ネオジム
テンプレート:Elementbox ネオジム(テンプレート:Lang-en-short、テンプレート:Lang-de-short)は原子番号60の金属元素。元素記号は Nd。希土類元素の一つで、ランタノイドにも属する。
日本語の「ネオジム」はドイツ語の Neodym の字訳である。製品名等で「ネオジウム」等の呼称も用いられることがあり、用法の正誤については議論がある。
ネオジムを含む希土類元素の生産量は中華人民共和国が、約98%を占めるが、埋蔵量は30%程度である。2011年、希土類元素の価格は、中華人民共和国の鉱物資源政策の変化により外国への輸出量が縮小され高騰した。
性質
銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は、複六方最密充填構造(ABACスタッキング)。比重は7.0、融点は1,024 テンプレート:℃、沸点は3,027 テンプレート:℃。
安定な原子価は、4f3 の電子配置をとる3価である。常温で空気中において表面のみが酸化され、高温では燃焼して淡赤紫色の酸化ネオジム(III) Nd2O3 となる。ハロゲン元素と反応しハロゲン化物 NdX3 を、熱水と徐々に反応して水素および水酸化物を生成する。酸には易溶で3価の淡赤紫色の水和イオン Nd3+(aq) を生成する。
- 2 Nd + 6 H+(aq) → Nd3+(aq) + 3 H2
- Nd3+(aq) + 3 e− = Nd (E°= −2.32 V)
なお、ランタノイドの中では比較的イオン半径が大きい(詳しくはランタノイド収縮を参照のこと)。
モナズ石(モナザイト、(Ce,La,Nd,Th)PO4:単斜晶構造のリン酸塩)に含まれる。
単体のネオジムを得るには、無水塩化ネオジムを融解塩電解する方法や、カルシウムやナトリウムを使って還元する方法がある。
用途
ネオジムの用途で特に重要なのは、強い磁力を持った永久磁石を生産するために使用されることである。ネオジム、鉄、ホウ素の化合物 (Nd2Fe14B) は、大変強力な永久磁石であるネオジム磁石となる。ネオジム磁石は高性能のモーターやスピーカーなどの様々な分野で利用されている。
その他にも、超伝導体の材料、YAGレーザーの添加物としても使われる。シュウ酸塩ならびにプラセオジムとの合金(ジジム)は防眩ガラス及び防塵ガラスならびに特殊合金の材料となる[1]。
また、ガラスに適量のネオジムの酸化物を加えると、可視光の内、黄色系統の光を吸収するのに他の色の光は透過させるという性質を持たせられる。よって、Nd2O3 がガラスの着色剤として使われることがある。
歴史
カール・アウアー・フォン・ヴェルスバッハが、もともと一つの元素と考えられていた混合物であるジジミウム (didymium) からプラセオジムと共に1885年に発見[2]。ラテン語の『新しい』を意味する neos と、ジジミウム(元は、ギリシャ語で双子を意味する didymos から命名された)を合成したのが語源[2]。
化合物
化合物中の原子価は 4f3 の電子配置をとる3価が唯一安定なものである。4価を含む化合物が合成されたという報告もいくつかあるが、いずれも疑わしい[3]。
- 酸化ネオジム(III) (Nd2O3)
- 水酸化ネオジム(III) (Nd(OH)3)
- 塩化ネオジム(III) (NdCl3)
- 硫酸ネオジム(III) (Nd2(SO4)3·8H2O)
同位体
呼称(和文名称)についての議論
「ネオジム」はドイツ語の neodym の字訳とされる一方、英語等で更に語尾「-ium」が付く neodymium は字訳すると「ネオジミウム」となることから、物質名の語尾に用いる「~(イ)ウム」を「-ium」の訳と解する立場からは、製品名等に用いられている「ネオジウム」という呼称は誤用とされている。但し「ネオジウム」という呼称についてはドイツ語の発音に近い等とする立場からの肯定意見との間で議論があり、用法には注意を要する。
尚、外国語発音記号を擬似的にカタカナ表記すると英語 neodimium [nìːoʊdímiəm|nìːəʊ‐/.][4] =「ニーオゥディミァム」、ドイツ語 Neodym [neodˈyːm][5] =「ネオディーム」又は「ネオドゥーム」となり、日本語のどの呼称とも必ずしも一致しない。訳語表記も辞書により様々であり一定しない[6]。
参考文献
関連項目
テンプレート:ネオジムの化合物- ↑ 岩波書店 岩波科学百科 1020頁
- ↑ 2.0 2.1 テンプレート:Cite
- ↑ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原勝翻訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
- ↑ 研究社 新英和中辞典
- ↑ 小学館 独和大辞典
- ↑ neodymiumの意味 - 英和辞典 Weblio辞書