巡回多元環

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数学、とくに代数学代数的整数論において、巡回多元環(じゅんかいたげんかん、cyclic algebra)とは、の巡回拡大から構成される中心的単純 (central simple algebra) の一種で、四元数環の一般化。

定義

L/K を体の n 次巡回拡大とし、そのガロア群 Gal(L/K) の生成元を σ とする。このとき、β ∈ K×K×K の乗法群), L/K, σ によって定まる K 上の巡回多元環 A とは次のようなものである:

  • An 個の文字 {1A, j, j2, ..., jn-1} を基底とする L 上の n 次元ベクトル空間(ただし、1A = j0, j = j1 と見なす)。あるいは同じことだが、jk の生成する L 上の 1 次元ベクトル空間 Ljk (0 ≤ k < n) の直和
    • <math>A = L \oplus Lj \oplus Lj^2 \oplus \cdots \oplus Lj^{n-1}</math>
  • 文字 j は指数法則 jk · jl = jk+ljn = β に従う。
  • xL ならば jk · x = σk(x) · jk (0 ≤ k < n) を満たす。ただし、σk は σ の k 回合成写像。

A の一般の元 x, y の積は テンプレート:Indent とおくと テンプレート:Indent となる。特に、σ は K の元を動かさない L の自己同型であるから、cK に対して jkc = cjk (0 ≤ k < n) となり、逆にこのような cK の元に限るから、A の中心が K であることがわかる。

K の単元 β、巡回拡大 L/K、ガロア群の生成元 σ から構成される巡回多元環を、巡回多元環 (β, L/K, σ) などと表すこともある。

性質

  • n 次巡回拡大 L/K から定まる n 次巡回多元環の K 上の次数は n2 である。
  • 巡回多元環 (β, L/K, σ) は K 上の中心的単純環で L で分裂する(split、分解されるともいう)。すなわち、n 次巡回多元環 (β, L/K, σ) と L との多元環のテンソル積Ln 次の全行列環 Mat(n, L) に L 上の多元環として同型である:
    • <math>(\beta, L/K, \sigma) \otimes_K L \simeq {\rm Mat}(n,L).</math>
  • K の標数が 2 でないものとすると、巡回多元環 (β, K(√α)/K, σ) は (α,β)-型の四元数環である。ただし、α は K の平方元でなく、σ は σ(√α) = -√α を満たす K-同型。

一般化

巡回多元環は、2-コサイクル(2-cocycle、2 次の双対輪体、因子団ともいう)に対する接合積 (crossed product algebra) と呼ばれる多元環に一般化される。

関連項目


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