ベレッタM1934

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テンプレート:Infobox ベレッタM1934は、イタリアで軍用に開発された自動拳銃である。

M1934の系譜

第一次世界大戦以前、イタリア軍は制式拳銃として生産性の良くないグリセンティM1910を採用していた。しかし急激に増大する兵器の需要に、当時のイタリアの産業界は対処しきれず、生産された各種の銃器類は全て前線に投入されることとなった。それでも武器の供給が追いつかず、拳銃に関しても例外ではなかった。

拳銃の配備の少なさに頭を悩ませたイタリア軍は、老舗の銃メーカーピエトロ・ベレッタ社に大量生産向けの拳銃の設計を依頼する。そこでピエトロ・ベレッタ社の技師ギアンドーソは、グリセンティ用9mm弾を発射できる、ストレートブローバック方式を用いた自動式拳銃を設計、イタリア陸軍に提示。拳銃の不足に悩んだイタリア陸軍はこの安く大量に生産できる拳銃をすぐに採用。ベレッタM1915と命名され、量産発注した。のちにベレッタM1915は第一次世界大戦中、イタリアで最も生産された拳銃となった。

ベレッタM1915の大量生産でピエトロ・ベレッタ社は一躍イタリア最大の銃メーカーとなった。その後ベレッタ社はM1915の技術を踏まえて中型・小型のブローバック式自動拳銃を市場に送り出して成功する。主力の軍用拳銃としては、1930年代初頭にM1915の直系と言える発展型のベレッタM1931とベレッタM1932を開発した。両銃とも小型.32ACP弾(7.65mm×17弾)を使用し、小型軽量で使いやすかった。

ベレッタ社はこれを改良してさらに部品数を減少、強度を上げたベレッタM1934を開発した。外見はグリップカバーから木製パーツを廃し、金属製に変更していることで区別できる。また弾丸はこの方式で使える拳銃弾の中では強力な.380ACP弾を採用し、一定の威力を確保した。小型でシンプルな作りによって故障の少ないこの拳銃は1934年、イタリア軍にベレッタM1934という名で制式採用され、第二次世界大戦全般に渡ってイタリア陸軍に使用されることとなった。

また派生型として、外見はほとんど同型で7.65mm×17弾を使用するのM1935も開発され、こちらも商業的成功を収めた。

近代的な軍用拳銃の必要条件を満たし、自衛用としては充分な性能を備えた拳銃となっている(第二次世界大戦の北アフリカイギリス軍がイタリア兵から鹵獲したベレッタM1934を自分の装備に使用していたという話もある)。

ピエトロ・ベレッタ社は1945年、イタリア敗戦まで拳銃や機関銃を作り続けた。しかし大戦末期になると会社はイタリアに進駐していたドイツ軍に接収、ドイツ軍及びそれに協力する組織用に生産を行なうことになった。しかし、この時期になるとM1934は製作精度・仕上げが次第に雑になり、粗悪な品質になった。

大戦後、ベレッタ社は残った部品をかき集めることから、ベレッタM1934・M1935の再生産を始めた。再編されたイタリア軍や警察でもベレッタM1934は制式採用された。外装デザインの一部変更(グリップデザイン等)を加えられながら生産された。アメリカ販売版は「M934・M935」の名称で販売されたが、後継モデルのM70系が1950年代以降に登場したことで生産終了した。

特徴

長所

  • 小型軽量で基本的に扱いやすい銃だった。
  • ストレートブローバック方式で、部品も少なく、故障しにくかった。
  • スライド上の大きな排莢口により、薬莢の排出不良の発生率が低かった。

短所

  • 手動セフティは、もともとレバーの位置が悪いうえ、切り替えの時には180度近くも回転させる必要があったので、操作性が良くなかった。これはシングルアクションの拳銃としてはあまり有利とは言えない構造であった。克服のため、ワルサーPPに類似したスライド上に小さい角度で操作できるセフティを装備した試作品も作られたが、一般向け量産はされなかった。
  • 使用弾の.380ACP弾は威力が弱いという一面があった(ただし絶対的威力については.380ACP弾を使う銃における共通の短所であり、本銃特有の問題ではない。イタリア軍は本銃採用前には威力の低いグリセンティ9mm弾を軍用制式拳銃弾として用いていたことがあり、これは軍の兵装方針の問題である。ちなみにイタリア軍が9mmパラベラム弾を使用した拳銃(ベレッタM1951)を正式採用したのは第二次大戦後である)。

ベレッタM1934に関連する作品

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関連項目

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