プレアデス星団

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プレアデス (Pleiades)
星座おうし座
観測データ
種別散開星団
赤経 (RA, α) 03h47.0m (J2000.0)
赤緯(Dec, δ) +24°07'(J2000.0)
距離 400光年
視等級 +1.2
視直径 110'
物理的性質
直径 _万 光年
(B-V)_
絶対等級_
特性 _
その他の名称

M45、すばる、
Seven Sisters、メロッテ22

280px

プレアデス星団[1](プレアデスせいだん、テンプレート:En)は、おうし座散開星団である。メシエ天体としての名称はM45。和名はすばる[1]

地球から400光年の距離にあり、肉眼でも輝く5–7個の星の集まりを見ることができる。双眼鏡で観測すると数十個の青白い星が集まっているのが見える。比較的近距離にある散開星団であるため狭い範囲に小さな星が密集した特異な景観を呈しており、このため昔から多くの記録に登場し、各民族で星座神話が作られてきた。

1769年メシエカタログの45番に加えられた。メシエカタログは3回に分けて刊行されたが、M45は1回目のカタログに記載された最後の天体である。

約6千万 - 1億歳と若い年齢の青白い高温の星の集団である。核融合の速度が速いため寿命は比較的短いと予想されている。星団を構成する星の周囲には青白く輝くガスが広がっている。これは、星々とは元々関係のない星間ガス (IC349) が、星団の光を反射しているためである。

構成

ファイル:Map of the Pleiades.jpg
プレアデス星団の構成

プレアデス星団を構成する星のうち、以下の主要な明るい星にはギリシア神話プレイアデス7姉妹、その両親アトラースプレーイオネーの名が付いている。プレアデス星団にまつわるギリシア神話の内容については当該項目を参照。

名前 綴り 符号 等級 解説
アルキオネ Alcyone 25=η 2.86 星団中央の明るい星。星団の中では一番明るい。トレミーアル・ズーフィが記録した4個の星のうちにこの星がないため、当時より増光したとする説がある。
アトラス Atlas 27 3.62 星団の左端に位置する明るい星。
エレクトラ Electra 17 3.70 メローペの右上、マイアの右下に位置する明るい星。
マイア Maia 20 3.86 アルキオネの右上、メローペの上に位置する明るい星。
メローペ Merope 23 4.17 アルキオネの右下に位置する明るい星。
タイゲタ Taygeta 19 4.29 マイアの右上に位置する星。
プレイオネ Pleione 28 5.09 var アトラスの上に位置する星。
HD 23985 - - 5.23
HD 23753 - - 5.44
ケラエノ Celaeno 16 5.44 エレクトラの上、マイアの右に位置する星。
アステローペI Asterope I 21 5.64 マイアの上に位置する2連の星の上側。
おうし座18番星 - 18 5.65
おうし座33番星 - 33 6.05
HD 23950 - - 6.07
HD 23923 - - 6.17
HD 24802 - - 6.19
おうし座24番星 - 24 6.29
HD 24368 - - 6.34
アステローペII Asterope II 22 6.41 マイアの上に位置する2連の星の下側。

観測

通常の視力の人が好条件のもとで、6 - 7個の星を数えることができる。大変視力が鋭い人が25個もの星を肉眼で見たとする記録が残されている。昔イギリスのTV放送でアンケートを取ったところ、73%は6 - 8個だったという。ホメロスは6個、トレミーは7個、アル・ズーフィは5 - 7個、ハイドンは7個見えたと記している。望遠鏡を使えば飛躍的に星数も増し、ガリレオは36個の星を見ている。

双眼鏡で最も美しく見ることができる。口径10cmの望遠鏡では星団としてのまとまりは無くなるが、代わりに星団の背後にある散光星雲が見えてくる。メローペを囲む散光星雲(IC349)は、1859年にテンペルが口径10cmの望遠鏡で発見した。「鏡の上に息をかけたときにできるような、にじんだ光が見える。大きさは約35'×20'で、メローペの南から広がっている。新彗星かと思ったが、次の日にも同じ所に見えていた」と記している。1875年ミラノ天文台のスキャパレリは星雲がメローペからエレクトラ、ケレノまで広がっているのを確認した。ウェップは「口径2インチで見え、11インチでは見えない。大口径では見えないが、時折どうにか見える。しかし、ファインダーではよく見える」としている。通常は散光星雲IC349を見るためには口径20cm以上の望遠鏡を必要とする。

名称・神話

ファイル:Nebra Scheibe.jpg
紀元前1600年頃のネブラ・ディスク。中心から右上の点の集まりがプレアデス星団だと信じられている。

プレアデス星団は肉眼でも見ることが出来る明るい星々の集まりであり、様々な文化で人々の興味を引き、聖書や伝説、民話、星座物語に登場し、数々の名称を持つ。

ギリシア神話

テンプレート:Main プレアデス星団の名前は、ギリシア神話に由来し、巨人アトラースニンフプレーイオネーの間に生まれたプレイアデス7人姉妹(アステロペーメロペーエーレクトラーマイアターユゲテーケライノーアルキュオネー)を指している。プレイアデスは女神アルテミスに仕えていた。

また、同じくおうし座にあるヒアデス星団ヒュアデスの7姉妹は、アトラースとアイトラーの娘たちであり、プレイアデス姉妹とは異母姉妹の関係である。このため、西欧では「七人の姉妹」あるいは「七人の乙女」の名が通っている。ギリシャでは「ぶどうの房」という名もある。

中国

中国では(ぼう)と呼ばれる。星官(中国の星座)としては、エレクトエア、タイゲタ、マイア、アステローペ、メローペ、アルキオーネ、アトラスの7つの星が昴を構成する。

昴を中心とした領域は、天の赤道帯を二十八分に区分した二十八宿の1つの昴宿である。

日本

日本では古来、プレアデス星団をすばる)と呼んだ。他にも地方によって、「六連星(むつらぼし)」や「羽子板星」などと呼ばれている。その他日本各地で多くの方言が見つかっている。詳細は、プレアデス星団の方言参考。

「すばる(統ばる)」または「すまる(統まる)」という言葉は元来他動詞「すべる(統べる)」に対する自動詞形であり、「統一されている」「一つに集まっている」という意味をもつ。玉飾を糸でひとくくりとしたものを『万葉集』で「須売流玉(すまるのたま)」、『日本紀竟宴和歌』で「儒波窶玉(すばるのたま)」などと呼んだのと同様の用法である。

その後、中国でプレアデス星団を指す昴宿から「昴」を当てた。

奈良時代に成立したとされる『丹後国風土記』逸文に「其七豎子者(七人の童子)、昴星也。其八豎子者、畢星也」という記述があり、それぞれ隣り合っているプレアデス星団、アルデバランヒアデス星団の事と見られる。

日本でプレアデス星団について言及した最古の記録は、平安時代醍醐天皇皇女勤子内親王の命で作成された百科事典『倭名類聚抄』だと考えられている。この中で、昴星の和名は須波流と記されている。

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ほかに、清少納言の著した『枕草子』の一節(第236段)が有名である。

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ポリネシア

ニュージーランドマオリは、プレアデス星団をマタリキ(Matariki、「小さな目」の意)と呼ぶ。ポリネシア祖語形は *mata liki。海の民にとって、星座の識別は夜の航海に欠かせないものだった。また、マオリの人々は、プレアデス星団が見えるようになる時期を新年の基準としており、マタリキには新年という意味もある。

ハワイ語では「マカリイ」(Makali'i)と呼ばれる。1994年にハワイ島で建造された航海カヌーの船名ともなっている。

聖書

ヨブ記38章31節には「あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの綱を解くことができるか。」という文章がある。

その他

アラブでは「群衆」や「小さきもの」、フランスでは「雛箱」、ドイツでは「とやについた牝鶏」、イタリアでは「小さな牝鶏」、スペインでは「小さな牝山羊」、イギリスでは「七人の乙女」の他「ひよこと牝鶏」とも呼ばれている。

歴史

ヘシオドスは夏の間、40日も太陽の後ろ側に隠される事に注目した。プレアデス星団が、太陽から離れ、初めて暁の東天の地平線に姿を現す天体現象は古代には重要な出来事であるとされた。ユリウス・カエサルは5月の暦にこの日を記した。

プレアデス星団に由来する事物

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関連する星雲

出典

  1. 1.0 1.1 メシエ天体ガイドM45AstroArts
  2. 沼澤茂美・脇屋奈々代『星座の事典』204p ナツメ社 2007年。ISBN 978-4-8163-4364-3

関連項目

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外部リンク

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