通級
テンプレート:Amboxテンプレート:DMC 通級による指導(つうきゅうによるしどう)とは、日本の義務教育における特別支援教育の制度の一つで、通常の学級に在籍していながら個別的な特別支援教育を受けることの出来る制度である。
概要
1960年代後半頃から小学校に「ことば・きこえの教室」や「言語治療教室」が設置されたのが始まりである。最初は「東北訛りの矯正」を対象としていた。「ことばの教室」は口蓋裂や構音障害、吃音などを対象としていたが、既に明治時代には「文部省唱歌」を編纂した伊沢修二が、吃音臨床を学校教育に取り込もうとしていたことが興味深い。
1993年度に「通級学級に関する調査研究協力者会議」の答申を受け、学校教育法施行規則を改正して正式な制度として始まった。小学校・中学校の通常の学級に在籍し、言語障害(構音障害、言語発達遅滞、吃音症など)や難聴、情緒障害、弱視、肢体不自由、病弱などのある児童生徒を対象として、特別な場で特別な教育課程によって指導を受ける制度を指す。通常の学級での学習に概ね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度であることが通級対象の条件である。
2006年に学校教育法施行規則が一部改正され(同年4月施行)いわゆる「通級制の弾力化」が図られ、自閉症、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)も対象とされるようになった。時間数も年間10時間~週8時間と弾力的だが、教育的サービスによってさらに弾力的運用もなされている。 通級児童生徒数は激増しており、文部科学省調べでは、2006年5月1日現在、41,448人が利用している。
ただし、障害のある児童生徒が直ちに通級するということではない。通級は通常の学級での指導の工夫や、ティーム・ティーチングなど、他の方法を含めた選択肢の一つにすぎない。また通級が妥当かどうかの判断の際、医学的な診断の有無にのみとらわれてはならないこととなっている。
行革による通級制の弾力化
また、2006年に通級を担当する教員は、基本的には一つの障害種に該当する児童生徒を指導するが、教員が有する専門性や指導方法の類似性等に応じて、当該障害の種類とは異なる障害の種類に該当する児童生徒を通達上、指導できるようになった。
例えば、「言語障害通級指導教室」であっても、LD、ADHD、自閉症など他の障害種に該当する児童生徒も、条件が満たせば通達上、担当できる。実際には単一の障害種で子どもをくくるのは難しい例が少なくないからであるとされる。これは一面においては真実だが、実際は、国の財政難を理由にしたコスト削減が最大の理由であるという批判もある。しかし、反面、本来全ての教育場面で必要な「特別支援教育」を障害種別の専門家でないと教育できないというのは文部科学省が謳っている教育理念と整合しない。
問題
LD、ADHD等が正式な通級対象に加わることとなった2006年度には、文部科学省が15,000人規模の通級担当教員の増員を計画していた。しかし、国の財力が及ばないため、わずか282名の単年度増員配置にとどまっている。
昨今、発達障害が脚光を浴びるのは良いが、「通級指導教室」における、吃音、言語、難聴の専門性が危ぶまれている。例えば、ほとんどどの学校にもいる「緘黙児」について、医療・教育・福祉いずれをとっても研究成果が報告されることがほとんどない。
2007年度、2008年度と通級担当教員の増員が図られているが、わずか数百名の規模である。通級児童生徒のうち、3分の1は自分の学校に設置された教室に通う「自校通級」であり、残りの3分の2は、他校に設置された教室まで出向く「他校通級」を余儀なくされている。他校通級の中には、片道2時間を掛けて通う児童生徒がおり、親の会など諸団体は、通級担当教員の増員と専門性の向上のための取り組みを求めている。
人口に比した通級指導教室設置率NO.1は島根県である。法令上「巡回による指導」が出来ることになっているが、山間部、離島を含め、どこに住んでいても通級による指導を受けることができるのは島根県だけである。