不平等

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経済学において不平等ふびょうどう inequality)とは、所得あるいは資産が人々の間で「等しくない」状態を指す。逆に、平等(equality)とは所得あるいは資産が人々の間で「等しい」状態である。

平等か不平等かは、客観的な事実を述べたに過ぎないことに注意を要する。ある状態が社会正義に照らして正しいか否かを判断する場合には公平(fairness)という言葉を用いる。

ある状態を見て平等か不平等かは客観的な基準で判断するが、公平か不公平かは道徳的基準がなければ判断できない。なお、パレート効率性は一種の価値基準であるが、公平性の議論は含んでいない。

経済学では、インセンティブと平等のトレードオフという概念がある。これは契約などにおいてインセンティブを強化すると必ず平等性が失われるというものである。例えば、雇用契約において出来高払いの部分を大きくするとインセンティブは強化されるが、結果として従業員間の給与の平等性は失われる。この概念は、経済学の様々な場面で必要になる考え方である。なお、このインセンティブと平等のトレードオフは、平等性が高まるほどリスクが減少するという関係にあるため、インセンティブとリスクのトレードオフとも関連している。

最近では、世代ごとに年金等の負担と給付のバランスを計算した世代会計という概念を用いて、異なる世代間の不平等性を唱える議論がさかんに行われている。

経済成長との関係

経済学から見た場合、一般には、報酬が業績と結びついているインセンティブの度合が大きいほど、総産出量がより高くなる反面、より不平等が拡大するものと考えられる。このことはインセンティブ・平等のトレードオフincentive-equality trade offと呼ばれる。

ただし個人の業績は、当人の能力や努力の違いだけでなく、幸不幸をはじめとした、当人には帰せられない外部的な条件の違いによっても異なるものと考えられる。また急速な経済成長がつねに不平等の拡大を伴うとは限らず、かつての東アジアの奇跡におけるような貧困の著しい減少がもたらされる場合もある。

関連項目