ヌル (架空の生物)

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テンプレート:複数の問題 ヌルは、畑正憲が1969年に発表した小説家デビュー作であるジュブナイルSF『ゼロの怪物ヌル』(ISBN 4797491957、のち『海からきたチフス』)で創造した架空の深海生物。食べるとおいしい。

主人公の木谷ケン少年とその家族は、夏休みの避暑先大島で、謎の「白いかたまり」の大量発生・魚や貝類の消滅など、海に発生している異変に巻き込まれる。ケンの兄の分析により、この白いかたまりは細胞構造を全く持たない新種の生物と判定され、ヌル(独:null。0)と命名された。だが、この時点では誰もヌルの能力に気づくことはなかった。

ヌルは日光が届かず酸素も限られた深海において発達した、食物連鎖の中で捕食されることにより生命(種)の維持を図る、次のような特性をもつコピー生物として設定されている。

特徴

主として蛋白質より成り、分や脂肪は微量。基礎代謝率は高く、酸素の豊富な地上では極めて大量のエネルギーを必要とする。他の生物に食べられた場合、その生物の遺伝子をコピーして体外に出てくる。一時的ではあるがクローン生物と似ている。

コピー後水分を補給すると、外観はオリジナルの生物そっくりになるが、細胞膜はもっていない。このため、注射針を射すなどの刺激で元のかたまりに戻る。エネルギーを消費しつくした場合にも、元のかたまりに戻る。知識などオリジナルの生物の後天的な能力もコピーしている。人間のコピーとなったヌルは、人語を解し金の利用価値を知っている。

ヌルを人間が生食した場合、次のような症状があらわれる。

発熱など、発疹チフスに酷似した症状が現れる(新題『海から―』はこれにちなむ)が、3日程度で熱は下がる(この頃、コピーを終えたヌルが体内から抜け出す)。ヌルが抜け出した後の患者からは、ATPが根こそぎ奪われている。