七大陸最高峰
七大陸最高峰(ななたいりくさいこうほう、Seven Summits)は地球上にある7つの各大陸(厳密には大州)で最も標高が高い山である。
七大陸最高峰はテキサスの大富豪としても知られるディック・バス(当時50歳)と、ワーナー・ブラザーズの社長であったフランク・ウェルズ(当時51歳)が自らの体験をまとめた著書『Seven Summits』の中で各大陸の最高峰として示している。それとは別に、ラインホルト・メスナーが類似したリストを提示している。また、それらに加えてもう1つのリストがある。
目次
七大陸最高峰の一覧
ユーラシア大陸はアジア亜大陸とヨーロッパ亜大陸に分けて考える。ちなみにユーラシア大陸を1つとして考えた場合の最高峰は、世界最高峰として知られるエベレストである。
ディック・バスたちとラインホルト・メスナーのリストはほとんど同じものであるが「オーストラリア」をオーストラリア大陸だけとする(バスの分類)か、オーストララシア(オーストラリア大陸とその周辺海域)とする(メスナーの分類)かが異なっている。
オーストラリア大陸の最高峰はコジオスコだが、オーストララシアを含むとプンチャック・ジャヤの方がコジオスコよりも2,000m以上高い。
また、ヨーロッパの最高峰はエルブルス山ではなくモンブランとする場合もある。
- アジア大陸:エベレスト(ネパール・中華人民共和国、8,848m)
- ヨーロッパ大陸:エルブルス山(ロシア連邦、5,642m)
- 北アメリカ大陸:マッキンリー(アメリカ合衆国、6,194m)
- 南アメリカ大陸:アコンカグア(アルゼンチン、6,959m)
- アフリカ大陸:キリマンジャロ(タンザニア、5,895m)
- オーストラリア大陸:コジオスコ(オーストラリア、2,228m)
- 南極大陸:ヴィンソン・マシフ(南極半島付近、4,892m)
歴史
アメリカの大富豪でアマチュア登山家であったバスは、オーストラリアを含む七大陸の最高峰に登ることを目標としていた。彼は自分と同じ夢を持つウェルズと七大陸最高峰の中で最も困難なエベレストに、プロの登山家の助けを借りて1985年4月30日に登頂した。全ての最高峰に登頂した彼は自分のなしたことをフランクと共同執筆した。
登山経歴が職業的にも個人的にも抜きん出ていたメスナーは大陸としてオーストラリアを選択したことに反対し、オーストラリアではなくオーストララシア全体の最高峰を入れたリストを発表した。オーストラリア最高峰のコジオスコはスキーリフトが頂上付近まであり誰でもハイキング気分で上れる山であり、登山家の「登山」の対象外である。
2003年現在、約100人の登山者がどちらかの最高峰リストの全ての山への登頂を達成している。それらのうち約40%は、2つのリストに含まれている8つの山に登っている。
登頂最年少記録
1990年代以降のヒマラヤ山系の登山は公募による商業隊が主流となり、組織力を持たない個人でもエベレストなど高峰への登頂が可能となった。こうした背景からかつては至難の業であった七大陸最高峰登頂記録もハードルが下がり、世界最年少記録の更新が相次いだ。現在の最年少記録はジョーダン・ロメロの15歳で、エベレスト登山に年齢制限が導入されたことから、今後この記録を更新することは不可能である。現在の日本人最年少記録は渡辺大剛の22歳(2004年)。
- 1990年 ロブ・ホール(ニュージーランド・29歳)
- 1995年 デイビッド・キートン(アメリカ・29歳)
- 1996年 ナスマフルキ(トルコ・28歳)
- 1999年 野口健(日本・25歳)
- 2001年 石川直樹(日本・23歳)
- 2002年 山田淳(日本・23歳)
- 2004年 ブリトン・キーシャン(アメリカ・22歳)
- 2005年 ダニエル・フィッシャー(アメリカ・20歳)
- 2006年 リスマイルス・ジョーンズ(イギリス・20歳)
- 2007年 サマンサ・ラーソン(アメリカ・18歳、女性最年少記録)
- 2011年 ジョージ・アトキンソン(イギリス・16歳)
- 2011年 ジョーダン・ロメロ(アメリカ・15歳)
論争
目標への推進についての批評
難易度についての批評
商業主義が蔓延し、登山システムが完備されているとして、「もはや登山家が目指す困難な目標ではない」と評価する向きもある。メスナーのパートナーも務めたハンス・カマランダーはより難易度の高い第二位の標高の山である「セブン・セカンド・サミット」を提唱している[1]ほか、七大陸最高峰のスピード登頂記録を目指したクリスチアン・シュタングルは標高3位までの山すべてを登頂する「トリプル・セブン・サミット」を提唱している[2]。
エルブルス山はヨーロッパを代表する山か
かつてヨーロッパの最高峰はモンブラン(4,810m)とされていた。しかし東西冷戦の終結の後、旧ソビエトへの登山が増えた。現在は登山家の間ではヨーロッパ最高峰は、エルブルス山とするのが一般的である。
しかし、エルブルス山をヨーロッパ最高峰としたことに対する批判がある。エルブルス山のあるコーカサス地方は商業、人的交流、文化などの面でヨーロッパよりもむしろアジアに近い。そこで、エルブルス山の代わりにモンブランを入れるべきとする意見がある。
また一方でモンブランを旧ヨーロッパ、エルブルスを新ヨーロッパとして七大陸ではなく八大陸とする考えも生まれている。
参考文献
- 『Seven Summits』(Dick Bass, Frank Wells, Rick Ridgeway(Warner Books, 1986) ISBN 0446513121)
関連項目
脚注
- ↑ Seven Second Summits - Hans Kammerlander Extrembergsteiger
- ↑ The target Three highest mountains of each continent