デジタル・オーディオ・ワークステーション

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デジタル・オーディオ・ワークステーション(Digital Audio Workstation、略称DAW)は、デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来るように構成された一体型のシステムを指す。

専用のハードウェアで構成された専用機と、パーソナルコンピュータを核としてオーディオ入出力を追加したシステムに二分される(単体専用機の組み合わせであるPCM-3348などのデジタルMTRとデジタル・コンソールを組み合わせたシステムを総体としてDAWと呼ぶことは無い)。

パーソナルコンピュータを核としたDAWにはオーディオ処理の演算を主に担う装置によって大きく2種類の方式がある。1つは専用のDSPボードをパーソナルコンピュータに接続してそのボードで主な処理を行うもので、代表的なDAWシステムとしてはPro Tools HDがある。もう1つはパーソナルコンピュータ自体がオーディオ処理の演算を主に担うもので、代表的なDAWシステムとしてはCubaseSONARDigital Performerなどが有名である。いずれの場合もパーソナルコンピュータに各々必要なハードウェアを追加した上で専用のソフトウェアアプリケーションを実行することで稼動する。

歴史と変遷

業務用専用機の発達

  • ハードディスク・レコーダーの登場
    • 既存のレコーダーの置き換え
    • 編集機との一体化
    • ミキサーとの一体化
    • CD-R内蔵による音楽CD制作の完結
  • 2トラックからマルチトラックへ
  • 映像機器との同期
  • ステレオからサラウンドへ
  • ネットワークとの接続
  • 音楽録音用に特化した自己完結型低価格機種の出現
    外部機器/映像との同期やコントロール機能を省略/簡略化した低価格機によって簡易に録音からCD制作までを低予算で一貫して作業可能となった。この分野では日本製品が主流で、ヤマハローランドコルグAKAIZoom、Fostexなどから製品が発売されている。

パーソナルコンピュータを核としたアプローチ

  • 汎用PCを核としたオーディオ処理システムの黎明期
    • ソニック・ソリュージョンズ No-NoiseSystem
    • Studer ダイアクシス
    • Digidesign SoundTools
    • WaveFrame
  • オーディオ編集の基本機能の確立
  • ハードウェアのサードパーティへの解放
  • アプリケーションの内部同期によるMIDIシーケンサーとオーディオ編集ソフトの同期
  • ソフトウェアプラグインによる機能拡張とサードパーティへの仕様公開
  • MIDIシーケンサーとオーディオ編集ソフトの統合
    パーソナルコンピュータの処理能力が上がったことと、オーディオ・インターフェースとのコミュニケーション仕様がサードパーティに対して公開されたことなどの条件が揃った結果、独立したソフトウェアであったMIDIシーケンスソフトとオーディオ編集ソフトがお互いの機能を内部に徐々に取り込む形で統合され、音楽制作ツールとしてのDAWの基礎が完成する。
    このときに積極的にサードパーティに対して仕様の公開とサポートをおこなったデジデザイン社(digidesign)の製品が標準プラットフォームとして認知されることとなり、音楽制作における後のProToolsシステムのデファクトスタンダード化につながった。
    主要なMIDIシーケンスソフトがオーディオ編集機能を統合した例は以下の通り。
    Performer→Digital Performer、Logic→Logic ProCubase→Cubase VST、Vision→Studio Vision、Cakewalk→Cakewalk SONAR
  • ネットワーク経由によるライブラリ管理(主に効果音(SE,SFX))
  • ネットワークとの接続による遠隔地とのセッション

DAWによる制作の変化

DAWの革新性

DAW(HDR)の登場によって、マルチ・トラックでパートごとに録音するような場合、従来の「録音するときは既に録音されている自分のパートは上書きされて消える」という録音方式から、「録音しても前のデータは背面に残る」非破壊レコーディングへと変わった。テイクを重ねたいときなど、前のテイクを残しつつどんどん違ったテイクも試せるので、自由度が格段に向上した。演奏または歌唱者側からすれば、レコーディング時の精神的圧迫の軽減も期待できる。録音されたデータはコンピューター画面上では「リージョン」という波形のかたまりで表示され、波形の色及び高さから幅まで編集しやすい形に自由に変えられる。従来のテープベースのレコーディングにおいては、記録された音声は、オーディオ入出力を示すメーターと耳により時間経過に従って確認するしかなかった。このリージョンにより、音声の時系列変化を視覚的・図形的に扱えるようになり、編集などが格段に効率的になった。

録音出来る最大トラック数も、セッションのサンプリング周波数ビット数により変化はあるものの、機種によっては44.1KHz/16bitで最大128トラックを超える。必要に応じてシンクロナイザーで複数台を同期させていたテープベース録音とは、利便性の面で圧倒的な違いがある。その事によって、多数の音素材を扱う映画の世界への普及も進んだ。映画制作においては、「台詞」「環境音」「BGM」「SE」など、様々な音を種々のシーン毎に編集する必要がある。このため、時系列変化を視覚化し編集できるというメリットは、映像との同期編集が容易であることとも相まって、DAWの普及を後押しした。

従来、プロフェッショナル用のレコーディング・システム構築には億単位の高額な投資が必要であった。しかし、DAWを導入することにより、レコーダーやミキシング・コンソールから各種エフェクターまで、スタジオ設備一式が数百万円程度で揃ってしまう。また、機材数は減少し、メンテナンスが圧倒的に省力化した。これらによるコストダウンにより、業務用スタジオへの導入が相次いだばかりでなく、アーティストによるプライベート・スタジオの構築も比較的容易になった。

制作過程の変化(プリ/ポスト・プロダクション、オーサリング、MA)

プリ・プロダクション
プリプロの音源をそのまま本番レコーディングまで移行できるようになった。すなわち、楽曲制作の段階から、技術さえあれば完パケに耐えうるトラック制作さえも可能である。アーティストの発する演奏や歌唱あるいはアレンジの要を崩さないため、それ以前は遮断され気味だったプリプロと本番との連携が保てるようになった。
ポスト・プロダクション
録音編集作業からミックスを終えて持ち込まれたファイルも、Pro Toolsのセッション・ファイルのままだと、ポスト・プロダクションの現場における更なる編集やミックスの修正ができるため、今までのテープベースとは全く違う扱いが可能である。
オーサリング
前出「ポスト・プロダクション」同様に作業現場直前まで編集など可能なので、必要に応じた変更がある場合には機能的に作業できる。
MA
この現場においてもセッション・ファイルのまま持ち込むことで、サイズ変更やタイミング修正などの厳密な時間軸合わせ編集が容易にできるようになった(互換性に関しては後述する)。違う場面との編集による音的な違和感も「クロス・フェード」を上手く掛けることにより違和感なく処理する事ができ、仕上がりが格段に向上する。映像用同期信号との同期に関しても様々なフォーマットに対応できるため、映像との親和性はかなり高まっている。

汎用機におけるCPU処理対DSP処理

汎用パーソナルコンピュータ上での音声信号処理に置いて、専用のDSPカードに演算をおこなわせるかCPUですべての処理をおこなうかに関してはパフォーマンスとコストの観点から常に議論の対象となる。

異機種間でのデータ互換

  • OMF(Open Media FrameworkまたはOpen Media Framework Interchange)
  • AAF(Advanced Authoring Format)

主なDAW

商用製品

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生産終了された商用製品
オープンソース・個人開発ほか

関連項目