ラッサ熱

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テンプレート:生物分類表 ラッサ熱(らっさねつ、Lassa fever)は病名出血熱のひとつ。アレナウイルス科ラッサウイルスによる。マストミスMastomys natalensis,en:Natal Multimammate Mouse)とよばれる齧歯類が自然宿主である。感染者のおよそ80%が軽症であるが、約20%が重症となり致死率は感染者の1~2%程度。毎年10万人以上が感染し、5000人程度が死亡している。妊婦は重症化し易く、胎内死亡、流早産を起こしやすい。

歴史

1969年ナイジェリアのラッサ村にて最初の患者が発生。1970年代にウイルスが分離され、村名にちなんでラッサウイルスと命名された[1]

病原体

アレナウイルス科に属し1本鎖RNAをもつ。病原体を扱うにはP4レベルの施設で行う必要がある。

疫学

マストミスという齧歯類の動物が自然宿主。感染しているマストミスは症状を示さず、「排泄物」、「唾液中」に終生ウイルスを排出する。基本的に空気感染せず接触感染であるが、ヒトは咳などの飛沫感染により伝播し二次感染も起こるが、手肌の接触程度では感染しない。</br>マストミスは西アフリカに生息するためラッサ熱も西アフリカで発生する。潜伏期間は5~21日で致死率は感染者の1-2%と判明している。日本では1987年の輸入例を除き発生はない[1][2]。また、非感染地域での2次感染は報告されていない。

症状

特異的な症状は示さない。徐々に進行し主な症状は発熱頭痛、倦怠感、関節痛、咽頭痛吐血下血、粘膜出血など。脳炎症状を併発する場合もある。重症例ではショックに至り、ときに再燃がみられ、また回復後に知覚神経麻痺(代表は聴覚障害)・歩行失調がみられることがある。

診断

P4レベルの施設で、培養細胞を用いて咽頭ぬぐい物、血液、尿などからウイルスを分離。血液などの検体からPCR、ELISA、免疫抗体法などで遺伝子や抗体を検出する。鑑別診断は他のウイルス性出血熱、発熱性感染症の原因病原体の不検出。

治療

リバビリンを静注する。初回33mg/kg、ついで16mg/kgを6時間毎4日間、さらに8mg/kgを8時間毎3日間使用する。致死率を有意に低下させることが知られている。患者の退院は血液、尿からウイルスの非分離が条件となる。

法律

感染症法における1類感染症で、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る。検疫法における検疫感染症である。

脚注

  1. 1.0 1.1 感染症の話 ラッサ熱
  2. 東京都保健医療公社 荏原病院 沿革(昭和62年8月)

外部リンク

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