ファウンデーション (小説)

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テンプレート:Portalファウンデーション』(Foundation)は、アイザック・アシモフ小説。また、その作中の組織ないし国家の名称。

1942年から雑誌に発表された一群の連作を、1951年に第1シリーズとして本作にまとめた。以後のシリーズとともにアシモフの代表作となる。1巻から3巻までは特に3部作と呼ばれる。

概要

5篇の作品からなる。うち4篇が1942年と1944年の『アスタウンディング・サイエンスフィクション』誌に掲載されたもので、後にノウム・プレス社より単行本として出版される際、物語の始めに「心理歴史学者」が追加された。

1万2千年続いた銀河帝国の衰退期に、失われゆく科学技術(特に原子力文明をその中核においている。)を保存するため銀河百科事典 (Encyclopedia Galactica) を編纂するという名目で、ファウンデーション銀河系辺縁部の惑星ターミナス(テルミナス)に設立された。後に、衰退する銀河帝国に代わり第二銀河帝国を成立させる核となるという、隠された真の目的が明らかになる。ファウンデーションとは、銀河百科事典を編纂するための集団、百科事典財団の事であり、後に惑星ターミナスを首都惑星とする国家の通称としても使われるようになる。

ファウンデーションは、心理歴史学において設定されている、一定の期間を経て襲いかかる危機、いわゆるセルダン危機を乗り切ることで実力を付け、勢力を伸ばすことになる。

第2ファウンデーションは、心理歴史学者と心理操作技術を持って、トランター内部に少人数によって維持している。第1ファウンデーションは科学技術の継承を行い、第2ファウンデーションは心理操作(政治)を行う。後にミュール(突然変異によって誕生し、超能力で心理操作ができる人間)が登場し、セルダンの計画からずれてきていることが明らかになるが、第2ファウンデーションはいろいろな理由による計画からのずれを修正するために設置されていることが明らかになる。

あらすじ

数学者ハリ・セルダンは、膨大な集団の行動を予測する心理歴史学を作りあげ発展させることで、銀河帝国が近いうちに崩壊することを予言する[1]。セルダンは、帝国崩壊後に3万年続くはずの暗黒時代を、あらゆる知識を保存することで千年に縮めようとし、知識の集大成となる銀河百科事典 (Encyclopedia Galactica) を編纂するグループ「ファウンデーション」をつくった。しかし、帝国崩壊を公言し平和を乱したという罪で裁判にかけられ、グループは銀河系辺縁部にある資源の乏しい無人惑星ターミナスへ追放されることになった。病で死期をさとっていたセルダンは、己の仕事が終わったことを確信した。

50年後、惑星ターミナス近隣のアナクレオン星区が帝国からの独立を宣言する。ファウンデーションの自治が危うくなったその時、時間霊廟内でセルダンのホログラフ動画が出現する。その場に詰めかけた理事会の面々や市長に向かって、銀河の反対の端(星界の果て)にあるもう一つのファウンデーションの存在と、ファウンデーションの真の目的を語りだした。

最初の危機を乗り切ったファウンデーションは、保持している高度な科学力を使い、宗教的手段を用いて、続いて貿易を用いて徐々に勢力を伸ばしたが、悪評も増やしていた。

そんな中、コレル共和国内にてファウンデーションの宇宙船が行方不明になる事件が続き、貿易商人のホバー・マロウが偵察に送り込まれる。実態を知ったマロウはファウンデーションの実権を握り、宣戦布告したコレル共和国に対して思いも寄らぬ方法で反抗する。

登場人物

第1部・心理歴史学者

ハリ・セルダン 
心理歴史学者。トランター大学教授。心理歴史学を創立し、銀河帝国の崩壊を予言、2つのファウンデーションを設立する。後の3部作では主にファウンデーションの危機の前後にホログラフとして登場する。
ガール・ドーニック 
数学者、心理歴史学についても詳しい。セルダンに呼ばれてトランターに赴く。セルダンに直接接し「セルダン伝」を執筆する。
リンジ・チェン 
公安委員会委員長(銀河帝国の実質的支配者)。秘密聴聞会でセルダンにターミナスへの追放か死かを選択させる。

第2部・百科事典編纂者

サルヴァー・ハーディン 
ターミナス市初代市長(32歳)。創立50年後に無血クーデターを起こして理事会から実権を奪い、最初のセルダン危機を乗り切る。
ルイス・ピレンヌ博士 
銀河百科辞典第一委員会理事長。学者であり、帝国の威光を信じる。ターミナス(ファウンデーション)を銀河百科事典を発行するための学術研究機関と思いこんでいる。最初のセルダン危機が起きるまでの首長。
ヨハン・リー 
ハーディンの友人で片腕とたのむ人物(34歳)。
ジョード・ファラ 
銀河百科事典委員会理事会所属。時折核心に触れる発言をする。
アンセルム・オー・ロドリック 
独立したアナクレオン王国からの特別使節、ブルーマの副太守。ターミナスを所有地にしようと遠まわしに脅迫する。
ドーウィン卿 
銀河帝国からの使節。帝国大蔵大臣。趣味で人類起源問題を研究している。
ボー・アルーリン(アルリン) 
昔ターミナスにいた唯一の一流心理歴史学者。ハーディンとファラのセリフ中にのみ登場。
ミューラー・ホルク
論理学部の記号論理学者。ピレンヌ卿のファウンデーションに対する口約束に何の意味もないことを確認する報告を提出する。

第3部・市長

サルヴァー・ハーディン 
ターミナス市初代市長(62歳)。最初の危機から30年後、若手議員の反乱を押さえこみ、宣戦布告したアナクレオン王国を無害な状態にし、2度目の危機も乗り切った。市長室の壁に座右の銘「暴力は無能力者の最後隠れ家である」を掲げている。
セフ・サーマック 
ハーディンの若き政敵の市会議員(34歳)。
ヨハン・リー 
ハーディンの友人で片腕とたのむ人物(64歳)。
レオポルド王 
16歳の成人式寸前のアナクレオン王国の王。
ウェニス 
レオポルド王の叔父でアナクレオン王国の摂政。自分の子どもが王になるように画策している。ファウンデーションに敵意を抱く。新しい銀河帝国の創造を目指している。
レフキン公
ウェニスの子ども、ウェニス号艦長の提督。
ポリー・ヴェリソフ 
ファウンデーションの人間。アナクレオン大使兼祭司長。
テオ・アボラット
アナクレオンの高位聖職者で祭司長、艦隊旗艦ウェニス号(旧帝国の巡洋戦艦をファウンデーションが修理してアナクレオンに進呈した)の首席従軍司祭。ファウンデーションに帰依している。

第4部・貿易商人

リマー・ポニェッツ 
貿易商人。アスコーン国の参議ファールを罠にかけて大儲けする。
エスケル・ゴロウ 
ファウンデーションのエージェント。アスコーンに潜入するが、捕らえられる。
ファール 
アスコーン国の若い参議。ポニェッツが売り込んだ「金属を黄金に変える機械」により大量の黄金を入手する。

第5部・豪商

ホバー・マロウ 
貿易商人。ターミナス市長兼祭司長となってセルダン危機を乗り切る。
ジョイレン・サット 
市長秘書で真の実力者。マロウをコレル共和国に送り込むが、後に実権をマロウに奪われる。
ジェイム・トゥワー 
老商人。マロウと共にコレル共和国に赴く。
アンカー・ジェイル 
マロウの友人で片腕とたのむ人物。
アスパー・アーゴ 
コレル共和国主席で独裁者。マロウと貿易を交わした後ファウンデーションと戦争を行う。
オナム・バー 
元シェウナ貴族。マロウの訪問を受け助言をする。

書誌情報

関連項目

脚注

  1. 他の作家による続編によれば、銀河帝国を陰から動かしているサイボーグが持つ数千年間の資料をすべて受け継ぎ、心理歴史学を精密な学問とすることに成功した。
  2. 本来の題名は①(まる1)だが、機種依存文字のためここでは(1)と表記している


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