モスリン

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ファイル:Woman's muslin dress c. 1855.jpg
モスリンのドレスに身を包んだヨーロッパの女性(1855年)

モスリン(英語: muslin)とは綿(めん)や羊毛(ウール)などの単糸平織りした薄地の織物

日本では、モスリンは薄手の平織り羊毛生地を指すのが普通で、綿生地を綿モスリン、羊毛生地を本モスリンと呼んで区別することがある。(出展:英辞郎 http://eow.alc.co.jp/muslin/UTF-8/)

別名、メリンス(スペイン語に由来)、唐縮緬(とうちりめん)。

のモスリンはシフォンと呼ばれる。

概要

薄地で柔らかくあたたかいウール衣料素材で、日本では戦前の普段着の着物、冬物の襦袢半纏の表、軍服(夏服・夏衣)などに用いられていたが、近年では東北地方北海道の一部以外ではほとんど流通しておらず、目にする機会は少なくなっている。

神崎川を越えて大阪市淀川区兵庫県尼崎市戸ノ内町を結ぶ橋の一つに「毛斯倫(モスリン)大橋」があるが、この名称は初代の橋が「毛斯倫株式会社」が掛けた私橋だったことによる。戦前には日本のモスリン製造業は繊維産業として隆盛を誇り、一代で莫大な財を成した資産家も多かった。

日本が戦争に突入し、政府より「繊維製品の使用制限」が公布され(1937年10月11日)、羊毛製品にステープル・ファイバー(スフ)混入が命じられると、自ずとモスリンの製造業は衰退を余儀なくされた。

17世紀にヨーロッパに登場したが、その語源はイラクの都市モースルからもたらされたことに由来する。しかし実際にはインド亜大陸のダッカ(現バングラデシュ)で作られ陸路モースルまで運ばれていた(もともとは木綿織物であるが、日本には木綿では伝わらず広まらなかった)。