カタラーゼ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Enzyme カタラーゼ(catalase)は、過酸化水素不均化して酸素に変える反応を触媒する酵素ヘムタンパク質の一種であり、プロトヘムを含んでいる。細胞内のペルオキシソームに存在し、過酸化水素を使って酸化・解毒をおこなう。

過酸化水素の発見者であるフランスの化学者ルイ・テナール(1818年に発見)は、カタラーゼとして知られるある種の物質が、過酸化水素の分解速度を高めることに気付いた。この物質をカタラーゼと命名したのはドイツの農業化学者O.レーブである[1]。カタラーゼを単離し、結晶化したのは米国の化学者ジェームズ・サムナー、カタラーゼのアミノ酸配列を決定したのは、Walter A. Schroederらである。

毎秒当たりの代謝回転数は全酵素のなかでも最も高く、4000万に達する[2]ヒトの場合、カタラーゼは4つのサブユニットで構成されており、各サブユニットは526のアミノ酸から成る[3]分子量は約24万。ヘムマンガン補因子として用いる。

ヒトを始めとして肝臓に多く存在するため、肝臓をオキシドールにつけると酸素が発生する。ヒトの場合、このタンパク質をコードしている遺伝子はCATで第11染色体のp13に存在する。また、この遺伝子が欠損すると無カタラーゼ症を発症する。

至適pHは約7.0、至適温度は37℃。以下の反応の活性化エネルギーを下げることで、触媒として機能する。

2 H2O2 → O2 + 2 H2O

過酸化水素のほか、ホルムアルデヒドギ酸基質として触媒できる。重金属の陽イオンやシアン化物は阻害因子として働く。

高温のガスを噴射するミイデラゴミムシの能力は、カタラーゼの高い代謝回転数に依存している。 また、細菌がこの酵素をもつか否かは、細菌を同定する上で非常に重要であり、それはカタラーゼテストによって判別できる。

出典

テンプレート:Reflist
  1. "A NEW ENZYME OF GENERAL OCCURRENCE IN ORGANISMIS",Science 4 May 1900: Vol. 11 no. 279 pp. 701-702
  2. カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学、David Sadavaほか、講談社、2010年、p.18.
  3. A Hirono et al."A Novel Human Catalase Mutation (358 T6del) Causing Japanese-type Acatalasemia," Blood Cells, Molecules, and Diseases (1995) 21(23) Dec 15: 232-234 (pdf)