アン・オブ・クレーヴズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:基礎情報 皇族・貴族 テンプレート:Sister アン・オブ・クレーヴズテンプレート:Lang-en, 1515年9月22日 - 1557年7月17日)は、イングランドヘンリー8世の4番目の王妃(1540年結婚、同年離婚)。ドイツ語名はアンナ・フォン・クレーフェAnna von Kleve)。

生涯

ユーリヒ=クレーフェ=ベルク公ヨハン3世の娘として生まれた。ヘンリー8世にプロテスタントの王妃をと希望していたヘンリー8世の家臣トマス・クロムウェルらの意向で王妃の候補に選ばれ、イングランドへ嫁ぐことになった。

クロムウェルから前もって見合い用のアンナの肖像画を見せられたヘンリー8世は、その肖像画を一目で気に入り、若い使い走りの少年の姿に変装してこっそり彼女の姿を見に行ったが、ヘンリーは実際のアンナの顔を見て、「絵に描いてある女とは違う!」と激怒した。一方のアンナも、ヘンリー8世の正体を知らなかったため、馴れ馴れしい中年男性に困惑したとも、無礼だと怒ったとも伝えられる。この肖像画は、クロムウェルが宮廷画家ハンス・ホルバインに依頼して描かせたものであったが、実際のアンナの姿は肖像画に描かれていたほど美人でなかったと伝わる。クロムウェルはこの責任を取らされて後にロンドン塔斬首刑に処され、ホルバインは宮廷画家の身分を剥奪されて追放処分を受けることになった。

アンはわずか半年で王から離縁され、「王の妹」(the King's Beloved Sister)という称号と所領(アン・ブーリンの邸宅の一つヒーヴァー城もその中に含まれる)、年金を与えられ、ロンドン市内のベイナーズ城で余生を送った。離婚の理由としては、かつてロレーヌ公フランソワ1世と交わした婚約をきちんと解消していなかったことが選ばれた。しかし、彼女はその後も王室の行事のたびに、国王やその子どもたちへの気前の良いプレゼントを持って現れており、周囲からは非常に好かれていたようである。

ヘンリー8世が学識にあふれ、音楽やダンスを好んだのに対し、(故国の女性教育を反映して)アンはラインラントのドイツ語しか話すことも書くこともできず、音楽やダンスの教育も受けていなかった。ラインラントの貴族女性の必須教育は刺繍などだったのである。しかし、イングランドに住むと決めて以降は英語に適応し、さほど不自由もしなかったようである。ただし小説などではよく、ドイツ語式にWをVと発音する人物と表現されている。

ヘンリー8世の6人の王妃の中でアンは最後まで存命していたが、ルター派のプロテスタントだったため、カトリックミサへの出席を迫るメアリー1世の時代には、のちのエリザベス1世と「宮廷でミサに出席しない」2人組となった。彼女はエリザベス1世の即位前に没した。

備考

  • 渡辺みどり『英国王室物語』では、6人の王妃の中で最も幸せな生涯を送った人物としている。彼女はヘンリー8世から離縁された後もイングランドの王族として扱われ、金銭的にも不自由せず、この時代の貴族の義務である政略結婚を再び行うことなく、好きなことをして余生を送れた、というのが理由である。他に、ヘンリー8世の王妃の中で一番後まで生きていたという点もこれに加えることができる。
  • ダイクストラ好子『王妃の闘い』では、アンは実は美人だったが、最初に会った際の経緯からヘンリー8世が、アンと会うたびに自分が年を取ったことを思い出すので離婚したとしている。テンプレート:独自研究範囲
  • テンプレート:要出典範囲
  • デイヴィッド・スターキーの "Six Wives" ではクレーフェ公との書簡を元に、キャサリン・ハワードの処刑後、アンがもう一度王妃に戻りたがっていたことが記されている。
  • 石井美樹子『エリザベス 華麗なる孤独』の後書きによると、エリザベス1世について執筆中、ケンブリッジ大学図書館で見つけた書類の中に、ヘンリー8世の侍医がアンとの新婚初夜の翌朝「いかがでしたか」と聞くとラテン語で「臭くて眠れなかった」とヘンリーが答えたと書いてあった。

参考文献

  • 石井美樹子『エリザベス 華麗なる孤独』
  • ダイクストラ好子『王妃の闘い』
  • 渡辺みどり『英国王室物語』
  • Antonia Fraser "The six wives of Henry VIII", London: Phoenix, 1992, ISBN 1-84212-633-4
  • Margaret Simpson "Elizabeth I and her Conquests", London: Scholastic, 2001, ISBN 0-439-95575-0
  • デイヴィッド・スターキー(David Starkey) "Six Wives : Queens of Henry VIII"
  • Alison Weir "The six wives of Henry VIII"

登場作品

小説