ガードレール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ファイル:GuardRail.jpg
袖付波板とパイプの複合型、後方に波板の裏面

ガードレール英語:guardrail)は、道路路肩歩道との境界、中央分離帯などに、設けられる防護柵であり、車両用防護柵の一つ。ビーム型防護柵たわみ性防護柵として取扱われる。

概要

ガードレールは何らかの理由で、進行方向を誤った車両が路外へはみ出して走行しようとした場合に逸脱することを防ぎ、車両の進行方向を誘導するとともに、ある程度の衝撃を吸収し、車両そのものや車両乗員、歩行者あるいは道路沿いの建造物や街路樹を保護し、歩行者・自転車の転落やみだりな横断を抑制する目的で設けられる(以前は、副次的に運転者の視線誘導の目的も設置基準にあげられていた)。一般的には、道路に埋め込まれた支柱にビーム(波型の鋼板)が取り付けられた構造をしている。高さは場所によるが、80cm前後が一般的である。

  • 交差点や、横断歩道などでの切れ目には、波板ではなく歩道側に丸く反った袖レール袖ビームともいう)が取り付けられる。
  • 日本でガードレールは1958年神奈川県箱根町宮ノ下交差点付近に初めて設置された。
ファイル:R490-Warning.jpg
黄色のガードレールが設置された山口県の道路(国道490号)
  • 2004年以前に設置されたガードレールの標準色は白であるが、高速道路国道などでは灰色のものや銀色(亜鉛メッキを施しただけのもの)がある。現在は良好な景観形成に配慮した適切な色彩を基本としている。山口県道には、黄色(ナツミカン色)のガードレールがある。1963年(昭和38年)、第18回国民体育大会が開催されるにあたって、当時の橋本正之山口県知事のもと、ガードレールを山口県特産のナツミカンの色に塗り替えることが提案されたものといわれ、現在でも山口県管理の道路(県道及び一部の国道)は黄色のガードレールが標準となっている。
  • 景観への配慮や間伐材の有効活用を目的とした木製のガードレールもある。長野県では自治体としては全国で初めて、木製ガードレールの開発に着手した[1]
  • 日本でのガードレールの設置にあたっては国土交通省道路局の方針を定めた「防護柵の設置基準」[2]で、設置される場所、目的などに応じてSS種(衝撃に対する強度650kJ以上)~C種(同45kJ以上)などの強度種別が決められており、道路区分(高速道路とそれ以外)、設計速度と設置区間(一般区間、重大な被害が発生するおそれのある区間、新幹線などと交差または近接する区間)に応じて設置基準が定められている。例えば、高速道路の一般区間にはA種が、主要国道などの一般道路(設計速度60km/h)の一般区間にはB種が用いられている。

他のビーム型防護柵

  • 支柱に取付けるビームにパイプを使用したガードパイプ。ガードパイプには、車両の逸脱防止を目的としたものと歩行者の横断防止を目的としたものがあり、後者は車両用と比較して強度は弱い。
  • 支柱間にワイヤーロープを張ったガードケーブル。展望性に優れており、山間部などでは、着雪を防ぐ目的としても用いられる。
  • ビームにボックスビーム(角形鋼管)を用いたボックスビーム。主に支柱の天端間で連結するため幅が狭い、衝突時の柔軟性が良い、視線誘導性と比較的展望が良い特徴がある。
  • 防護柵につる性の植物をからませたロードトレリス。交通安全対策と緑化を兼ねたものであるが、交差点付近では見通しが悪くなるため使用されない。

金属片問題

2005年5月28日埼玉県行田市で自転車に乗った中学生が、ガードレールの継ぎ目に刺さっていた鋭い三角形の金属片に触れてケガをする事故が起こった。

悪質なイタズラ説や人為説などが浮上する騒動となったが、その後の調査では、同年6月3日時点で全都道府県の4200か所以上にガードレールの継ぎ目に鋭利な金属片が刺さっていたことが判明し、それを受けた国土交通省の緊急点検結果報告では、6月8日時点で3万7,893か所で同様のものが確認された。

その後、国土交通省で専門家による「防護柵への付着金属片調査委員会」を発足させて詳しい原因を調査した結果、2005年7月29日に「ほぼ自動車の接触事故が原因」とする最終報告書が出された[3]

調査委員会は今後の安全対策として、道路管理者が歩行者の視点に立った道路点検などを検討するよう提言し、金属片が付着しにくい防護柵の開発を目指すべきと委員会が設けられた。これを受け、基準の解説書の改訂版が取りまとめられた[2]

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Asbox
  1. 長野県公式ホームページ 信州型木製 ガードレール
  2. 2.0 2.1 社団法人日本道路協会発行 防護柵の設置基準・同解説 平成16年3月31日改訂版(景観形成を配慮するための改訂版)。後に安全性を向上させるため改訂版が平成20年1月31日に発行。
  3. 防護柵への付着金属片調査委員会