サン人

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サン人(サンじん、テンプレート:En)は、南部アフリカカラハリ砂漠に住む狩猟採集民族である。砂漠に住む狩猟採集民族は大変少なく現在ではこのサン人ぐらいしかいない。

かつて3000~2000年前くらいまでは、南部アフリカから東アフリカにかけて広く分布していた。しかし、バントゥー系の人々や白人の進出により激減し、現在はカラハリ砂漠に残っているだけである。

概要

人口は約10万人[1]。言語はコイサン語族吸着音あるいはクリック音(舌打ちをするようにして発音される音)とよばれる類型に分類される非常に多様な音を普通の子音として使用する言語である。コイ人とは身体特性、言語文化など著しく類似している。基本的に狩猟採集で生計をたてているのがサン人、牧畜で生計を立てているのがコイ人と区別する。

呼称

かつてオランダ人により テンプレート:Nl(藪の民)と名づけられ、英訳されブッシュマン(テンプレート:En)となったが、侮蔑を含む呼び方であるとされる。しかし研究者やサン人自身の中には、「カラハリの叢林に住む自由人」という意味を込めてブッシュマンと呼ぶ人もいる。

サン (テンプレート:En) またはサーン (テンプレート:En) は、コイコイ人テンプレート:仮リンクによる呼び名である。これらは通性複数だが、男性複数のサンクア(サンカ) (テンプレート:En)・ソアクア (テンプレート:En)・ソンクア (テンプレート:En) でも呼ばれる。これらは英語オランダ語では17世紀ごろまで使われていた古い呼び名で、18世紀にブッシュマンに取って代わられた。しかし1970年代から政治的正しさによりブッシュマン(この呼び名には性別問題もある)が忌避されると、再び「サン」が使われ始めた。 ツワナ語起源のマサルワ (テンプレート:En) またはバサルワ[1](テンプレート:En) でも呼ばれ、サン同様、1970年代からブッシュマンに代わりバサルワが使われ始めた。

北部の住民はクン (テンプレート:En) とも呼ばれる。

身体的特徴

平均身長は男子で約155cmと低身長であるものの身長150cm以下のピグミーではない。毛髪は極端に縮れた毛で、内部に多量の脂肪組織の蓄積のために後方に突出している臀部を持っている。皮膚は黄褐色でしわが多く、突出した頬骨をもつ。人種5大区分ではカポイドとされる。アフリカの最古の住民であると考えられている。

文化

社会

親族関係に基づく40–50人単位ぐらいの数家族の集団が集まったり離れたりしながら移動生活をする。一ヶ所のところに数日から一ヶ月程度しかいない。その間の住居は、半球状の草葺き小屋を簡単に作って住む。

集団を取りまとめるリーダーとなる存在はなく、職業や身分、地位の差もない。男が狩猟をして、女が採集するといったような性別や年齢による役割の違いはあるものの、社会を築いている構成員は対等な関係である。

親族の体系は性と世代によって二分される。父の兄弟を父、母の姉妹を母と呼ぶ。冠婚葬祭成人式などの通過儀礼は簡単にすまし、派手な祭りなどは行わない。

宗教

無数の神々の頂点に立つ天空神で創造神であるカアング、病気や死の原因となる悪霊を信じている。しかし統一された体系的な宗教は持っていない。

近代化の影響

1990年代以降、世界的なグローバリゼーションボツワナ政府の福祉向上、動植物保護、さらには鉱物資源開発を名目とした近代化政策の影響により、中央カラハリ動物保護区などの保護区域外への定住化が進むなど、サン人の生活は大きく変わりつつある[1]

しかし、サン人の多くは貨幣経済生活になじめず、失業、伝統文化の消失などが社会問題化している[1]

保護区域内においても、自生するフーディアなどの薬用植物の採取や、オリックスなどの動物の狩猟が違法とされ逮捕される事例が相次いでいる[1]。フーディア製品の商品化にユニリーバ社などが取り組み高い利益をあげているが、地元への還元はなく社会問題になっている。

サン人をテーマにした作品

脚注

テンプレート:Reflist

テンプレート:Sister
  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 中西賢司「ブッシュマン逮捕続々」『読売新聞』2009年10月3日付朝刊、13版、8面。