ペダルトーン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

ペダルトーン(pedal tone)は、(特に金管楽器で)第1倍音(基音)をさす言葉。倍音も参照。

解説

金管楽器は管の実長をスライドやヴァルヴで変えて音の高さを変えているが、それは、高次倍音から管を長くすることによって音程を低くしているという理屈で、その基となる音(スライドなら第1ポジション、ヴァルヴなら何も押さない音)はほとんどの場合倍音である。ペダルトーンと第2倍音の間は、1オクターヴ(完全8度)開いており、全てのヴァルヴを使っても減5度しか下がらないトランペットコルネットフリューゲルホルン、あるいはアルト・トロンボーンテナー・トロンボーンなどでは半音階で辿り着く事が出来ない。ヴァルヴを4個以上持つ金管楽器やテナーバス・トロンボーンなどは半音階で辿り着けるが、実際の楽曲での使用頻度はごく少ない。

ペダルトーンを出すのには、それ相応の技術が必要である。とくに管が細いトランペットでペダルトーンを出すのは非常に難しく、学術書の中には、トランペットは基音が出ない楽器と説明するものすらある。これをきちんとした音程で吹ける者はかなりの実力者といえる。

なお、モーツァルトの楽曲にはトランペットにペダルトーン領域の音が楽譜に見られる事があるが、モーツァルトの頃のトランペットはナチュラルトランペットで現在よりも管が2倍長い楽器であった為、当時はペダルトーンで演奏していたわけではない。現在ではこれらの低い音を出すのに、無理にペダルトーンで行うよりも低い調子の管や延長管を使用して演奏する方が現実的である。

著名な教則本としてジェームス・スタンプ、ルイ・マジオ(日本語版は絶版)等が書いたものが挙げられる。他にもカーマイン・カルーソーの中にも出てくる。

ただし、ペダルトーンの練習には肯定・否定双方の意見がある。

効果

各種ペダルトーンの教則本では、ペダルトーン領域からハイノートまで上がるものが多く、広い柔軟性を獲得するのに役立つ。また、ペダルトーンを練習することで唇のリフレッシュや血行促進に役立つ、とも言われている。

しかし、やりすぎることで唇の膨張や感覚の麻痺などの副作用があるとも言われるため、節度を守って行う必要がある。特にトランペットの場合は、通常のアンブシュアから大きく変化させてしまうと、副作用が出やすくなりやすいと言われるため、注意が必要である。

用例

トランペット
ホルン
トロンボーン