ペンタプリズム

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ペンタプリズム模式図
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ペンタダハプリズム模式図

ペンタプリズムPentaprism )とは、一眼レフカメラファインダーに用いられる5角柱形で7面体のプリズム(右上模式図)。名称は「五角形Pentagon )のプリズム」の意味。カメラ本体の上部中央に取り付けられる場合が多い。

ミラーで鉛直方向に反射された光を2回反射させて接眼レンズに導く。一眼レフカメラに使用されているものは、厳密にはペンタゴナルダハプリズムといい、5角柱の側面の一つをダハ面(直角に交わる2面に分割したもの)とし、左右方向を反転させる機能も持っている。この場合、形状は8面体となりプリズム内では3回の反射が行われる。(右下模式図)

写真レンズを通じて得られる画像は上下さかさまで左右が逆の倒立逆像であり、これを正立正像に復元するためには、上下方向と左右方向共に2回ずつ、計4回反射させる必要がある。一眼レフカメラにおいてはレンズ後部のミラーにおいて1回の反射を行い、残り3回の反射をペンタプリズムにおいて行う。これによりファインダー内の画像は、上下左右とも正しい正立正像として得ることができる。

プリズムの反射面はアルミニウムや銀でメッキまたは蒸着加工されている。

世界最初のペンタプリズム式一眼レフカメラは東ドイツドレスデンツァイス・イコンが製造したコンタックスS(1948年)である。この後継機は西側諸国でコンタックスのブランドが使用できなくなったのを機会としペンタプリズムを装備したコンタックスとの意[1][2]から「ペンタコン」シリーズとなり、また後にペンタコンはメーカー名にもなった。

旭光学工業が当初製品名、続いてブランド名・メーカー名として使用した「ペンタックス」もこのペンタプリズムに由来する。

ペンタミラー

ペンタミラーとは、ペンタプリズムと同じ原理に基づくが、プリズムの代わりにでできた装置。メーカーによってダハミラーミラーペンタとも。プリズムとの違いは、プリズムが像を一回転させるのに対し、鏡で2回平行反射させる。

ペンタプリズムと比較して、

長所
プリズムが光学レンズさながらの精度、品質を要求するのに比べ製造の要求精度が低い
中実となるプリズムに比べ中空となるので軽量化が容易
短所
光学的距離が伸びてしまいファインダー像が暗く、遠い(小さい)
単一部品であるプリズムに対し複数部品であることが多いため後々の光軸のずれが生じやすい

特に手動でのピント合わせではファインダー像の視認性がきわめて重要であるため、高級機種やマニュアルフォーカス一眼レフカメラに用いられることは稀である。エントリークラスのオートフォーカス一眼レフカメラ等、低価格化と軽量化を重視した製品では比較的よく用いられている。

脚注

  1. 小林孝久著『カール・ツァイス』P94。
  2. 赤瀬川原平著『中古カメラ大集合』P242。

参考文献