全日本教職員組合

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テンプレート:労働組合 全日本教職員組合(ぜんにほんきょうしょくいんくみあい、英語All Japan Teachers and Staff Union)は、日本における教職員組合の全国連合組織のひとつであり、全労連に加盟する団体である。略称は、全教(ぜんきょう)。

概要

1989年11月日本労働組合総連合会(連合)結成に至る流れの中で、これに反発する単組が日本教職員組合(日教組)の中にも多数あった。これらの内、統一戦線推進労働組合懇談会(統一労組懇)の教職員部会に所属していた単組を中心として、日教組が連合加盟を決定した第68回定期大会(同年9月6 - 9日)をボイコット[1]、日教組を事実上離脱して約2ヶ月後の11月1718日全日本教職員組合協議会を結成した[2]。発足時の公称組織人員は18万人[3]

その後、全日本教職員組合協議会と日本高等学校教職員組合(日高教左派・一橋派)との組織統一により、1991年3月6日、公称21万人の組織(当時の労働省の調査では、実際の組織人員は約16万8千人[4])として発足した。

現在の加盟単組は、日高教左派加盟単組が31組合(準加盟1)、全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)加盟単組39組合、その他24組合が加盟する94単組の連合組織となっている。結成以来現在まで、日教組に次いで2番目の組織規模を持つ教職員組合である。3番目の組織としては全日教連がある。

都道府県別に見ると、教職員組合の中で全教傘下の組織が最大の勢力を持つのは青森県埼玉県東京都京都府奈良県和歌山県島根県高知県である。

2008年12月発表の文部科学省調査[2]によれば、同年10月1日現在の公立学校における組織人員は約6万4千人(組織率6.4%、前年比0.3ポイント減)、新採用教職員の加入者数は373人(約1.3%、前年比0.4ポイント増)であり、他の教職員組合と同様、漸減傾向が続いている。また、厚生労働省による「労働組合基礎調査」[3]によれば、私立学校教員や、教員以外の学校職員を含んだ2009年6月末現在の組織人員は、前年比2千人減の約10万人である。

日教組活動との違い

民主的教師論

「教え子を再び戦争に送るな、青年よ再び銃を取るな」を綱領に明記し、日本国憲法教育基本法児童の権利に関する条約に根ざした教育の推進、教職員の生活と権利、世界平和を主張していることは日教組と同様であるが、教師は「聖職者」でも、単純な「労働者」でもなく、「民主的教育労働者」であると定義する点が日教組との違いであるとされている。「教師は労働者であるとともに教育の専門家である」として、労働者としての立場と、国民全体と生徒のために働いているという立場を一体とのものとし、教師としての責任を全うしていこうという考え方である。

綱領によれば原則的に組合員の政治活動は自由であり、特定政党の支持はしないことになっている。教職員の経済的、社会的、政治的な個々の政策ごとにそれぞれの政党等と政策合意することで各要求の実現をはかることとされている。しかしながら、全教の活動の実態としては、日本共産党と同一歩調を取る場合が多い。

その他、日教組や他の教職員組合の労使協調的姿勢を批判し続けている。また、部落差別はもはや存在しないとして「同和教育」完全終結を主張し、現場で反対運動を展開していることも日教組と違う。

広島県で、全教組合員が、性的関係を持った教え子から結婚を迫られた際、生徒が部落出身であることを理由にこれを拒絶し、生徒が自殺するという事件が起きた。これに対して部落解放同盟は全国的な宣伝活動を行い全教を非難した。

日教組からの離脱

1989年9月の定期大会で、日本教職員組合(日教組)は連合加盟を決定したが、日本共産党の影響の強い単位労働組合は「日教組はもはや後戻りの出来ない右転落をした」と批判して大会をボイコットし、事実上日教組を離脱。11月に全日本教職員組合協議会を結成した。日教組本部はこれに対抗し、共産党系の専従役員を統制処分に付すとともに、同年12月及び翌年3月の臨時大会で全教加盟組織を日教組から脱退したと見なして構成組織から除外することを明確にする一方、すべての離脱県で、日教組方針を支持する支部・組合員による新組合を旗揚げさせた。

日教組から離脱した単組は青森県埼玉県東京都岐阜県奈良県和歌山県島根県山口県香川県愛媛県高知県教職員組合、11組合と私学部。京都府大阪府兵庫県の教職員組合は組合が分裂。その他の組合は各県の教職員組合から一部支部や共産党系組合員個人が離脱し結成された。

なお、共産党系が執行部を握る単組のうち宮城県教組や長野県教組は日教組系と勢力が拮抗していたため全教加盟方針が提起できず、宮城高教組、名古屋市立高教組、福井高教組などは、大会や全組合員による批准投票などで日教組離脱方針が否決され、全教加盟は不可能となった。これらの日教組傘下組織と全教は、「教組共闘」という組織を通じて共同行動を行っており、それらの活動を通じて、日教組への浸透と、切り崩しを図っている。

同じ都道府県でも地域によって状況は異なり、ある地域では全教の教職員が多くを占めるが、別の地域では日教組の教職員がその多くを占めるという状態もある。これは、上記のように、都道府県教組から一部組織が離脱して日教組あるいは全教傘下組織が結成された経緯の名残である。

特徴的な活動

全国3000万署名

ゆきとどいた教育をすすめる全国3000万署名。30人学級実現や私学助成拡充、教育費の父母負担軽減などを求める全国3000万署名運動を結成以来続けており、12年間で2億7,500万筆を集約した。

組織

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加盟組合

教職員組合

特定の単組が独立していない限り、小・中学校の教員の他、障害児担当教員、養護教員、実習教員、現業職員、事務職員、栄養職員、臨時採用の教職員が加盟している。基本的には市町村立の小中学校の教職員が加盟。計23単組。 テンプレート:Col

高等学校の教職員組合

特定の単組が独立していない限り、高等学校の教員の他、障害児学校教員、養護教員、実習教員、現業職員、事務職員、臨時採用の教職員が加盟している。基本的には都道府県立の高等学校や特別支援学校の教職員が加盟。計31単組。(準加盟1)

私立学校の教職員組合

私立の幼稚園・小学校・中学校・高等学校・専門学校(専修学校・各種学校)の教職員が加盟している。計36単組。

脚注

  1. JILPT 労働記事DB/詳細情報 週刊労働ニュース1989/09/11 新「連合」加盟を決定・反主流派は大会欠席・組織分裂が確実に/福田執行体制は継続・日教組大会
  2. JILPT 労働記事DB/詳細情報 週刊労働ニュース1989/1120「全教」が結成大会/日教組反主流派18万人で
  3. 文部省調査によれば実際の組織人員は10万人強[1]
  4. JILPT 労働記事DB/詳細情報 週刊労働ニュース1991/02/25 全教と日高教が統一3月5日に新組織結成

関連項目

外部リンク