件として突き付ける難題に、王国の至宝であり財源でもある「黄金の糞をする驢馬」の皮で作ったコートを要求する、「千匹皮」ならぬ「驢馬の皮」ヴァージョンも存在する。

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