パソコン雑誌

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パソコン雑誌(パソコンざっし)とは、パソコンに関する様々な情報を提供する雑誌である。週刊、月二回刊、月刊など様々な刊行形態を持つ。内容も、入門者向けやマニア向け、専門家向けなどに分かれて様々なものがある。

日本におけるパソコン雑誌

黎明期

パソコン雑誌の黎明期としては星正明の『I/O』(工学社)、そこからスピンアウトした西和彦が起こした『月刊アスキー』(アスキー出版)から始まり、『月刊マイコン』(電波新聞社)、『RAM』(廣済堂)などの総合誌が出揃った。 少し遅れて、主としてビジネス利用向けの『日経パソコン』(日経BP社)、プログラム投稿に重点を置いた『マイコンBASICマガジン』(電波新聞社)、『PiO』(工学社)なども創刊された。

日経パソコンを除くと、この時期の雑誌はハードウェアに関する記事、プログラムのリスト、アルゴリズムの研究などが紙面の中心であった。市販ソフトウェアはまだまだその数は少なく、紹介記事もそれほど多くはなかった。読者は雑誌に掲載されたプログラムリストやダンプデータを直接打ち込んで、ゲームなどを楽しむことが行われた。また掲載プログラムをカセットテープ通信販売するサービスも行われ、人気を博した。

発展期

パソコンを発売するメーカーが急速に増えた頃から、パソコン雑誌の発行部数が伸び、広告の増加によって分厚くなっていった。また、当時日本国内のパソコンは、各メーカー毎に独自のアーキテクチャであったので、日本ソフトバンクによって『Oh!PC』『Oh!MZ』などのメーカー別雑誌が発行された。

この頃には、ソフトウェアは自分で開発したり、プログラムリストを打ち込んだりするものから、徐々に市販品を購入したり、フリーソフトを導入したりするものとなってきた。パソコン雑誌はこのようなソフトウェアの紹介をしたり、フリーソフトを収録したフロッピーディスクを綴じ込み付録とするようになった。また、ソフトウェア開発者を主な対象とする雑誌(C Magazine(ソフトバンク)、Dr.Dobb's Journalなど)の創刊はこの頃である。

1995年Windows 95発売をきっかけにして、パソコンの利用者層の裾野が大きく広がることになった。初心者を対象に平易な表記を心がけた雑誌が登場するなど、パソコン雑誌の最盛期を迎える。

Windows 95によって、手軽にネットへの接続ができるようになったことにより、パソコン通信情報誌『月刊パソコン通信』(エーアイ出版)、『 Networker Magazine』→『Networks』(アスキー)、『 ネットピア』(学習研究社)や、インターネット情報誌『Internet Magazine』(インプレス)、『OPENDOORS』(朝日新聞社)などが創刊された。雑誌の付録も、フロッピーディスクから容量の多いCD-ROMに変わった。

衰退期

皮肉にもインターネットの普及は、パソコンに関する情報を得る手段をパソコン雑誌から奪い取ることになった。雑誌に載るような情報の多くは、インターネット上でより早く無料で入手できるようになり、パソコン雑誌の役割は一部の読者を除きほとんど失われた。 そのため、ただでさえ不況による雑誌の売上げが激減している中で、多くのパソコン雑誌はますます読者を減らすことになった。

また、不況の影響により企業からの広告の出稿が減り、読者が減ることでさらに広告が減るという悪循環に陥っていった。 パソコン雑誌に限らず、多くの雑誌は雑誌そのものによる売上げ部数と企業からの広告出稿によって経営を行っているため、この状況下では経営が成り立たず、多くのパソコン雑誌が休刊となった。

この他、雑誌巻末部分にて積極的に広告を出していたパソコンショップが規模の大小問わず大型家電量販店による淘汰に呑まれ、業界自体のレガシービジネス化が進んだ事による広告料収入の激減も衰退原因の一つに挙げられる。

また、ブロードバンド時代の到来により、付録CD-ROMによるソフトウェアの配布についても、時間やコストを掛けずに入手可能となったことにより、ナローバンド時代ほどの需要を見いだせなくなり、衰退に拍車を掛けた。

Windows95登場に端を発した「パソコンマニアでは無い普通のパソコン利用者」が消費者層に大きく食い込んできた事により、読者に占めるエンドユーザーの割合が激増し、プログラミング中心の雑誌も存在が埋没、やがて出版社から見切られて休刊・廃刊が相次いだ。

また、ゲームソフト関連のマニア、いわゆるゲーマー傾向の強い読者層についても、パソコンOSのGUI化とほぼ同時進行で飛躍的に性能・機能が向上・発展してきた家庭用ゲーム機、いわゆるコンシューマ・ゲーム機に主導権が移っていった事で、必ずしもパソコン雑誌にて無難に売り上げを稼げる要素では無くなり、ゲームソフト業界地図の再編がもたらした開発規模の大型化・ゲームソフトの大作化で(パソコン用、家庭ゲーム機用問わず)新作の登場サイクルも伸び、必然的に商品数の少なくなったソフトを何度も記事に採り上げる事で、ただでさえ少なくなっていたパソコンゲーマー読者を飽きさせ易い状況が自然形成されてしまった。

その影響から、パソコン雑誌を中心とする出版社は経営難となり、エクスメディアなどのように経営破綻や、アスキー・メディアワークスのように救済合併が進んでいる。

雑誌における傾向

Windows 95の発売により、パソコンは一般家庭に広がり、パソコン雑誌は、内容、読者とも、多様な広がりを見せるようになった。いわゆる初心者向け、オフィスワークを念頭においたMS-Officeの特集を中心としたもの、ソフトウェア開発者向けにプログラミングのノウハウを中心としたもの、システム構築を扱ったもの、新発売のハード・ソフトをいち早く紹介してそれらを読者が購入する際の情報源となるもの、果てはオンラインソフトウェアを大量に収録して購買に結びつけるものもある。また、扱うOSもWindowsから、MacintoshLinuxなど、Windowsでもコンシューマー向けのバージョンから企業向けのサーバ用バージョンのものまで、利用者のニーズにあった雑誌が作られてきた。また、一部雑誌は各種ソフトウェアを収録したCD-ROM、あるいはDVD-ROMをつける雑誌もあり、これが読者の購買意欲を煽ると共に、ソフトウェアの流通を促してきた。ただし、雑誌に固い不燃物のメディアが付属することによって、手に持ちにくい、捨てるのが面倒などの苦情もあった。

誌名の傾向

黎明期の4誌は全て専門用語からネーミングされ、発展期には、○○FAN・○○Magazine・○○USER(○○は機種・OS名)という誌名が主流であった。しかしWindows95の発売以降はWindowsのみを扱う雑誌が多くなったため、従来の命名方法にとらわれない独自の誌名をつけることが多い。

雑誌とハードウェア、ソフトウェア企業

雑誌の多くは、ハードウェア、ソフトウェアの新製品の評価、特集コーナーを持つ。雑誌によっては商品の名称や型番、仕様やスペックといった客観的事実を確認するために原稿を開発元、販売元に事前に見せることがあるが、広告との関係も相俟って、辛い評価をだせない雑誌もある。これに関しては「パソコン批評」という雑誌が広告を取らず、評価対象となる製品も全て購入して評価するなどしてきたが、結局これも志半ばで倒れている。また、前出のように、癒着が指摘される場面も少なからずあり、あからさまな場合は「提灯記事」などと揶揄される場合もある。

このように、パソコン雑誌における評価記事は鵜呑みに出来ない側面もあるが、これらのコーナーが製品の紹介を兼ねていることもあわせて、今後とも、雑誌と企業だけでなく、利用者(消費者)もあわせた、良好な関係を目指していく必要もある。

速報性、情報量

インターネットの普及により、雑誌や新聞などの既存の媒体は、速報性が徐々にインターネット上のニュースサイトに奪われるようになった。IT業界に関しても例外でなく、新しい製品発表はIT系ニュースサイトが当日に掲載するのが当たり前になった。当然のことながら、既存の雑誌は既にその情報が十分出回った後での書店での販売となり、記事の新規性がどんどんと弱まることになっていった。また、情報量に関しても、無限大ともいえるリソースを持つネット上のニュースサイトには太刀打ちできなくなりつつある。各雑誌は次なる展開を模索しているが、総じて明確な打開策が打てていないのが現状のようである。

関連項目

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