ヨツユビリクガメ
ヨツユビリクガメ(Agrionemys horsfieldii)は、動物界脊索動物門爬虫綱カメ目リクガメ科ヨツユビリクガメ属に分類されるカメ。本種のみでヨツユビリクガメ属を構成する。学名の種小名からホルスフィールドリクガメと呼ばれることが一般的である。[1]
分布
- A. h. horsfieldii アフガニスタンヨツユビリクガメ
アフガニスタン、イラン北東部?、ウズベキスタン南部、タジキスタン、中華人民共和国(ウイグル自治区西部?)トルクメニスタン東部、パキスタン北部[2][3][4]
- A. h. baluchiorum バルキスタンヨツユビリクガメ
- A. h. kazachstanica カザフスタンヨツユビリクガメ
ウズベキスタン北部、カザフスタン、トルクメニスタン北部[3][4]
- A. h. rustamovi トルクメニスタンヨツユビリクガメ
形態
最大甲長28センチメートル[3][4]。背甲は扁平[3][4]。腹甲には蝶番がない[2][3][4]。
前肢は頑丈なシャベル状で、穴を掘ることに適している[3][4]。前肢の指は4本[2][3]。
- A. h. horsfieldii アフガニスタンヨツユビリクガメ
背甲は甲高が高く、丸みを帯びるとされる[3]。背甲の色彩は暗黄色や黄褐色、淡黄色など[3]。背甲の暗色斑は不明瞭もしくは斑紋がない個体が多い[3]。
- A. h. kazachstanica カザフスタンヨツユビリクガメ
背甲は扁平で幅広く、前縁と後縁が直線的で角張る[3]。頂部は平坦[3]。背甲の色彩は明黄色や薄黄緑色などと変異が大きい[3]。孵化直後からある甲板(初生甲板)とその周囲は暗色で、成長に伴い形成された甲板は暗色斑がないかあっても小型[3]。
分類
以前はチチュウカイリクガメ属に含まれていた[3]。しかしミトコンドリア全塩基配列の分子系統学的解析(最大節約法および最尤法)ではチチュウカイリクガメ属よりも、インドリクガメ属やパンケーキガメ属、ヘルマンリクガメ属により近縁で単系統群を形成すると推定されている[3][4]。
- Agrionemys horsfieldii horsfieldii (Gray, 1844) アフガニスタンヨツユビリクガメ
- Agrionemys horsfieldii baluchiorum (Annandale, 1906) バルキスタンヨツユビリクガメ
- Agrionemys horsfieldii kazachstanica Chkhikvadze, 1988 カザフスタンヨツユビリクガメ
- Agrionemys horsfieldii rustamovi Chkhikvadze, Amiranschwili & Atajew, 1988年 トルクメニスタンヨツユビリクガメ
生態
岩石砂漠やステップなどに生息し[2]、農耕地などにも生息する[4]。長さ3-4メートル、深さ1メートルに達する穴を掘ることもあり、その中で北部や高地に分布する個体群は冬季に、南部や乾燥地帯に分布する種は夏季に休眠する[4]。夏季も冬季も休眠し、年間を通して3か月しか活動しない個体群もいる[4]。
繁殖形態は卵生。1回に3-5個の卵を産む[2]。
人間との関係
牧草や農作物を食害する害獣とみなされることもある[4]。
生息地の破壊、害獣としての駆除、薬用やペット用の乱獲などにより生息数は減少している[4]。
ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。主に野生個体や卵を採取して孵化させた個体が流通するが、欧州や本国内での飼育下繁殖個体も流通する[4][5]。1960年代にイランやソビエト連邦から大量に輸入され1980年代に流通量は減少したが、1990-2000年は再び流通量が増加し中央アジアや西アジアの旧ソビエト連邦領産の個体が流通する[3][4]。流通量が多く、リクガメとしては比較的安価なことからリクガメ飼育の入門種として紹介されることがある[4]。しかし輸送時やキープ時に粗雑に扱われ、状態を崩した個体もいる[4]。
参考文献
- 山田和久 『爬虫・両生類ビジュアルガイド リクガメ』、誠文堂新光社、2005年、90-91頁。
関連項目
外部リンク
テンプレート:Reflist- ↑ 誠文堂新光社 リクガメ 著 海老沼剛
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 千石正一監修 長坂拓也編 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、183頁。
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 3.14 3.15 3.16 3.17 3.18 安川雄一郎 「チチュウカイリクガメ総覧」『エクストラ・クリーパー』No.2、誠文堂新光社、2007年、26-27、40-41、50-51頁。
- ↑ 4.00 4.01 4.02 4.03 4.04 4.05 4.06 4.07 4.08 4.09 4.10 4.11 4.12 4.13 4.14 4.15 4.16 4.17 4.18 安川雄一郎 「ペットとしてのリクガメの飼育と分類」『エクストラ・クリーパー』No.3、誠文堂新光社、2008年、32-33、52、62-63頁。
- ↑ 誠文堂新光社 リクガメ 著 海老沼剛