ピタゴラスの定理

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ファイル:Pythagoras theorem leonardo da vinci.png
レオナルド・ダ・ヴィンチによるピタゴラスの定理の証明。橙色のついた部分を90度回転し、緑色の部分は裏返して橙色に重ねる。

ピタゴラスの定理(ピタゴラスのていり、テンプレート:Lang-en)は、直角三角形の3の長さの関係を表す等式である。三平方の定理(さんへいほうのていり)、勾股弦の定理(こうこげんのていり)とも呼ばれる。

概要

平面幾何学において直角三角形斜辺の長さを c、他の2辺の長さを a, b とすると、

a2 + b2 = c2

が成り立つという定理である[1]

ピタゴラス直角二等辺三角形のタイルが敷き詰められた床を見ていて、この定理を思いついた」など幾つかの逸話が知られているものの、この定理はピタゴラスが発見したかどうかは分からない。バビロニア数学プリンプトン322古代エジプト[2]などでもピタゴラス数について知られていたが定理を発見していたかどうかは定かではない。

証明

この定理には数百通りもの異なる証明が知られている。ここにいくつかの代表的な証明を挙げる。

いずれも ABC を ∠C が直角とし、頂点 A, B, C の対辺の長さをそれぞれ a, b, c とする。

相似による証明

ファイル:Pythagoras1.jpg
相似を用いた証明

頂点 C から斜辺 AB に下ろした垂線の足を H とする。△ABC, △ACH, △CBH は互いに相似である。よって △ABC と △ACH の相似比より

<math>\text{AC}:\text{AH} = \text{AB}:\text{AC} \Longrightarrow \text{AH} = { \text{AC} \times \text{AC} \over \text{AB} } = {b^2 \over c}</math>

であり、同様に △ABC と △CBH の相似比より

<math>\text{BH} = {a^2 \over c}</math>

である。したがって

<math>c = \text{AB} = \text{AH} + \text{BH} = {b^2 \over c} + {a^2 \over c}</math>

であるから、両辺に<math>c</math> を掛けて

<math>c^2=a^2+b^2</math>

を得る。

正方形を用いた証明

ファイル:Pythagoras2.jpg
正方形を用いた証明

△ABC と合同な4個の三角形を図のように並べると、外側に一辺が a + b正方形(以下「大正方形」)が、内側に一辺が c の正方形(以下「小正方形」)ができる。

(大正方形の面積)=(小正方形の面積)+(直角三角形の面積)× 4

である。大正方形の面積は (a + b)2、小正方形の面積は c2</sup>、直角三角形4個の面積の合計は

<math>{ab \over 2} \times 4 = 2ab</math>

である。これらを代入すると、

<math>(a+b)^2=c^2+2ab</math>

整理して

<math>a^2+b^2=c^2</math>

を得る。

ファイル:Pythagoras-2a.gif
幾何学的な証明
ファイル:Chinese pythagoras.jpg
周髀算経』におけるピタゴラスの定理の証明(テンプレート:Lang-zh

内接円を用いた証明

△ABC の面積 S

<math>S={ab \over 2}</math> …(1)

また △ABC の内接円半径r とすると

<math>c=(a-r)+(b-r)</math>

であり、r について解くと

<math>r={a+b-c \over 2}</math> …(2)

となる。Sr を用いて表すと

<math>S={r(a+b+c) \over 2}</math>

これに (1), (2) を代入すると

<math>{ab \over 2}={(a+b-c)(a+b+c) \over 4}</math>

これを整理すると

<math>a^2+b^2=c^2</math>

が得られる。

ピタゴラス数

a2 + b2 = c2 を満たす自然数の組 (a, b, c) をピタゴラス数という。特に、a, b, c が互いに素であるピタゴラス数 (a, b, c) を原始的(げんしてき、primitive)、、あるいは原始ピタゴラス数などという。全てのピタゴラス数は、原始ピタゴラス数の正の整数倍により得られる。

ピタゴラス数 (a, b, c) が原始的であるためには、3つのうち2つが互いに素であることが必要十分である。

性質

自然数の組 (a, b, c) が原始ピタゴラス数であるためには、ある自然数 m, nmn は互いに素,m > n, mn は奇数)を取ると

(a, b, c) = (m2n2, 2mn, m2 + n2) or (2mn, m2n2, m2 + n2)

であることが必要十分である。上記の (m, n) は無数に存在し、2mn は重複しないから、原始ピタゴラス数は無数に存在する。これにより原始ピタゴラス数を漏れ・重複なく見つけ出すことができる。

例えば

(m, n) = (2, 1) のとき (a, b, c) = (3, 4, 5)
(m, n) = (3, 2) のとき (a, b, c) = (5, 12, 13)
(m, n) = (4, 1) のとき (a, b, c) = (8, 15, 17)

である。

原始ピタゴラス数 (a, b, c) について、次のような性質も成り立つ。

  • a または b は 4 の倍数
  • a または b は 3 の倍数
  • a または b または c は 5 の倍数

また、一般のピタゴラス数 (a, b, c) に対して、<math>S=\frac{1}{2} ab</math>(直角三角形の面積)は平方数でない。

Jesmanowicz 予想

1956年に Jesmanowicz が以下の予想を提出した。

(a, b, c) を原始ピタゴラス数、n を自然数とする。x, y, z

<math>(an)^x+(bn)^y=(cn)^z</math>

で自然数解を持つには、

<math>x=y=z=2</math>

であることが必要である。

一般化

角の一般化

余弦定理

c2 = a2 + b2 − 2ab cos C

はピタゴラスの定理を <math>C=\frac\pi2=90^\circ \Leftrightarrow \cos C=0</math> の場合として含む。

指数の一般化

指数 2 を一般化すると

an + bn = cn

となる。n = 2 の場合は自明でない (abc ≠ 0) 整数解は実質原始ピタゴラス数であり、無数に存在するが、n ≧ 3 の場合には自明でない整数解は存在しない(フェルマーの最終定理)。

次元の一般化

3次元空間内に平面があるとき、その閉領域 S の面積は、yz 平面,zx 平面,xy 平面への射影の面積 Sx, Sy, Sz を用いて

<math>S^2={S_x}^2+{S_y}^2+{S_z}^2</math>

と表される。これは高次元へ一般化できる。

脚注

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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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  1. 大矢 2001
  2. テンプレート:Cite web