ローマ字入力
ローマ字入力(ローマじにゅうりょく)とはコンピュータへの日本語入力において文章の読みを入力する方式の一つである。
JIS規格のJIS X 4063:2000(仮名漢字変換システムのための英字キー入力から仮名への変換方式)によって日本語のローマ字入力が標準化されていたが、規格自体は2010年1月20日に廃止された。
広義では日本語入力システムに限定されず外国語の入力方法の一種としてのローマ字入力もある。外国語の場合は英字キー入力から外国語文字に変換する入力方式になる。
目次
概要
読みに対応するローマ字綴りをキーボード等から入力すると、かなに変換されて画面上に表示される。かな漢字変換の前段階として使用される。
一般には1文字以上のアルファベットの入力によって、最初に一致した対応する1文字以上のかな文字が決定した段階で表示される仕組みとなっている。
2000年に、ローマ字入力について、実際に各ベンダーが実装しているパターンを基にし、どの入力に対し何の文字を表示するかを規定した「JIS X 4063:2000」(仮名漢字変換システムのための英字キー入力から仮名への変換方式)が規格化されたが、2010年に廃止された。
ローマ字入力に対して、キーに表示されたひらがなを直接入力するかな入力がある。
ローマ字入力後の文字に対して漢字などに変換する処理は、通常は別に行われ、該当の処理をかな漢字変換処理という。
JIS X 4063:2000で規定されていた入力方式
JIS X 4063:2000では、ローマ字入力を行うソフトウェアを作成するベンダーが必ず実装しなければいけない入力方式と、追加で実装した方が良い入力方式を規定していた。
必ず実装しなければいけない入力方式
あ | い | う | え | お | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
a | i | u | e | o | |||||
か | き | く | け | こ | が | ぎ | ぐ | げ | ご |
ka | ki | ku | ke | ko | ga | gi | gu | ge | go |
さ | し | す | せ | そ | ざ | じ | ず | ぜ | ぞ |
sa | si shi |
su | se | so | za | zi ji |
zu | ze | zo |
た | ち | つ | て | と | だ | ぢ | づ | で | ど |
ta | ti chi |
tu tsu |
te | to | da | di | du | de | do |
な | に | ぬ | ね | の | |||||
na | ni | nu | ne | no | |||||
は | ひ | ふ | へ | ほ | ば | び | ぶ | べ | ぼ |
ha | hi | hu fu |
he | ho | ba | bi | bu | be | bo |
ぱ | ぴ | ぷ | ぺ | ぽ | |||||
pa | pi | pu | pe | po | |||||
ま | み | む | め | も | |||||
ma | mi | mu | me | mo | |||||
や | ゆ | よ | |||||||
ya | yu | yo | |||||||
ら | り | る | れ | ろ | |||||
ra | ri | ru | re | ro | |||||
わ | ゐ | ゑ | を | ||||||
wa | wyi | wye | wo | ||||||
ん | |||||||||
n n' nn | |||||||||
きゃ | きゅ | きょ | ぎゃ | ぎゅ | ぎょ | ||||
kya | kyu | kyo | gya | gyu | gyo | ||||
しゃ | しゅ | しょ | じゃ | じゅ | じょ | ||||
sya sha |
syu shu |
syo sho |
zya ja |
zyu ju |
zyo jo | ||||
ちゃ | ちゅ | ちょ | ぢゃ | ぢゅ | ぢょ | ||||
tya cha |
tyu chu |
tyo cho |
dya | dyu | dyo | ||||
にゃ | にゅ | にょ | |||||||
nya | nyu | nyo | |||||||
ひゃ | ひゅ | ひょ | びゃ | びゅ | びょ | ||||
hya | hyu | hyo | bya | byu | byo | ||||
ぴゃ | ぴゅ | ぴょ | |||||||
pya | pyu | pyo | |||||||
みゃ | みゅ | みょ | |||||||
mya | myu | myo | |||||||
りゃ | りゅ | りょ | |||||||
rya | ryu | ryo | |||||||
しぇ | じぇ | ||||||||
sye she |
zye je | ||||||||
ちぇ | ぢぇ | ||||||||
tye che |
dye | ||||||||
つぁ | つぇ | つぉ | |||||||
tsa | tse | tso | |||||||
てぃ | でぃ | ||||||||
thi | dhi | ||||||||
でゅ | |||||||||
dhu | |||||||||
ふぁ | ふぃ | ふぇ | ふぉ | ||||||
fa | fi | fe | fo | ||||||
ぁ | ぃ | ぅ | ぇ | ぉ | |||||
xa | xi | xu | xe | xo | |||||
ヵ | ヶ | ||||||||
xka | xke | ||||||||
っ | |||||||||
xtu 子音字を重ねる(ただし「nn」は「ん」) | |||||||||
ゃ | ゅ | ょ | |||||||
xya | xyu | xyo | |||||||
ゎ | |||||||||
xwa | |||||||||
ー | |||||||||
- |
追加で実装したほうがよい入力方式
いぇ | |||||||||
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ye | |||||||||
うぃ | うぇ | うぉ | ゔぁ | ゔぃ | ゔ | ゔぇ | ゔぉ | ||
whi wi |
whe we |
who | va | vi | vu | ve | vo | ||
ゔゅ | |||||||||
vyu | |||||||||
くぁ | くぃ | くぇ | くぉ | ぐぁ | |||||
kwa qa |
kwi qi |
kwe qe |
kwo qo |
gwa | |||||
じゃ | じゅ | じょ | |||||||
jya | jyu | jyo | |||||||
ちゃ | ちゅ | ちょ | |||||||
cya | cyu | cyo | |||||||
つぃ | |||||||||
tsi | |||||||||
てぃ | でぃ | ||||||||
thi t'i |
dhi d'i | ||||||||
てゅ | でゅ | ||||||||
thu t'yu |
d'yu | ||||||||
とぅ | どぅ | ||||||||
twu t'u |
dwu d'u | ||||||||
ふぁ | ふぃ | ふぇ | ふぉ | ||||||
hwa | hwi | hwe | hwo | ||||||
ふゅ | |||||||||
fyu hwyu | |||||||||
っ | |||||||||
xtsu | |||||||||
ー | |||||||||
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各ベンダーの実装方式との関係
JIS規格が制定された時点ではすでに様々な仕様の実装があったが、ほとんどの仕様は共通だった。
JIS規格は、各ベンダーが実際に実装されている仕様をベースに、共通する入力方式を抜き出し、例えば「la」を入力した場合に「ら」が表示される実装と「ぁ」が表示される実装があるような、同じ入力でも異なった結果が出る入力方式は外すことで仕様が決定した。
実際に上記に完全に適合する入力系は現在のところは存在しないようである。
ただし、ほとんどのローマ字入力ソフトにおいては、個別の入力文字に対し、各ユーザが自由に入力方式を決定出来るようにカスタマイズが可能となっているため、大抵の場合は上記仕様に一致した入力方式を設定出来るようになっている。なお、上記の表には、「t'i」=「てぃ」など記号を含むものもあるが、ソフトによっては設定できないこともある。たとえばMS-IMEでは'(アポストロフィ)を使用できない。
ローマ字入力の長所・短所・指摘
ローマ字入力とかな入力を比較すると、以下のような長所・短所・指摘がある。
長所
- 使用するキーが少なく覚えやすい。長音のための-を例外とすればキーボードの3段で済み、ホームポジションからの手指の運動量が少ない。
- 濁音・半濁音でも清音と打鍵数が変わらない。
- シフトキーを使う必要が無い。
- QWERTY配列のタイピングとローマ字が既習であれば、すぐに使うことができる。
短所
- ローマ字入力ではかな1文字につき、あ行以外は2打鍵必要になる場合が多い。入力のやり方によっては3打鍵になる文字もある。総じてかな入力より打鍵数が増える。
- ローマ字未習の学習者向けには「ローマ字かな変換表」を用意し、ローマ字綴りをマスターしなければならない場合がある。
- ローマ字にない特殊な綴りを用いる場合があり(例:「デュ」→「dhu」等)、効率よく入力するためには覚える事項が増える。それでも「っ」を作れる。
- かな入力使用者は結局ローマ字の配置も憶えるし、ローマ字入力設定のPCを手助けのためなどでごく一時的に使う場合、入力方式を変換しないままほとんどの字を入力出来るが、ローマ字入力の使用者はいつまでたってもかなの配列を憶えることはない。
- 外来語入力の際、原語綴りとの混乱を生じやすい。たとえば「プロジェクト」をローマ字入力するためには"purojekuto" と打たなければならず、原語の "project" とは大きく離れる。これに特に欧文入力に慣れたユーザーは抵抗を感じることがある。
指摘
- キータイピングのスピードにおいてローマ字入力とかな入力のどちらを覚えた方が速く入力が可能となるかは、様々な意見があり、一概には言えないし先ず科学的な根拠がない。一般にはかな入力の方がキータッチ数が少なくなるため早く入力が可能(物理的な考え方)という意見が多いが、一方でローマ字入力の方が英数字との切り替えが不要である点や、必要なキー領域が小さいことなどからローマ字入力の方が早く入力が可能とする意見もある。