ベオウルフ
ベオウルフ(テンプレート:Lang-en-short、テンプレート:Lang-ang、慣習的発音 テンプレート:IPA-en、古英語的発音 テンプレート:IPA-en テンプレート:Small)は、英文学最古の伝承の一つで英雄ベオウルフ(ベーオウルフ)の冒険を語る叙事詩である。約3000行と古英語文献の中で最も長大な部類に属することから、言語学上も貴重な文献である。
概要
テンプレート:出典の明記 デネ(デンマーク)を舞台とし、主人公である勇士ベオウルフが夜な夜なヘオロットの城を襲う巨人のグレンデルや炎を吐くドラゴンを退治するという英雄譚であり、現在伝わっているゲルマン諸語の叙事詩の中では最古の部類に属する。
『ベオウルフ』が成立した時期は、作品内部にも外部の言及としても成立の時期を特定する記述が存在しないため、必ずしも明らかではないが、8世紀から9世紀にかけての間に成ったと考えられている[1]。
ファンタジーの源流とも言える内容を持っている。研究者の中にはJ・R・R・トールキンがおり[1][2]、その著作『ホビットの冒険』や『指輪物語』への影響はつとに指摘されているのみならず、彼の研究がその後のベオウルフ研究に与えた影響も大きかった[1][2]。トールキンが1920年代に行った『ベオウルフ』の現代英語への翻訳は、生前には出版されることがなかったが、没後の2014年になって出版された[3]。
写本
伝本は、大英図書館のコットン文庫に10世紀と12世紀の写本が合冊されたものが一本伝わるのみである(本作品はその10世紀末-11世紀初頭の可能性もある-に筆写された部分に収められている)。しかも、この写本を含む文庫がかつて火災に遭い、焼失は免れたものの損傷を受けているため、文献としては恵まれているとは言いがたい。
あらすじ
『ベオウルフ』は、主人公の勇士ベオウルフの若い時を描いた第一部と、それから時代が飛び、老域に入ったベオウルフ王の最期までを描いた第二部に分かれている。それゆえに二つの物語を一つにしたものではないか、とする声もある。 第一部でベオウルフは巨人(ドラゴンとも言われている)グレンデルとその母親と戦い、第二部では炎を吐く竜と死闘をかわす。 なお、インパクトが強くかつ謎の多いグレンデルとその親に関しては言及されることが多いが、炎を吐く竜に関してのものは少ない傾向にある。だが、同時に「いわゆるドラゴン」の約束事(財宝、翼を持っている、火を吐くなど)をほぼそろえている珍しいドラゴンでもある。
第一部
デネ(デンマーク)の王フロースガールはヘオロット(牡鹿)という名の宮殿を築き、それを祝って連夜祝宴を開いた。そのざわめきにカインの末裔、呪われし巨人(ドラゴンとすることもある)グレンデルは怒り、宴がはねた深夜に襲撃してフロースガール王の家臣を虐殺した。
スウェーデンの南部イェータランドに住む勇士ベオウルフは、その噂を聞きつけて従士を従え、海を渡ってフロースガール王のもとに訪れる。ベオウルフはヘオロットの館の警護にあたることになった。深夜になると、グレンデルがまたもや襲撃してきて、ベオウルフと一騎打ちになった。ベオウルフはグレンデルの腕をもぎとるが、巨人はそのまま逃走していく。
翌晩、グレンデルの母親がわが子の復讐にやって来た。家臣を殺されたフロースガール王はベオウルフに巨人討伐を依頼し、ベオウルフは巨人の棲家である沼に赴く。そこで繰り広げられる勇士と巨人の格闘戦。
第二部
ベオウルフは王となり、そして老いた。彼の治世により国の平和は維持されてきたが、ある時問題が起こった。宝を奪われたドラゴンが民を襲ったのである。
ベオウルフは部下に大きな鉄の盾を作らせ、最期の戦いになると覚悟のうえでドラゴンの住む岬へと向かった。王は瀕死の重傷を負いながらもただ一人最期の場所までついてきた部下の助けを得て、相討ちの形でドラゴンを倒した。
ベオウルフは勝ち得た宝を眺めながら息を引き取り、残った者が王の願いを叶えるために大きな塚を築いたところで物語は終わる。残された12人の部下は、宝をすべて王とともに葬ったのである。
訳書
- 『ベーオウルフ』 岩波文庫 旧訳は厨川文夫の文語訳、新訳は忍足欣四郎の口語訳
- ローズマリ・サトクリフ『ベーオウルフ 妖怪と竜と英雄の物語―サトクリフ・オリジナル〈7〉』 訳者:井辻朱美 原書房 ISBN 4-562-03545-5
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 岩波文庫『ベーオウルフ』忍足欣四郎訳
- ↑ 2.0 2.1 ハンフリー・カーペンター『J.R.R.トールキン 或る伝記』菅原啓州訳 評論社
- ↑ テンプレート:Cite book
関連項目
テンプレート:Sister テンプレート:Wikisourcelang
外部リンク
- いにしえの冒険ファンタジーが現代英語訳でよみがえる(宮脇孝雄) - シェイマス・ヒーニーによる現代英語訳の紹介
- 本文 ベオウルフ 古代英語