ヘロドトス
ヘロドトス(ヘーロドトス、テンプレート:Lang-el-short, Hēródotos、羅:Herodotus、紀元前485年頃 - 紀元前420年頃)は、古代ギリシアの歴史家で、今日まとまった形で伝承された最初の歴史書『歴史』により「歴史の父」とも呼ばれる。
業績
ドーリア系ギリシア人であり、小アジアのハリカルナッソス(現ボドルム)に生まれた。
ヘロドトスはペルシア戦争後、諸国を遍歴して『歴史』(全9巻)を著した。『歴史』の記述はギリシアはもちろんペルシア、リュディア、エジプトといった古代オリエント世界の歴史、地理まで及ぶ。ヘロドトスが自分で実際に見聞きしたことが集められており、一見渾然としてはいるが、それらがギリシアによるペルシア戦争勝利へのストーリーの中に巧みに配置されており、読み物として面白くまた分かり易く書いてある。しかし、伝聞のためか疑わしい話も少なからず盛り込まれており、そのために『歴史』の信憑性が疑われることもあり、研究としての歴史はトゥキュディデスから始まったとみなす説もある。
ヘロドトスはギリシアの神々の意志や神託の結果を尊重し、ギリシア人の立場から『歴史』を物語的叙述で著したが、この点は後に現れるアテナイの歴史家トゥキュディデスが著した実証的な『戦史』と対比的に捉えられている。
『歴史』はヨーロッパで最も古い歴史書の一つであり、後世まで読みつがれたほか、中世ビザンティン時代のギリシア人達もヘロドトスに倣った形式で歴史書を書いた。現在でも古代ギリシア、古代オリエント、古代エジプトの歴史研究の上で欠かせない書物の一つとなっている。
なお、「エジプトはナイルの賜物」と言う言葉はヘロドトスが『歴史』(巻二、五)に書いているが元はヘカタイオスの言葉である(この「エジプト」はナイルデルタを指しており、デルタがナイル川の運ぶ泥が滞積したものであることは当時から知られていた)
関連文献
- 松平千秋訳 『ヘロドトス 歴史』 岩波文庫(全3巻、改版2006年)[1]
- 藤縄謙三 『歴史の父 ヘロドトス』(新潮社 1989年/新装版「ヘロドトス」 魁星出版 2006年)
- 前田耕作 『アジアの原像 歴史はヘロドトスとともに』 (日本放送出版協会〈NHKブックス〉 2003年)
- 桜井万里子 『ヘロドトスとトゥキュディデス 歴史学の始まり』(<ヒストリア023>山川出版社 2006年)
- 中務哲郎 『ヘロドトス「歴史」――世界の均衡を描く』 (書物誕生:岩波書店、2010年)
バビロンの結婚市場
2012年夏現在、世界の金融市場では金融緩和が進み、欧州では基準とされる金利の数字がマイナスとなる、未曾有の状態になっている。金利がマイナスになる事態は考えにくいことであった。これに関連して、ヘロドトスの「バビロンの結婚市場」が、次のような文脈で例示として取り上げられている。[2]
『同じ財が同じ市場で正と負の両方の価格で売られる事例は、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが記した「バビロンの結婚市場」がある。花嫁候補を美しい順に並べると、最初は正の価格がつくが、一線を越えれば負の価格(持参金)がつく。』