ヒステリー

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テンプレート:出典の明記 ヒステリーテンプレート:Lang-de, テンプレート:Lang-en, テンプレート:Lang-el)とは、主に以下の意味で使われている。

  1. かつての精神医学において、転換症状と解離症状を主とする精神疾患群を指していた語。
  2. 転じて、一般の人がヒステリーと言う場合、単に短気であることや、興奮・激情により感情が易変し、コントロールが出来なくなる様子のことをさすことが多い。韓国にも、この様子に類似した火病と言われる精神疾患群が存在する。どちらも日本国内においては、本来の意味とは無関係に使用される場合が多く、しばしば蔑視のニュアンスを含む。略してヒスともいい(例:ヒスを起こす)、人物に対して「ヒステリー持ち」などという表現がされる場合は、この様な状態にしばしば陥る人物を指すことが多い。
  3. また、人々が、社会集団に対し、社会的緊張状態のもと、通常の状態では論理的・倫理的に説明のつかないような行動をとる、集団パニック状態がみられることがあり、しばしば集団ヒステリーとよばれる。モラル・パニックも参照。

以下は精神医学用語として使われてきたヒステリーという語についての記述である。後述するように、現代の精神医学ではヒステリーの語は使われなくなっている。

ヒステリーは神経症の一型で、器質的なものではなく、機能的な疾病である。本症は心因性反応型で、外的の事情や刺激に対する不快感動の反応として精神的あるいは身体的反応が起こるのであるが、いわゆる神経衰弱様反応型のように抑制的でも内向的でもなく、感情が強調されていて理知的色彩が乏しく、神経衰弱型よりも症状が一般に粗大で激しいものが多い。

ヒステリーの語は、女性に特有の疾患との誤解から子宮に原因があると誤って信じられていたため、古典ギリシア語で「子宮」を意味する ὑστέρα (hystéra) から名づけられ、ヒステリーの原因は19世紀初頭まで「女性の骨盤内鬱血によるもの」と医師たちの間で長らく定説であった。19世紀後半にシャルコー催眠術による治療を経て、フロイトにより精神分析的研究が行われ無意識への抑圧などの考察がなされた。その後しばらくヒステリーの治療は精神分析を主体としたものが主流であった。しかし1990年代より、精神疾患を原因で分類するのではなく症状で分類する方法が主体になり、1994年に発表された精神障害の診断と統計の手引き第四版(DSM-IV)では、この言葉は消失し、解離性障害身体表現性障害に分類された。ICD10では、解離性[転換性]障害に分類される。この経緯については神経症と類似である。

治療と医学的見解

1563年オランダの医師ピーテル・ファン・フォーレスト(1512-97)は、昔から伝わるヒステリーなどを含めた「女性の病治療」に賛同し「産婆の手技による性器への直接の刺激」が効果的だと医学的所見を纏め「貞淑な未亡人や修道女に有効な効果がみられる」と記しており「売春婦や既婚女性はこの施術を行うより配偶者(異性)との性行為が効果的である」との見解を述べている。

フランスの医師アンリ・スクテトンは、若干の圧がかかった水流で女性器を刺激する「水力打診器」の有効性を認めており、「この器具を用いた診療で患者は最初、若干の痛みに驚くものの、それらがもたらす振動と肉体的反応によって次第に落ち着きを取り戻し、暫くすると皮膚が火照り、それら複合的要因によって患者に快感がもたらされる。時間にして4~5分、患者は足取り軽く気分良く帰宅の途に着く」と1843年の文書に記している。

このような経緯に加えて、「ヒステリー」が一般用語として雑多な意味に用いられていることから、現在の精神医学では基本的には「ヒステリー」という用語を使用していない

かつてヒステリーに分類されていた精神疾患についての詳しい情報は、解離性障害身体表現性障害の項を参照。

関連項目

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