トリケラトプス

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:生物分類表 トリケラトプス (Triceratops) は、中生代白亜紀後期マーストリヒト階の、現在の北米大陸に生息した植物食恐竜の一。白亜紀最後期の恐竜の一つで、中生代の終わりとともに姿を消した。

概要

全長約9メートル、体重約5 - 8.5トン。四足歩行。現在の北米にあたる地域に生息した大型で、最も後期に登場した角竜である。トリケラトプスとは「tri(3)+cerat(角)+opus(顔)」から「3本の角を持つ顔」を意味しており、これは1本の鼻角と、目の上にある2本の上眼窩角に由来する。首の筋肉が発達していたと考えられておりテンプレート:要出典、闘争の際にはこの角を用いたと推測される(角や四肢の構造上サイのような突進は出来なかったという説もある)テンプレート:要出典。頭骨の半分を占める、後頭部から首の上にまで伸びたフリルも特徴のひとつ。口先は鳥のくちばしのように尖っており、草や木の葉を掴み取って食べていたと考えられる。テンプレート:要出典

トリケラトプスは、同時期同地域に生息したティラノサウルスと同様に、高い人気と知名度を誇る恐竜である。トリケラトプスはティラノサウルスにとって捕食対象であったと考えられる(全ての化石生物と同じように、この二属の生態も推測の域を出ず、映画絵本、あるいはマンガの中で描かれるような闘争を行ったかどうかは不明である)。

完全な骨格はまだ見つかっていないが、1887年に記載されて以来、毎年のように発見された多数の部分的な標本から[1]、一般にも知られるようになった。特徴であるフリルおよび3本の角の機能は議論の的であり、長い間、捕食動物に対する防御機構と思われていたが、現在では主として同種間での競争や求愛に用いられたという説もあるテンプレート:要出典。ただし、この説は護身用の武器として使われた可能性を否定するものではない。

フリル

トリケラトプスのフリルは、体の比率からするとカスモサウルス亜科全体の平均より小さめであるが、他属の全ての角竜には空いている軽量化のための開口部が多くの個体では開口せず、頑丈な構造になっているテンプレート:要出典。ただし、開口は見られないものの相同な領域は他に比べて薄くなっていることが多い。

しかし2010年、これまでトロサウルス(開口部を持つ)として知られてきた属がトリケラトプス属の成長段階を示す証拠が得られ(後述)、トリケラトプスでも成長段階によっては一部の個体が開口部を後天的に獲得する可能性が指摘されるようになった[2]

フリルの役割には、「捕食動物から首を守る盾」「あごを動かす強大な筋肉の付着部」「視覚に訴える性的アピール」「視覚的な威嚇」などの説がある。テンプレート:要出典

姿勢

最も多く発見されている標本は、巨大な頭骨である。成体の頭骨の長さは約2.5メートルで、その半分弱がフリルである。他のカスモサウルス亜科と同様に1本の鼻角と2本の上眼窩角を備える。上眼窩角の長さは1.8メートルと言われる。 強力な四肢で重い体を支持していた。前肢の指は5本、後肢の指は4本で、どちらもを有していた。テンプレート:要出典トリケラトプスのようなケラトプス類の前肢の姿勢は、長い間物議をかもしていた。長い間、他の恐竜と同様に、足はゾウのように体に対して垂直に伸びていたという考えが浸透していた。テンプレート:要出典その考えは、後肢に関しては議論の余地なくあてはまる。 一方で、角竜の骨格に基づく研究では、ゾウのように手の甲を前にした直立状態で前肢の骨を組みたてると前肢の関節が脱臼してしまうため、前肢の肘を横に張り出して「這い歩き」するような姿勢であったという説があった。しかし、これはトリケラトプスの足跡化石には合致しないものであった。最近の研究では、トリケラトプスは前肢を鰭脚類のように、手の甲を外側に向けて(人間で言うと小さく前に倣えをした様な形で)直立して立っていたということになっている。。[3]

運動能力

トリケラトプスの運動能力、とりわけ歩行・走行速度についてはティラノサウルスと同様に未だ論争中であり、上記の様に前肢が鰭脚類のような状態であるという研究に基づき10km/h程度という説から、現生のサイと同等の運動能力を持ち50km/h前後で走れるという説まで様々である。テンプレート:要出典なお、現生の捕食動物と被捕食動物の関係と同様にティラノサウルスの走行速度も捕食対象であったトリケラトプス等の走行速度と同等程度である可能性もある。テンプレート:要出典

分類

先述のとおり、トリケラトプスは独特のフリルをもち、北米の角竜の中で最もよく研究されている種類なので、少なくとも復元骨格を見れば容易にそれと同定できる。テンプレート:要出典

ケラトプス類中のトリケラトプスの正確な位置付けは、この数年にわたって討議された。リチャード・スワン・ルルによる当初のケラトプス類の概観では、ケラトプス類を更に細かく区分する為に2つの亜科を提唱した。1つは、フリルの短いモノクロニウスとトリケラトプスで構成されるセントロサウルス亜科、もう1つは、長いフリルをもつケラトプストロサウルスで構成されるケラトプス亜科である。テンプレート:要出典現在、モノクロニウスとケラトプスはそれぞれ、エウセントロサウルスカスモサウルスシノニムであると広く信じられている。テンプレート:要出典 後の正式な論文発表によって、この分類は支援されるようになり、しばらくの間、トリケラトプスはセントロサウルス亜科であると誤解されることになる。テンプレート:要出典

1949年、化石ハンターのチャールズ・M・スタンバーグがはじめてこの分類に疑問を投げかけ、トリケラトプスは頭骨と角の構造から、カスモサウルス亜科(スタンバーグの分類法におけるケラトプス亜科)に分類されているアリノケラトプスとカスモサウルスに近縁関係にあるとした。テンプレート:要出典しかしながら、ジョン・オストロムや後の世代のデービッド・ノーマンなど、多くの研究者は彼の説を無視した。テンプレート:要出典

リーマンがいくつかの形態素性に基づいて1990年の2亜科の提唱および、トリケラトプスに関する分析を行い、この属をカスモサウルス亜科として定義した。テンプレート:要出典また、後の発見および研究は、スタンバーグの見解を支持した。事実、それ以来トリケラトプスはアカデミックな場におき、短いフリルという特徴とは関係なく、必ずカスモサウルス亜科に分類されている。テンプレート:要出典 更に、1990年の分類学に基づく分析および1993年ピーター・ドッドソンのより進んだ研究による、頭骨の形状に基づく系統的類似性を測定する技術は、トリケラトプスのカスモサウルス亜科中の位置づけを確固たるものしている。テンプレート:要出典

種の分類

これまでに十数種類が記載されたが、その後の研究で、トリケラトプスは角や後頭部のフリルの形状が、成長に伴い変化し、個体差も大きいことが判明し、現在ではT. horridus1種、あるいはこれとT. prorsusを認めた2種程度にまとめられている。テンプレート:要出典

進化史

長年、トリケラトプスの進化史の大部分は不明だった。1922年、新属として記載されたプロトケラトプステンプレート:要出典ヘンリー・フェアフィールド・オズボーンによってトリケラトプスの先祖と見なされていた。テンプレート:要出典それから新発見がなされるまでに何十年間かが経過した。だが近年は、トリケラトプスの先祖と関係するいくつかの恐竜の発見に恵まれた。知られている中で最古の上眼窩角を備えるケラトプス類であるズニケラトプスが1999年に記載された。テンプレート:要出典また、既知の最古(ジュラ紀)の角竜であるインロングの2005年の記載。テンプレート:要出典角竜類の進化のシナリオを考察するのに不可欠だったこれらの新発見は、一般に角竜の系統発生を例証した。角竜がアジアで発生し、ベーリング陸橋を渡り、後期白亜紀の始めまでに北米で繁栄した可能性がある。テンプレート:要出典

発見の経緯

トリケラトプスの最初の標本は、コロラド州デンバーの近くで1887年の春に見つかった上眼窩角である。テンプレート:要出典この標本はオスニエル・チャールズ・マーシュのもとへ送られた。彼は、この角は鮮新世のものと考え、異常に巨大なバイソンのものであるとした。そのため、標本にはBison alticornisという学名が与えられた。マ-シュは、その翌年までに角竜という分類群の存在を知った。しかし彼は、依然としてB.alticornis哺乳類であると考えていた。テンプレート:要出典 1888年にワイオミング州ランス累層ジョン・ベル・ハッチャーによって採集された、全体の3分の1以上が保存されている頭骨が、彼の考えを変えた。この標本はケラトプス属の新種として発表された。テンプレート:要出典しかしその後、マーシュは再び考えを変え、ケラトプスの一種ではなく、B.alticornisを新属と認め、トリケラトプスと命名しなおした。テンプレート:要出典頑丈な性質をもつ頭骨は、化石として保存されやすく、種と個体の間の変化を研究するのに役立っている。化石はモンタナサウスダコタ、およびカナダのサスカチュワンアルバータでも見つかっている。テンプレート:要出典

分岐学での使用

分岐学において、恐竜を定義づける際、(トリケラトプスおよび新鳥類(現代の鳥)の最近の共通先祖と全ての子孫)として使用されている。ただしこの場合はあくまで、代表的で誰もが知っている動物であるという理由で使用されているのであって、鳥盤類のクラウングループならば、他の種を挙げたところで分岐学的意味合いは変化しない。

トロサウルスとの関係

トロサウルス属 (Torosauru) がトリケラトプス属 (Triceratops) のシノニムである可能性は、両者の発見当初から長年議論されてきた。両者とも同じ地層から発掘される上、フリルなどを除いて形態的な差異がほとんど見られないためである[4]。 またトロサウルスは完全に成長しきったと見られる不完全な標本が数個体分しか発掘されないにも係わらず、トリケラトプスは成長段階などをも含んだ50以上もの化石が次々と発掘されてきた。

こうした中、2010年にトリケラトプスの頭蓋骨の形態を、成長段階に従い数十個体に渡って観察しなおし、トロサウルスと比較した論文が発表された[5]。 それによると、トリケラトプスのフリルの一部(後頭骨-鱗状骨の境界部分)は成長に従って薄くなり、開口に向かうこと。そしてそうした形態がトロサウルスに非常によく似ることが示された。

騒動

トリケラトプスの知名度の高さも手伝ってか、この研究は2010年8月当時、比較的大きな話題となった。しかし中には「トリケラトプスが消えてトロサウルスに纏められるのでは」という、本来の論文の趣旨とは全く相反する報道もなされ[6]、これがツイッターなどを通じて拡散され混乱を招く事態が起こった。だがそもそも論文の題名にもある通り、トロサウルスが消えてトリケラトプスに纏められることになるのが元々の情報であって、上記のような報道は全くの曲解と言える。そもそも国際動物命名規約では、基本的には時系列上先に記載された方を有効名とする規定になっており、この場合、最初に記載された方であるトリケラトプスが有効名として認められる。またこの件に関しては論文の著者であるジャック・ホーナーらはその後も公式に「トリケラトプスが残る」ことを強調している[7]。 もっとも、トロサウルス=トリケラトプスである事に関しては2011年現在までにもいくつか反論は出ており、そのまま一般論として定着しているわけではない。

出典・脚注

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参考文献

  • Weishampel DB, Dodson P, Osmólska H, (2004)『The Dinosauria second edition』University of California Press, ISBN 978-0520242098
  • Fastovsky DE, Weishampel DB:著, 真鍋真:訳, (2006)『恐竜学 進化と絶滅の謎』丸善, ISBN 978-4-621-07734-4

関連項目

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  1. 特に頭骨は完全なものも含めて非常に多い。
  2. Scannella, J. and Horner, J.R. (2010). "Torosaurus Marsh, 1891, is Triceratops Marsh, 1889 (Ceratopsidae: Chasmosaurinae): synonymy through ontogeny ." Journal of Vertebrate Paleontology, 30(4): 1157 - 1168
  3. 『恐竜博2011』
  4. Farke, A. A. (2007) Cranial osteology and phylogenetic relationships of the chasmosaurine ceratopsid Torosaurus latus; pp. 235–257 in K. Carpenter (ed.), Horns and Beaks: Ceratopsian and Ornithopod Dinosaurs. Indiana University Press, Bloomington and Indianapolis, Indiana.
  5. Scannella, J. and Horner, J.R. (2010). "Torosaurus Marsh, 1891, is Triceratops Marsh, 1889 (Ceratopsidae: Chasmosaurinae): synonymy through ontogeny ." Journal of Vertebrate Paleontology, 30(4): 1157 - 1168
  6. トリケラトプスが教科書から消える? : ギズモード・ジャパン
  7. KBZK | Bozeman, Montana - News, Weather, Sports | Dinosaur expert Jack Horner: 'Triceratops' name will stay