パラオの国旗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
移動先: 案内、 検索

テンプレート:Infobox パラオの国旗は、パラオ共和国（Beluu er a Belau）の国旗。中央のやや旗竿寄り[1]に金黄色の円を配し、明るい青を背景色としたものである。

概要

黄金色の円は月を表し、パラオ人の機が熟し独立国となったことを表す。また月はパラオの人々にとって収穫や自然の循環、年中行事に重要な役割を果たしている。明るい青はパラオが広大な太平洋に位置することとともに、過去の異国の統治による影からの脱出を表す[2]。

このデザインは、1979年に国旗を決めるコンテストで優勝したジョン・ブラウ・スキーボング（John Blau Skebong、1935年生まれ・現アルモノグイ州知事の実兄）によるもので[3]、ンギラクラン・マルソル（Ngiraklang Malsol）を委員長とする国旗選定の為の特別委員会によって20作品ほど（70作品から100作品ほどあったという説もある）の候補の中から選ばれ[4]、1980年に議会で承認された。

日本の国旗との関連

歴史的にパラオはアメリカ合衆国による統治の前は国際連盟による日本の委任統治領下にあり、現在も親日的な国家であることや、国民の中から公募され、選出されたデザインは日章旗と似ていることなどから国旗のデザインが日章旗を元にしているという説が生まれ、広まった。

この説では、月は日章旗の太陽と対をなし友好を示すものであり、月が中心より若干左に寄っているのははためく時に中心に見えるように、併せて日本に対する畏敬の念の表れであるとしている[5][6][7][8]。

これらはあくまで非公式の巷説であり、パラオ政府内務省による国旗についての文書ではデザインの類似性についての記載はない[9]。

説の広まった経緯

この説の起源は不明であるが、1982年にパラオのペリリュー島に日本の右翼団体日本青年社の傘下組織である「清流社」がペリリュー神社を「創建」した際に賛同資金集めのために出版された冊子「ペリリュー神社奉賛会設立趣意書」[10]）には既にこの説が記されている。名越二荒之助は展転社の協力を得て「日の丸三兄弟」との題での各地での講演や、チャンネル桜で自ら主演する番組等を通じて自説の普及に努めた。その際、パラオの国旗の由来が日章旗の模倣であるのかどうかをパラオの人に直接尋ねるのは失礼に当たるから遠慮するようにとの趣旨の発言を行っている[11]。

それをオリジナルとして引用する形で、名越は著作「世界に生きる日本の心」の中で、パラオ国旗・バングラデシュ国旗を日章旗に由来する「日の丸三兄弟」として紹介した[12]。さらに、1990年代後半からは名越の弟子である伊勢雅臣（布瀬雅義）が主宰発行するメールマガジン「国際派日本人養成講座」を通じて、この説はインターネットを中心に一気に世間に広まっていった。この他には西牟田靖の著作『僕の見た「大日本帝国」』[13]や、世界の国旗に関する辞典、図鑑などでもこの説が紹介されている[14][15][16]。

テレビメディアでは、日本テレビ『世界一受けたい授業』、大阪朝日放送『ビーバップ!ハイヒール』などでこの説が紹介されている。またこの説と同趣旨のコメントをチャンネル桜「報道ワイド日本」（平成19年6月12日号）においてNPO法人「日本パラオ協会」理事長の黒岩徹が語っているが、その根拠として名越の名前を挙げている。

さらに、このパラオの国旗は日章旗が由来であるとの説は藤岡信勝が代表を務める自由主義史観研究会や藤岡と交流のあった向山洋一をリーダーとするTOSSのメンバーにより一部の小中学校の社会や道徳の授業では当然のこととして授業に取り入れられている[17][18][19][20]。

関係者へのインタビュー

クニオ・ナカムラ

1999年に東京財団の研究者である歌川令三[21]はクニオ・ナカムラ大統領（在任1993年 - 2001年）と懇談の折に直接真相をただしたが、大統領は苦笑して肯定も否定もしなかった[22]。結局、歌川はパラオ国旗と日の丸の関係について「よくわからない」としている。 テンプレート:Quotation

ジョン・ブラウ・スキーボング

2010年10月に元埼玉県立大学教授で国旗に詳しい吹浦忠正（現ユーラシア21研究所理事長）は確認のためパラオに出向き、国旗をデザインしたジョン・ブラウ・スキーボングにインタビューを行った。吹浦自身は上の説を信用していた。

吹浦が「パラオの国旗が日の丸の模倣である」「日の丸の太陽に遠慮して月にした」「日の丸に遠慮して月を中心よりずらした配置とした」との三点について質問した所、スキーボングは「全部違うね。私はもちろん日の丸を知っているが、特別にそれを意識してデザインしたわけではない。日本は日本、パラオはパラオだ。」とし、更に「パラオの美しい月を表現したもの」とした[23]。

吹浦のインタビュー結果はチャンネル桜で2010年10月29日に放送された番組内でも発表された。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister

テンプレート:オセアニアの題材
  1. ↑ 国旗をデザインしたジョン・ブラウ・スキーボングによると、10分の1寄せているという。パラオ国旗の作者との対話より。
  2. ↑ 「History of the National Flag（PDF）」パラオ共和国憲法制定会議のウェブサイト"Second Constitutional Convention - 2005"
  3. ↑ The Palau National Flag was the winning entrant by Mr. Blau Skebong in the 1979 ROP Flag Contest and was adopted by the Olbiil Era Kelulau through Public Law No. 7-6-2 on September 1980.（要旨:パラオ国旗のデザインは1979年に行われたコンテストによる）Flags of The World
  4. ↑ 「パラオ国旗の作者との対話」吹浦ブログ
  5. ↑ 名越二荒之助「世界に生きる日本の心」、展転社、1987年
  6. ↑ 藤岡信勝「国立二小問題と国旗指導のヒント」『正論』2000年9月号、40ページ
  7. ↑ 伊勢雅臣の自由主義史観研究会での主張。NPO南洋交流協会「パラオ共和国の歴史」
  8. ↑ 「NPO南洋交流協会サイト」（NPO南洋交流協会理事長の滑川裕二は日本青年社副会長）
  9. ↑ テンプレート:Cite book
  10. ↑ 名越本の引用では副題のペリリュー神社再建由来記として知られる
  11. ↑ 2004年8月16日放送・桜塾講座-世界に開かれた日本近現代1・日の丸三兄弟テンプレート:出典無効
  12. ↑ 名越二荒之助「世界に生きる日本の心」、展転社、1987年
  13. ↑ 西牟田靖『僕の見た「大日本帝国」』情報センター出版局、2005年2月、ISBN 4795843023。
  14. ↑ 『よくわかる 国旗と国名由来図典』辻原康夫著、出窓社、2004年。ISBN 9784931178502
  15. ↑ 『世界の国旗ビジュアル大事典』吹浦忠正著、学習研究社、2007年。ISBN 9784054031982
  16. ↑ 「株式会社 更五 公式サイト」（国旗の製作・販売をしている明治32年創業の会社）
  17. ↑ 「授業報告 国旗・国歌の意義を教える（上）服部 剛（横浜市公立中学校教諭）」
  18. ↑ 「日本とパラオ共和国の国旗TOSS SANJO 小林 義典」
  19. ↑ 「「日本とパラオ共和国の国旗」授業を終えて～事実という最高の資料「パラオ共和国」～TOSS加賀 福岡美智雪」
  20. ↑ 「日本人の気概、日本人の素晴らしさを伝える社会科授業世界で最も親日的な国、パラオ共和国 大恵信昭（TOSS岡山サークルMAK）」
  21. ↑ 歌川は元毎日新聞記者、同取締役編集局長ののち1988年退社。日本財団（日本船舶振興会）常務理事を経て東京財団理事、多摩大学客員教授。
  22. ↑ （『財界』1999年12月7日号。「やしの実大学ミクロネシア講座パラオ共和国紀行」に転載）
  23. ↑ 「パラオ国旗の作者との対話」吹浦ブログ
「http://wikippe.e-do-match.com/index.php?title=パラオの国旗&oldid=15120」から取得